贈りたいのは、白いドレス。
君に贈る白いレースの裏みたいな。
「魔物の討伐任務が入った。場所は辺境だ。」
重々しく騎士団長が言った。
隊員全員がサッと青ざめ、ある一点を見つめて固まった。
皆の視線を集めてやまないのは我らが騎士団の麗しき色男の副団長。焦茶色の髪にエメラルドグリーンの瞳…男の我々ですら見惚れるほどの美形。
今その眉間には深く深~くシワが刻まれている。
目が怖いっす。あんな目で見られたら軽く失神しそう。
「団長…期間はどの程度です?」
床を睨み付けながら、副団長が地を這う声で尋ねる。
お、お怒りでござる…
「…辺境に行くまでは半月ほど…往復で一月。
一年内に戻れれば幸運との見通しだ。」
苦虫を噛み潰したかのように団長が答える。
あ、団長も子どもが産まれたばかりで毎日デレデレなんだよな。一年…一年はでかいよな。
「ちょっと待ってください、我々は王都の警備や事件解決を主としてます。
魔物の討伐には参加したことはありますが、せいぜい片道一週間までの所だったはず。
辺境伯や国境騎士団はどうしました?」
「伝染病が蔓延してな…
すでにもう下火となったが、騎士団の半数はまだ病床の住人だ。辺境伯の采配のお陰でそのようにすんだと聞いている。
彼が無能だったら王都にまで病がきて大変なことになっていただろう。
騎士達を休ませてやりたいと思ったところに魔物の大量発生だ。今のところまだ、死者が出ていない状態だが今後はわからない、とのことだ。」
辺境伯は元々我々の騎士団に所属していた人で、有能だけどものすごいマイペースな人だった。
とてもいい人で親しみがあった。親の後を継ぐということで二年前王都から離れた人である。
辺境伯を助けたいのは山々だが、何故我々第五騎士団に話が来るのか。
ざっくり分けると第一は王族警護、第二は王城警護、第三・第四は遊撃部隊として貴族の警備や警護・遠征等を行い、第五は王都警備という庶民の窓口雑用係、第六からは王都以外を守護、警備している。
第一・第三は貴族がほとんど、第二・第四は貴族平民半々、第五は貴族・平民・問題児・移民の混合部隊である。
普通ならば第三・第四が出るところだ。
「第三の団長と第四団長が我々には荷が重い、実力のある第五にと突っぱねたそうだ。
宰相閣下や大臣のお偉方の親族やら息子の一部達が第四にいるのもある。
私が思うに…
この前の御前試合でうちの優秀な副官に、他の団の実力はそこそこで天狗になった阿呆どもが打ちのめされたのが気にくわないのがひとつ。
後、立て続けに影で人気の貴族令嬢女官、侍女、下働き、出入り業者の女性をうちの隊員が射止めたのが気にくわない負け犬どもの陰謀だ。」
「そんな…」
「俺達のせいで…」
「うっ…」
心当たりのあるもの達が項垂れ、あるものは涙ぐんですらいる。
「なにうつむいているんだ!
胸を張れ!
お前達は努力し、めげずに、思いを伝え、そして通じあったのだ!
指をくわえてけちだけつける奴等に怯むことはない!
試練だと思え!
この討伐を絆を深めるチャンスにしろ!
1年なんぞかけない。半年内に帰還して奴等の鼻をあかしてやれ!」
副団長の激励に一同が顔を上げる。
我らが第五は、いろんな身分や問題児も多い。
つまはじきされかねない我々を導き、実力を引き出し、恋愛サポートまでしてくれたのは団長と副団長の二人だった。
なんでも、恨まれずにノロケし合いたい仲間を増やしたかったらしい。
なにそれ、であるがお陰で自分も彼女ができました。神である。
「出発は二週間後。
出発前の一週間は休みとする。思う存分、いちゃつくぞ。」
「団長、本音が出てます。
まぁ、我々を怒らせたこと後悔させてやりましょう。」
そんなわけで解散となった。
ちなみに、強行軍でひたすら進み、あっという間に魔物を倒して半年で帰ってきた。
先輩の何人かは帰ってすぐ結婚式をあげた。
団長は奥さんと子どもにでれでれ過ぎてとけている。
副団長はというと、婚約者の令嬢とおいかけっこを楽しんでいた。
たまたま、巡回中に見てしまったが、美形はデロデロにゆるんだ顔すらも美形だった。
後日、その令嬢に何故かフリフリのよだれかけと、ウェディングドレスを選んでいたがあげたのはよだれかけだけだった。
いくらなんでも、それは…と言うと、
「半べそな婚約者が可愛すぎるのが悪い。」
ものすごく真剣な顔で、最低なことを言っていた。
副団長はちょっと痛い目合えばいいと思う。
心の中で、婚約者の令嬢にエールをそっと送るのだった。




