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最弱のスキルマスター  作者: 白樺 希連音
出会いは赤と白
9/33

(罵倒)会議

「よし、こんなものね。それじゃみんな、注目!」


 テディ☆ベアが手を叩いて、全員の視線を集める。


「まだ時間があるから先に済ませておくわ。銀狐、グラ。こんな深夜なのに集まってくれてありがとう」

「ま、テディの頼みだし、オレもバアルはもう一回検証してみたかったからな。気にするな」

「テディベアが己らに頼む事も珍しいしな。普段の礼だ」


 笑って答える二人に合わせて、シューも頭を下げた。


「クマさんもありがとう。私のわがままに付き合ってくれて」

「それこそ気にしちゃダメよ。今度例のパフェ、ご馳走になるし」


 けど、とテディ☆ベアは少しだけ困った顔をして、


「まさかバアルに挑みたいから手伝って、なんて言われるとは思わなかったけどね」

「そ、それは……動画で検証とかはしたけれど、やっぱり実際にやってみないとわからないから……」


 少しだけ小さくなったシューに、刃は苦笑する。


「そんな理由だったのかよ。まぁでも、俺みたいなのも参加できたし、感謝は感謝だな」

「本当、シューに感謝しなさい? 私とあの子だけなら、例えシューが許可しても私が許可しなかったから」

「へいへい。俺の復活アイテム分、働いてくれたらもっと感謝するさ」

「ぐぬぬ……」

「まぁ落ち着けって。とりあえずお礼合戦はここまでにして、話を進めようぜ」


 歯ぎしりするテディ☆ベアを宥めながら、銀狐が改めて画面を出す。


「オレとテディは一回挑んで死に戻りしてるから、五割の急変までは大方いけるはずだ。一応ある程度の情報はまとめてあるけど、何か気になるとことか質問あるか?」


 その言葉に、グラサンダーが手を挙げた。


「己は今回が初めてなのだが、この扉を抜けた直後に防御スキル、というのは?」

「ああ、扉を抜けた直後に、恐ろしく早い速度で攻撃が飛んでくるんだ。何人かが《受け流し》やら《完全防御(ジャストガード)》を試そうとしてたけど、攻撃の大きさもタイミングも不明で失敗してる」


 《受け流し》と《完全防御》は、簡単に言うとダメージを無効化するスキルだ。

 対象に対して軌道をズラす、または威力を相殺するなどの技術が必要なため、発動条件としては難しいものだが、対象のサイズやタイミングさえわかれば、案外誰でもできるものだ。

 しかし、銀狐が一緒に行くPTとなると、まるで改造行為(チート)でもしているかのように見える実力者がほとんどだ。それを理解しているグラサンダーは己の実力と彼らの差を想像し、

「最低ダメージと種類は?」

「VIT400超えてる奴が鉄製の騎士の盾(ナイトシールド)で受け止めて300だな。種類は不明だけど、あれは 十中八九、物理だろ。オレも初見で食らった時は四桁入って死に戻り寸前だったんだが、受けた時の感覚が物理的だった」

「VITがそこまであってもそのダメージなんだ……」


 呆れた様子のシューに、銀狐は苦笑する。


「現状最強ボスの一体だし、仕方ないんじゃないか? まぁスノードラゴンと違ってこの部屋はレイド戦を行うには狭いし、今回勝てるか、って言われたら多分無理だけどな」

「私も勝てない確率が高いのは理解してる。けど、勝てるかもしれないとも思ってる」


 シューの言葉に、グラサンダーと刃が頷いた。


「上手くいけば初撃はなんとかなるやもしれん。万が一攻撃が抜けたとしても、ある程度は減らせるだろう」

「検証動画と道中見て判断した限りは、下手踏まなきゃ勝てる見込みは高いPTだと思うぞ」


 続けて、第二段階がなけりゃな、という刃の冗談にテディ☆ベアはため息をつく。


「足手まといのアナタがそれを言わないの」

「そりゃごもっとも。今回は戦うどころか、アドバイスすらできそうにねぇしな」


 肩をすくめた彼に、グラサンダーは眉をひそめた。


「さっきまでの動きでVITとAGIが低いのはわかっていたが……STR極ではないのか?」


 《パラレル・ユニバース》において、ステータスの伸ばし方はともかく、伸び代はキャラクター生成時に与えられるポイントを振ることで、ある程度決めることができる。

 これをSTRにひたすらつぎ込み、敵に与えるダメージを高めやすくするのがSTR極振り、というものだ。

 だが、これは他の能力がおろそかになる、というデメリットがある。

 例えば、《パラレル・ユニバース》では初期に10ポイント与えられるのだが、これを平均的に振った序盤のプレイヤーが素振りをすると、一時間ほどでSTR、HPがそれぞれ少しずつ上がる。

 だがSTRに全てつぎ込んで同じことをした場合、十分もしないうちにSTRは増えるが、HPは五時間、六時間ほど続けてようやく、といったところだ。


 グラサンダーたちがそう思っていたのに気づいたのか、刃は気まずそうに目を逸らす。

「あー、いや。俺は……」

「そういえば私も気になってた。スノードラゴン相手に、普通に攻撃した時は全然ダメージなかったし」

「は? なんだそれ? それでよくスノードラゴン相手に戦えてたな」


 話を聞いていた時は細かい部分は端折っていたため、まさかSTRも少ないとは思っていなかったのだろう、銀狐が馬鹿だこいつと腹を抱える。


「ということは何、アナタMP極かスキル極って真性のドMなの?」

「んなわけあるか!」


 テディ☆ベアの言葉に刃は勢いよく突っ込み、


「MP1、スキル9振りだ」

「どっちにしろ馬鹿よ、アナタ本物の馬鹿よ!」


 流石に予想外だったのか、銀狐は勘弁してくれと大笑いしながら転げ回り、グラサンダーは頬を引き攣らせた。


「初期スキルと合わせてスキル十二個も取っておいて、魔法はないの?」

「いやあるぞ。ただ倍加カウンターの方がダメージ高いから、そっちしか使ってねぇだけだ」


 刃の言葉に、シューは驚きを通り越して呆れていた。


「スノードラゴンの時、よくMP保ってたわね」

「一応これでも四桁いってるからな。それに倍加カウンターもレベル最大だし、二十発はいける」

「MP1振りで四桁とかほぼ常にスキル使ってる状態じゃない。言葉の綾でもなんでもなく、本当に最弱カウンター馬鹿よ……」

「HPは一応500ちょっとあるけど、他は全部40以下だからなぁ」

「馬鹿だ! ここに本物の馬鹿がいる!」

「うっせぇ!」


 相変わらず笑い転げている銀狐を尻目に、グラサンダーはなんとも形容しがたい顔をしていた。


「では刃殿はどうするのだ? バアル相手に守り続けることは不可能だ。見学と言っても、それすらできないかもしれん」

「もう《旗指定》はやったからな。死んでも問題ねぇし、初手さえなんとかしてくれりゃ後は放置でいい」

「……了解した。死ぬなよ」


 と、ようやく笑いが止まったのか、目尻に涙を少し溜めながら銀狐が起き上がった。


「あー、笑った笑った……さて、他に質問はないか? ないなら、そろそろいこうか。もうすぐ三時だ、頑張って早めにケリをつけようぜ!」

サブタイトル、毎度どうするか悩みます……

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