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『土曜日 午前10時 実戦練習記録場』
アリー……
どうしたの?
ラット先輩とルーシー先輩の併走だけど、手を抜かないでもいいかな?
正直、先輩達が自信をなくすかも!
失礼よ。
知ってるさ。
だけど、自信をなくしかねない。
……先輩達が来たわよ。
「すまない、少しレポートが遅れてね……」
「ラット、成績はいいのよ」
「ルーシー、キミもね」
ルーシー先輩は、才女ですよね。
もちろん、ラット先輩もです。
……アリーそろそろ、槍の呪いを架けてよ。
わかったわ。
カズキ、跪いて……
……
アリーの手が俺の頬を撫でる。
冷たい手だ。
そして、いきなり熱くなる。
……きた。
カズキ、槍を我が胸に!
伴侶の契りを!
視界がみえなくなる。
槍になるからだ。
槍に目はいらない。
我が主、アリーが目なのだから……
カズキが白いオーラに包まれる。
オーラは強い光を放ち、槍になった。
槍に手をやる。
カズキ、行けそう?
いつでも、かまわない。
「アリーさん、こちらも、いいわ!」
わかりました。
ラット先輩も槍になった。
さあ、始まるわよ。
よし、跨がって!
上がるよ。
私を槍はゆっくりと宙に浮かす。
ふと、周りを見ると何組かの魔女が、伴侶を槍に変えて飛んでいる。
日曜日のポイント戦のためだ。
日曜日のポイントで、最低50点に到達しないと処女喪失戦には行けない。
アリー、スラトさんとの会話の、おさらいみたいだよ。
いいの。
会話と実際に練習している候補を見るのと、感じるものが違うの。
「私達がもらった時間は1時間よ。1時間で少しでも強くならないと!」
カズキ、始めるよ。
いつでも、いい。
やり方の説明をするわわね。
実戦練習で併飛行する場合は、1組が先に飛びもう1組が追いかける。
そうやって、競わせることで……
魔女と槍のコンビネーションを良くし……
魔女は駆け引きを……
俺達、男衆は精神を鍛える。
精神とは、勝負強さのことである。
そして、かなりのレベルアップが見込めるために、人気のある練習なんだ。
「アリーさん、私達が追いかけます」
では、私達は逃げますね。
「お願いします。ラット全力よ」
ルーシー先輩は、全力みたいね。
アリー、俺達は強めにしよう。
全力よ。
だめだ、全力では追いつかない。
本当は、なりゆきでもいいはずだ。
……わかった強めで様子見するわ。
今の、全力、強め、なりゆき、この呼び方は練習の強さを意味する。
全力は、その通り全力で飛ぶこと。
キツイけど得る物も多い。
なりゆきは、馴らすようはもの。
レース前の調整はこれ。
強めは、2つの真ん中くらいのもの。
そろそろカズキ、行くよ!
わかった。
ルーシー先輩に合図を送って!
先輩、始めましょう。
「わかったわ」
カズキ、前へ!
うん!
……こんなくらいでいいかい?
……カズキ、もう少しゆっくりよ!
えっ!
これでも……
いいから、ゆっくり飛んで
先輩達が追いつけない。
!!!
……うん、それでいい。
……
……
「よし!いい調子よ、ラット」
次、いきますか?
「お願い!ラット、いい?」
『50分後』
先輩達はかなり、飛んでいる。
ルーシー先輩も、少し疲れが見える。
アリー、ラット先輩はかなり来ているよ。
カズキ、アナタは?
……この通りだよ。
全然、大丈夫!
正直、先輩達は……弱いよ。
強めではない、なりゆき……いや……
なに?
……手加減だ。
……
「アリーさんありがとう。ラットも鍛えられたって!」
そっ、そうですか。
「それじゃ……」
「あーら、ルーシーじゃない!」
えっ?
私とルーシーは、声の方向に顔がいく。
そこには、金髪の女性がいる。
イヤらしい顔で、こちらに近づいた。
「キャラ、何か様?」
ルーシー先輩の顔が、歪んでいる。
「あんたら、いつまで遊んでんの?勉強しなさいよ天才同士!」
嫌みね。
だけど天才同士?
「あんたら」
えっ、はい!
私達に何ですか?
「天才達の勉強の邪魔はダメでしょ!」
「待って、彼女達は私がお願いしたの」
アリー、聞いていい?
こんな雲行きが怪しいのに何?
天才同士って?
ラット先輩、ルーシー先輩は学年でも5本の指に入るのよ。
成績は優秀なのよ。
……なるほどね。
「とにかく、終わったんなら帰ってお勉強しなさい、槍呪は遊びじゃないのよ!」
「……」
先輩、先に降りて下さい。
私達は今から単独飛行の練習をします。
「え?」
実は私達、この後もう少し時間があるんです。
あと40分……
「え?」
アリー、引き伸ばすのか?
うん、このまま終われない。
時間は大丈夫なのかい?
併飛行ならね。
!!!
なるほど
あのー、先輩良いですか?
「何かしら?」
先ほど一人飛行と言ってましたね。
よろしかったら、併飛行の相手をしますがよろしいでしょうか?
「アリーさん!」
私達との併飛行をしていただけませんか?
そうすれば、後もう少しは飛んでられます。
「疲れているでしょ?」
お気遣い感謝します。
ですが、大丈夫です。
「わかったわ、疲れる相手になんだが可哀想だけど……仕方ないわ」
「アリーさん、アナタまさか」
大丈夫です。
任せて下さい。
先輩達は地上より観戦して下さい。
ルーシー先輩達が地上に降りていく……
今から、キャシー先輩だっけ?
この人達とやるんだけど、一つきいていいかい?
何かしら?
ルーシー先輩を知っているのは、まさか成績優秀者懇親会……つまり、天才パーティーで知り合ったのかい?
そうよ。
学校の成績優秀な生徒を集めて、学年に2回行われるアレよ。
別名、イヤミパーティー!
俺には、関係ないな。
あら、もう一息組なのに?
カズキも成績優秀よ。
アリーに言われると、イヤミだな。
「アナタ達、早くしなさい!」
はいはい……
アリー、あまり角をたてるなよ。
しつこそうだ。
わかった……




