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四大強種ーーー。
それは、人族、亜人族、魔族の三大種よりも上位の存在。どの種族も個体数は多くないが、圧倒的な能力の高さを誇る。
その四種族とは………。
龍族。
高い知能と戦闘能力を持ち、強力無比な龍律魔法を扱う。最弱個体でもランクはSS。龍族の長である龍帝にいたっては、絶望級を誇る。しかし、その気質は温厚なため、争いになることはほとんどない。仮に遭遇したとしても、礼を尽くせばなんとかなる。間違っても攻撃しないこと。でないと、死ぬ。
精霊族。
全種族の中でも圧倒的に魔力に秀でており、最下位の精霊でも王級魔法をさくさく使う。詠唱とかしない。ノータイムで高位魔法をバンバン撃ってくる。精霊界という亜空間にいると言われている。精霊が加護を与えた道具を精霊具と言い、非常に高値で取引される。龍族と仲がいい。ちなみに精霊王の強さは、龍帝と同じくらい。
精霊は仲間をとても大事にする。なので、精霊に会ったとき、絶対に精霊を貶すようなことを言ってはいけない。言うと、死ぬ。
巨人族。
平均身長20メートル。平均体重200tという馬鹿げた種族。知能は総じて低い。標高1万メートル以上の山々が連なるキリールル山脈の向こうに住むと言われている。詳細は不明。遥か昔に、龍族と争ったという伝説が残っている。出会ったら最後、アリのように踏み潰されて、死ぬ。
天魔族。
遥か天空の、天界というところにいると言われている存在。神の使いとも言われている。聖と邪に別れた二種類がおり、どちらも詳細は不明。でも、出会ったら多分、死ぬ。
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そこまで読んで、楽斗は本を机に置いた。そして、ポツリと呟く。
「四大強種………………………怖っ」
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俺ーー天導楽斗ーーが、他のクラスメイトと一緒に異世界に飛ばされてから一月と少しがたった。
召喚され、国王と会い、ステータスを確認したら、天職が分からないという事態に。
天職というのは、魂の本質を現すもので、ステータスの中でも特に重要な項目らしい。
天職を本人が把握していないと、レベルは上がらないし、スキルも覚えない。
つまり俺は、Lv1のスキル皆無な状態で、魔族と戦わなくてはならないらしい。正直、ムリゲーってレベルじゃねぇ。
なんでレベルが上がらないんだ?と訪ねたところ、理由はわかっておらず、そうゆうものなんだそうだ。
ま、そんな約たたずな俺でも、国王と王女の計らいで他の連中と変わらない生活ができているんだから、そこは感謝しねぇとな。ありがたやありがたや。
まぁ、貴族や騎士たちの中には、俺のことを無能呼ばわりしてるやつもいるみたいだが……………、直接的な害がない限り、放っておくことにしよう。俺、別に気にしないし。
………っと、こうしてるうちに、もう訓練の時間か。遅れるわけにはいかないな。とっとと行こう。
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俺たち召喚組の訓練は、王城の訓練場で行われる。訓練場は学校の運動場の二倍位の広さを誇っており、訓練中に狭く感じたりはしない。
「では、今日の訓練を始めよう。と言っても、今日もいつも通り、お前たち同士での模擬戦だがな。よし!怪我には気を付けるんだぞ?それじゃあペアを組むんだ」
そう言ってこの場を仕切っているのは、王国騎士団の騎士団長であり、王国最強と噂されるテドルさん。三十歳位のナイスミドル。俺たちの訓練をしてくれる人で、めっちゃ強い。チート満載の召喚組が複数人で挑んでも、一分くらいでボコボコにしてしまう程度には強い。
さて、俺の訓練相手なんだが………。おっ、花の相手が珍しくいないじゃないか。花にするか。
「あっ!天導くん!訓練の相手、いないの?」
む、花のほうから来てくれたか。ありがたいんだか、男としてちょっと情けない。
「見ての通りだ。花もいないのか?」
「うん。……えっと、それでね?よかったら………わたしと「天導っ!!」…………ちっ」
花がなぜかもじもじしながら話そうとして、横から割り込んできた声に遮られた。
「貴様ごときが天宮さんと訓練するなど、おこがましいにも程があるわ!どうしても天宮さんと訓練したいと言うのなら、このオレを倒してからにしろぉ!!」
「…………天導くん。殺っちゃって?」
割り込んできたのは、ローブをきて、杖を片手に持つ、小太りの男。名前は………フトヤマ………だったっけ?
スッゲードヤ顔してるけど、花の殺意のこもった視線に気付いてないのだろうか?
「えーっと?フトヤマが俺の相手をしてくれると?」
「フトヤマじゃねぇよ!大山だ!お・お・や・ま!たっく………それじゃあきをとりなおして、いくぞぉ!『ウインドアロー』」
フトヤマ、もとい大山がいきなり杖を俺に向け、魔法を撃ってくる。こいつの天職は確か………【魔法の勇者】だったっけ?魔法の威力や行使速度が強化されるらしい。
まったく、天職なしでスキルなしの俺にいきなり攻撃してくるとか………。しかも速度が速く、不可視だから避けにくいことに定評のある風魔法ね。不意打ちとかさぁ…………。……………はぁ。
余裕すぎる。
腰に帯びていたショートソードの柄を右手でつかみ、抜くと共に一閃。風の矢は魔力の残骸だけを残し、かき消えた。
「なぁっ!魔法をきったぁ!?」
フトヤマがメッチャ驚いてる。この程度でか?
挑発の意味も込めて、ショートソードを持っていない方の手で、クイックイッと手招きをする。
「て、てめぇー!なめんなよぉ、『降れ、天駆ける稲光よ ライトニング』!」
お、今度は雷魔法か、始めてみるな、これ。とりあえず防御をっと。
「『絶縁結界』」
俺の展開した純水でできた水のドームの上に、雷撃が降り注ぐ。純水は電気を通さないので、完全に防ぐことができた。
んでもって、自身に魔力での身体強化を施し、水の結界の後方だけを開き、そこから飛び出る。
フトヤマの放った雷撃がいい目くらましになっている隙に、強化された身体能力で、フトヤマの背後に回り込んで、その首筋に、ショートソードをつきつける。
「終わりだぜ、フトヤマ」
「なっ!…………って、フトヤマじゃねぇ!大山だ!」
フトヤマの顔が悔しそうに歪む。フハハハハハ、ザマーミロ。
と、俺が優越感に浸った時。
「天導くん、危ない!」
花の声に反応して、後ろを振り向くと同時に、ショートソードを一閃。すぐそこまで迫っていた火の玉を切り裂く。
「………危ねぇ………。おい、なんのつもりだ」
火の玉を撃ったのは、振り向いたさきにいる佐藤と坂島か?ニヤニヤしてるからたぶんそうだろ。
「あー悪い悪い。ちとコントロールミスったわー」
「だいじょーぶ?む・の・うクン。ギャハハハハハハハハハ!」
……………あー、こいつら、チートとかもらっちゃったから、天狗になってんのか。あっわれー。こういう連中は無視に限る。
「よーし、あっちゃん。弱い無能クンに、稽古つけてやろーぜ」
「それな!おーい感謝しろよ無能」
無視。
魔法が飛んでくるけど、全部切り落とす。
「このっ、このっ、調子に乗りやがって!」
「死ねぇ!」
………………いい加減に、してほしいなぁ。
腕の一本くらいなら、いいかな?
「おいっ、やめねぇか!」
お、遠藤。止めてくれんのか、ありがたい。
こいつ、何げに弱いものいじめとか嫌いな、熱血野郎なんだよな。俺にも弱いなら努力しろとか言ってくるし。
対応するのもめんどくさいから、逃げるか。
「おーい、花。訓練、あっちでやろうぜ」
「うん。そう言えば、なんで天導くんはスキル持ってないのに、魔法使えるの?」
「ん?んーー。ま、秘密ってことで」
「えー」
「いいかお前ら、アイツが気に食わねぇのはわかるが、いじめなんてダセー真似すんのはやめろ。いいな?まったく。天導、お前も………って、いねぇーーーーー!!」