神様は全部知っている
私の目には人生最多の砂が入り込む。
暴れる風は留まることを知らない。
持っていた大事な紙は無情な風に運ばれて海へ。
落ち込んでいると海から神様が現れた。
「あなたが落としたのはこの青い紙ですね?」
「違います。私が落としたのは赤い紙です」
紙を神様が拾ってくれたが私が落としたものと違った。
でも神様が私を助けようとしてくれただけで嬉しかった。
「あなた、かなりバカですね」
私は紙を海へ落とした若い女性にそう言った。
「バカなのは合ってますけど出会ってあまり時間が経っていないのによく分かりましたね。そうか、神様は全部知っているんですもんね」
この女性がバカであることは誰でもすぐに分かる。私のような神様でなくても。
普通の人であれば理科の実験は夜の浜辺ではなくて室内でやる。
そして普通の人であれば赤いリトマス紙がアルカリ性の液体に浸かると青に変わることを絶対に知っている。
それに普通の人であればリトマス紙を二枚以上持ってくる。
なので、この女性がバカであることは誰にでもすぐに分かる。
この女性以上のバカでない限り。