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プロローグ

 それはあまりにも突然のことだった。

「……は、」

 吐息と共に零れたのは鮮やかな紅。

 こぷり、と咽喉を焼きながら等しく己れの命が失われていくのが解った。

 こんな事で終わるのか。

 というかなんでいきなり終わっていくのか。

 疑問は尽きないけれど、思考能力もどんどん削られていく。


 死にたくない。

 死にたくない。

 しにたくない!


 痛みがないのが幸か不幸か。

 それでも迫りくる死への恐怖が本能を揺らす。


「ふむ、つい反射的にやってしまったが……弱いな」


 霞がかった視界の向こうに何かが見える。

 つい?反射的に?

 そんな風なもので自分は殺されるのか。

 理不尽、という言葉が脳内を過ぎるが怒りは沸いてこない。そんなものを生み出すほどに命が残っていないのだ。

 けれど死にたくない、というただそれだけが彼をほんの僅かにこの世界に踏み止まらせていた。

 だが、それも長くは続かない。


 そして、それは発動する。

 巻き込まれてしまった彼が、ただ一つ持った力。

 ふつり、と彼の命が途切れた瞬間にこの場の全てを呑み込む。


「『黄泉返り』」


 死した肉体が、ぽつり呟く。

 彼を殺した何かがそれに気付いて再び力を込めようとするも、遅い。

 この場にあった不可視の力が彼だったものに向かって流れて、否、吸い込まれていく。

 それは形を持っているものでも例外ではなく、内側から引きずり込まれるような力に抗うことはできない。

「っなんだこれは……?!」

 驚いたような声がするがそれに応えるものはいない。

 最もその力の中心である彼もまた、どうしてこうなったかなんて知る由もないのだが。


 そうして、最後に残ったのはただ一人。



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