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アリー、次の週の土曜日がレースだ。
うん、がんばろう。
ああ、勝とう!
『日曜日 午前中 普通棟 体育館』
おはよう
ナタリー、ロック
おはよー
ロック、ナタリー
「おはよう」
「オース!」
へえー、ここが普通棟ね。
なんだか、あまり変わらない。
「そうか?」
そうだよ。
ねえ、アリー!
うん、とは言え槍呪を持つ学校は、みんな大きいと実感してしまうよ。
本当に何人の生徒がいるんだろう?
「それは、私も同じくだわ」
ナタリーも思うよね!
ところで、この体育館に来た理由……
大きな画用紙がある。
うん、カズキの予想通りかも。
「まあ、そうなるな!アリーちゃーん!」
「こら、タクミ!」
…………私、用事が!
俺も用事が!
「あの、先輩方!アリーとカズキが嫌がってます!」
どうして、ここに居るんですか!
アリーに同じく!
「こーら、タクミ!」
「よう、来年のミストラル候補!」
え!
イルイザ先輩、ストーク先輩!
どういうことなの?
「おい、お前ら!」
「うーす……」
サクラ先輩、ライフ!
みんなどうして?
「明日の喪失予備レースの応援段幕を作ろうと持ちかけたんだけど……」
「ローランの魔女候補は、1学年上でね。昨日挨拶に来たんだけど、その時にタクミ先輩とルリア先輩でしたっけ?」
「でしたっけ? ってな!」
「正解よ!」
「いっしょにいたんだよ」
「そうそう、ミネルバ! 美人だあなあ……って言ってた」
……へえ
…………………
「あっ、アリーちゃん、これはその……って、カズキ! 笑うな!」
「自業自得ね」
「つまり、魔女候補は俺達の知り合いでな!」
「私たちも、参加したのよ!」
「実は私達の所にも、イルイザが来てな……混ぜてもらったんだ」
「……」
ライフ……
……
「久しぶり、ライフ」
「……ああ、ナタリー」
「もう、終わりよ。気にしてない」
「……すまない」
ライフ……
……そろそろ、始めませんか?
応援段幕!
ねえ、カズキ。
うん!
『二時間後 体育館』
体育館とは言ってるけど、こんな大きな体育館必要あるのかな?
この体育館、対角線上に歩くと何分係るかわからないんだ。
普通棟も、この大きな体育館必要なんでしょ?
難しいことなし!
それにしても、たくさんの生徒ね。
何百人いるの?
わからない……
その何百人の生徒を余裕で収めるこの体育館は一体……
「みんな、明日の応援段幕作りだな!」
ストーク先輩
そうですね。
俺の時も作ってくれたっけ。
うん、恥ずかしくて、嬉しくて。
「俺の時もだ!」
「タクミ、しっかり色塗りなさい!」
「カズキ、アリー、俺は諦めた人間だけど……これもありだよな」
うん、無理と思ったら諦める。
間違いじゃあない。
そうよ。
スクールは本来は、勉強するところだよ。
「勉強……か」
「……」
「ライフ、それ取ってよ」
「あっ、ああ」
「……」
『お昼休み』
「アリー、カズキ、聞いていいか?」
なんですか?
サクラ先輩
アリー、おそらく……ライフとナタリーのことですよね。
「そうだ、何かあったのか」
……
……
「……すまない、聞けない内容だったか」
ごめんなさい、私……
「サクラさん」
「何、ライフ」
「カズキ達に迷惑かけないで下さい」
「……」
「ライフ……」
「ナタリー……」
「アナタの伴侶には、知ってもらう義務があるわ今じゃなくても良いから必ず言いなさい!」
「……」
「しかし、美味い弁当だな!」
「こら、タクミ!食べながら喋らない!」
「私のお店に、特別につくってもらいました」
「さすが、お嬢様!」
「すごいな!」
「はい、先輩方も満足してもらえて、嬉しい限りです。カロリー計算もされてますから」
……アリー、ここだけの話だけど
知ってもらうの?
……うん、いずれは……
反対!
いずれで……
いいえ、封印よ!
……わかった。
「さて、そろそろ、始めよう!」
「出たー、仕切り屋ナタリー」
「ロック、しっかり仕事しなさい!」
『午後』
「よし、こんなもんかな?」
「私も、こんな感じかな?」
アリー、俺達もそろそろだね。
うん!
「よし、俺達もだ!」
「タクミ、下手くそ」
「うるせーな!」
「私も、こんな感じかな」
「俺もだ」
「私達もだ」
「サクラさん、俺もっす」
アリー、それぞれの画用紙が出来たね。
うん、後は乾かして、応援掲示板に貼るだけよ。
応援掲示板……説明するよ。
候補達がレースをする前に、ある通路を使うんだ。
その通路に、応援メッセや、絵なんかを書いて候補達を励ますんだ。
今回、レイコのペア、ムーランのペアはポイントクリアの可能性大なの。
ポイントクリア……これは始めでも説明したけど、ポイントを50点にすることが条件なの。
ちなみに、レイコ、ムーラン、相手替えで初戦だけど、前評価が高いんだ。
まあ、段幕は勝てる勝てない関係なくみんなが作るから、すごいことになるの。
俺達も、探したっけ!
「俺もな!」
タクミ先輩、今は入らないで!
「なんだと、カズキ!」
「タクミ!ごめんなさい」
「オーイ、みんなー」
ん?
カズキ、レイコよ。
アリー、目がイヤらしいよ。
「カズキー!」
「おっ、カズキ、誰だその黒髪プリティーは!」
「……」
「いて、ルリア!殴るな!」
「カズキ!会いたかったあ。ずっと、カズキの匂いをガマンしてたんだから!」
えっ!俺、臭うの?
「カズキの匂い……」
アハハハ……
「……待たせたな」
ん?
なんだ……っあ!
レイコの伴侶!
えっ!
クリス!
あなたが……
アリー、知り合いかい。
絶対1番!
!!!
スクール1番の天才、クリス……
レイコ、まさか!
「うん、私も目を疑ったわ」
「……彼女は、俺の伴侶としてふさわしい」
「オーイ」
「おっ、ムーラン」
「俺の魔女を紹介するぜ!」
「私、ミネルバ、よろしくお願いします。私、不束ですがムーランに見込まれて……」
「はいはい、ミネさん!そこまで!」
あっ!
カズキ、知り合い?
「カズキ、説明して!」
「あら、美少女的美少年、カズキ君!広いようで狭いわ、スクールは……私、カズキ君と同じ万年もう一息組なの。だから、知ってるのよ」
「ミネさん、頭いいなあ」
「……ふん!」
「クリス!」
「申し訳ありません。マイロード」
……
アリー?
どうしたの?
何でもない。
「ところで、カズキ、後で話がある。俺と二人になれないか?」
……クリス、わかった。
「カズキ、心配しないでね!クリスはスプリンターからミドルまで……カズキの敵にはならないから」
レイコ、カズキは強いわよ。
「知ってるよ。でも、クリスも強いから」
……
「ライフ、久しぶりだな」
「ああ、ムーラン」
「ナタリーとは……」
「ナタリーがもういいらしい……踏み込めない」
「そうか」
「どーしたの、ムーラン、変よ変よ、楽しくしないと私、嫌よ……」
「……」
「なあ、ライフ」
「サクラ……」
「ルリア!……そうだな」
「さっ、もう少しして乾くから、それまではここで喋ってようぜ!」
「あら、タクミ、たまには良いこと言うわ!」
『夕方』
俺は、体育館の裏に来ている。
まあ、呼び出しだ。
大きな体育館の裏に、夕日が傾けている。
今時期は日が高いから、かなりみんなと居たことになる。
「やあ、カズキ!」
クールな高飛車……クリスの印象だ。
なかなかの、いい男だが、上から目線が気に入らない!
天才の成せる業だな。
「カズキ……大きな声では……近くに来てくれ」
誰もいないよ。
「それでもだ!怖いか?」
!
「よろしい…………!」
なっ!
うぐっ!!!
もう、カズキ!体育館裏に何しにいったのよ!おいてかないでよ!
……ん、カズキ?そして、クリス!
!!!!!!
クリスがカズキを押さえつけて、唇を合わせて……
いやー!
「!」
アリー!
クリス!
バン!!!
「くっ、体重のある良いパンチだ!これが、俺からの挨拶だ。俺、良いものは男も女も関係ないんでな!カズキ……そして、アリー!」
……
……
「今日の所は、失礼する。明日、また会おう」
アリー、俺は……
カズキ、私、わたしぃー!




