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最弱のスキルマスター  作者: 白樺 希連音
出会いは赤と白
16/33

いつの間にか

今回は短めです

 シュー、グラサンダー、銀狐と動画を見終えていったところで、勢いよく酒場の扉を開けてテディ☆ベアが酒場に突入してきた。


「遅れてごめん! まだやってる!?」


 その声に周囲の数少ないプレイヤーたちが何事かと反応したのを見て、思わずと言った感じで頭を下げたテディ☆ベアに、奥にいた銀狐がこっちだと手を振る。

 恥ずかしそうにしながら小走りでやってきたテディ☆ベアは、彼らが見ている動画を見ると首を傾げた。


「……えっと、終わってるのよ、ね?」


 顔がにやけそうなのを我慢しながらも困惑している、というよくわからない表情でテディ☆ベアが銀狐に訪ねた。

 その言葉に、当人だけでなくグラサンダーやシューも首を傾げ、


「いや、今から刃の撮ったやつを見るとこだけど」

「え、だって今、子猫の動画を見てるじゃない」


 その言葉に銀狐がまさか、と刃を見ると彼はニヤニヤと笑っている。


「《幻影迷彩》の効果は、PTメンバー以外に設定した写真、または動画を見せるスキルだ。で、テディ☆ベアが見てる動画は『我が家のふわふわ子猫 その1』ってやつさ」

「……覚えておくわ」


 そう悔しそうに答えたテディ☆ベアに、刃はただ笑うだけだった。


「で、俺の動画なんだけど……」

「まさか撮り忘れてた、ってわけじゃないよな」

「んなわけねぇだろ。公開して欲しくないだけだ」

「おう、別にそれくらい構わないぜ」


 笑って手をひらひら銀狐をうさんくさそうに見つつ、刃は自分の動画を再生した。


「あー、スノードラゴンの時から動画つけっぱなしだったから、結構飛ばした方が――」

「なん……だと……!? これは期待できるっ」

「それは予想外であるな……どれ、己も少々……」

「おいちょっと待て! 反省会はどうした!」

「どうせ全員時間は空いてるだろ? 少しくらい良いだろ」

「私もちょっと気になるのだけれど……あと、その前にこの子猫しか見れない状況、なんとかしてくれないかしら」

「それはPT組めばすぐなんとかなる。っておい銀狐てめぇ何動画焼き増ししてんだ!」

「いいじゃないか別に。お、シューお前この《スラッシュ》の連続発動、バアルの時も思ったけど上手いな! どうやってここまで連続発動させてるんだ?」

「あ、ありがとうございます……えっとそれは――」

「それより刃殿、スノードラゴンが飛び上がるタイミング、どうやって見ていたのだ?」

「あいつの場合は直前に尻尾叩き付けた後に飛ぶのが体感的に多い気がする。ノーモーションの時は読みしかねぇ」


 途端に騒ぎ始めた彼らは、しかしバアル戦の場面まで動画が進んでも、変わらない雰囲気のままであった。


「で、全部見終わったけれど」

「最初以外みんな酷いな、これは」


 テディ☆ベアが冷静に、銀狐が笑いながら指摘した。


「前回と違ってオレも前線に出てみたらどうかと思ったけど、出なかった方がよかったかもな」

「私は途中で暴走しちゃったわね……はぁ、気をつけてはいるんだけど……」


 グラサンダーも何かあるのか、むぅ、と軽く唸って腕を組んでいた。


 ――あれだけ動けていても、そう思うんだ。


 シューにとって、それは驚きだった。

 もちろん始まって一年しか経っていないゲームだ。かなり進んでいるように見えて、その実全く進んでいないのは間違いないだろう。

 だが、現時点では最前線の実力を持っている、いわばトップランカーたちである彼らが、初めて間もないシューと同じように悩むなど、彼女からすれば予想外のことだった。

 それは刃も同じなのか首を傾げて、


「上を見りゃ限りねぇのはわかるけど、そこまで悩むことか?」

「当たり前だろ。わからない相手ならそれ相応のやり方があるし、例え勝てない相手とわかっていてもゲームなんだ。せめて次は勝てる! って見込みが欲しいものだろ」

「あー、確かにそりゃわかるわ」


 銀狐の言葉にグラサンダーとテディ☆ベアが頷き、刃もそれに引き続いた。


「結局目標にしてるレベルが違うだけで、やりたいことは同じなんだとオレは思ってる。だから別に失敗したって気にしないし、文句もよっぽどで無い限りは言わないさ。楽しめればそれでいいんだよ」

「とか言っちゃって、銀狐も案外気にすること多いでしょ。この前愚痴ってたの、聞こえてたわよ」

「え……」

「それ今回じゃないからな、間違いなく三ヶ月以上前の話だから気にするなよシュー!? というかグラサンダー、お前それ知ってるだろ! 少しくらいフォローしてくれよっ」

「女同士の会話に口を挟む気はない」

「この裏切り者ぉ!」


 結局騒がしいままその日は終わり、反省会というよりも交流会になってしまったのは後の祭りであった。

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