表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/92

第五十話:エピローグ

お久しぶりでございます。やっと完成したエピローグです。制作理由は『49話って中途半端じゃん』と言う理由です(笑)。内容も候補はいくつかありましたがコレになりました。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。ではどうぞ。

……えーと、その。とりあえず初めまして。佐倉 桜花って言います。最近高校生になりました。今日は俺の誕生日です。もう16歳になりました。

ホントこの16年………凄かった。なんというか上手く表現出来ないんだけど……そのあたりは皆様の方が多分よくわかるのではないでしょうか?




『第五十話:エピローグ:あれから十五年…… side O』






喫茶『frontier』。最近ではだいぶ有名になってしまった我が家はクラスの奴の半分は知っているらしい。

そんな有名店も今日は俺の為にわざわざ貸し切りにしてくれた。


いつもの様に階段を降りてフロアに向かう。


「おはよー。」


俺の声に反応して新聞から顔を見せたのは親父である佐倉 陽である。俺が知ってるメンバーの中で唯一普通の性格の人物。親父似で助かったよ。これがもし……


「おーか!!おはよー!!」


背後から飛び付いてくるお馬鹿な人を軽く回避する。ドテッとフロアにこけた。


「もー、なんで毎朝よけるのよ!!」

「じゃあ毎朝飛び付いてくるなよ。」

「陽さーん、おーかがぐれたー!!」

「………あっそ。」

「えぇっ!?陽さんもぐれたー!!親子揃ってぐれたー!!」


……この人だったらヤバかったな。一応うちの母親で佐倉 咲羅って言います。頭のネジは抜けてるけど家事、仕事両方をバリバリにこなす鉄人です。


「おっはよー。」


不意に後ろから声が聞こえた。


佳乃(よしの)〜、お父さんとおーかがお母さんをいじめるのよ。」

「それっていつものことじゃない?」

「よ、佳乃まで、そんなぁ。」

「うーそ、冗談よ。お父さんもお兄ちゃんもお母さんに優しくしなきゃ駄目でしょ?」

「「………はい。」」


今年で中学二年になった佐倉 佳乃。ちなみに佳乃はソメイヨシノからとったらしいです。最近は母親より母親らしくなっていてほとほと困っております。

こんな感じで佐倉家の朝はいつもの様に進んで行きます。







親父と一緒にコーヒーを飲みながら食休み。とは言っても親父の様にブラックを飲めるわけもなく、ミルクと砂糖を入れる。


「……16になってもまだまだ子供だな。」

「親父がおかしいんだよ。よくブラックなんて飲めるよ。」

「………そうか?」


親父は首をかしげながらまたコーヒーを飲む。


カランカラン


扉のベルがフロアに響く。


「おはよー!!」

「ちーっす!!」


入って来たのはこの店の店長とパティシエ、龍太さんと桃華さんだ。

一応うちの母親の義理の兄とホントの姉って間柄。桃華さんに叔母さんって言うと殺されかけるけど。


「お姉ちゃん早いねぇ。」

「まぁ可愛い妹の息子の為に立派なケーキを作らないとねぇ。」

「俺もこの店にいるのが一番落ち着くしな。」

「……龍太、発言が老けた感じがするぞ。」

「うっせぇ、お前も同じ歳だろ!!」


また一段と騒がしくなる。まぁまだまだ序の口だけど。


「おお、そうだ。桜花!!」

「何ですか、龍太さん?」

「うちの虎が『いつもんとこで待ってる』ってよ。」

「虎が?わかりました。」


虎は龍太さんとこの一人息子で虎太郎(こたろう)って言う名前。俺と同じ年、同じ学校、同じクラスである。

俺は少し準備してアイツご指定の『いつもの場所』に行くことにした。




自転車を飛ばすこと15分。着いたのは学校……の裏。無駄に広いこの学校の外回りだけで結構な時間がかかる。

学校の敷地内に(こっそり)自転車を忍ばせて、また歩く。目的地は学校裏の竹藪の中。なぜこんな都会に竹藪があるのは定かではないが、やたらと伸びた竹が春の暖かな風でなびき、俺を迎えてくれる。




「遅ぇぞ、桜花。」


誰が建てたか知らないが竹藪の中に少し大きめの小屋がある。中学の時から利用していた小屋はさしずめ『秘密基地』ってところか。


「お前なぁ、物理的に考えても早い方だぞ。大体何で携帯に電話しねぇんだよ!!」

「……充電中。」

「………はぁ。」


溜め息を吐きながら(かっぱらってきた)ソファに腰をおろす。しかしなぜか虎太郎の様子がおかしい。


「虎、どうした?」

「あっ、いや、その、とりあえず………ごめん!!」

「はぁ?何で謝って………うおっ!!」


突如羽交い締めをされる。


「桜花、つーかまえたっ!!」


聞き覚えのあるその声に恐る恐る振り返る。………やっぱり。

後ろにいたのは榮井(さかい) 詩音(しおん)、あの翔太郎と栞さんの愛娘である。

詩音は栞さんの娘だけあって、容姿端麗、頭脳明晰、更に運動神経抜群の完璧な人物だ。だけど翔太郎(ちなみに自分から呼び捨てで呼ばせたのであしからず)の遺伝子も含んでいるわけで、やっぱりどこかおかしいのだろう。そして何より何故か俺にひっついてばっかりである。


「詩音、とりあえず離せ!!」

「逃げない?逃げない?」

「ああ、逃げないから!!」

「じゃあいいよ。」


腕が離れるか離れないかの絶妙さで俺は扉に向かってダッシュした。が、扉寸前で止まった。というか止められた。止めた相手は辻家の双子、右京と左京だ。流石にオリンピック夫婦の息子だけあって運動神経は抜群である。……と、こんな冷静に説明してる場合か!!


「はっ、離せ!!右京!!左京!!」

「いやぁ離せと言われても。」

「俺たちだって好きでやってるわけじゃ……」

「じゃあその腕にぶら下げてるコンビニの袋は何だ?」

「「………」」

「コンビニの商品くらいで簡単に買収されんなぁぁぁ!!」


叫び終わったあとハッとして後ろを振り返る。そこには……


「うーそつーいたらはーりせんぼんのーますっ。(はあと)」


………鬼がいた。






「じゃあ桜花、16歳おめでとー!!」


ここにあつまった理由は先にプチ誕生日会をするためだったらしい。ただ……今の俺、情けない。太股の上に詩音を乗っけてる。いや、重くはない。むしろ軽すぎる。ただ……恥ずかしい。死ぬほど。


「ドンマイ、桜花。」

「虎……後でおぼえとけ。エレナにいいつけるからな。」

「そっ、それだけは……」

「ごめーん、遅れちゃった。」


噂をすればなんとやら。冴木家の長女、エレナが買い物袋をぶら下げてやってきた。ちなみに後ろには次女、恵(めぐみ、通称メグ)が更に買い物袋をぶら下げていた。

おしとやかなのはやっぱ環境が落ち着いてるからなのか、愁さん達に似たのか……多分どっちもそうだな。

ここで年齢確認だが、詩音が一つ上、恵が二つ下、後は全員同い年。ちなみにうちは二人だが、虎の家には男二人、女一人。詩音のとこは二人、どちらも女である。虎んとこの三人と詩音のとこの二人は小学生なので基本的にはここに来ることはあんまりない。

だからメンバー的にはこれで勢揃い(まぁ佳乃が足りないのはご愛敬……じゃまずいよな)。というわけで一人足りないが小屋の中が少し狭くなる。


「エレナ、虎のやつが……」

「馬鹿、桜花!!」

「虎太郎、また何かしたの?」

「あとでじっくり教えてやるよ。」

「楽しみねぇ。」


虎太郎が震えてるがスルーしておこう。ちなみに虎とエレナは去年から付き合っている。明らかだろうが虎が尻に敷かれてる。


「ホラホラ、ちゃっちゃと食べちゃって桜花ん家に行こう?」


こういう仕切りはやっぱり詩音がする。相変わらず俺の上で………。




辺りが段々と暗くなり始めてきたので、俺達はぞろぞろと我が家まで歩いて行く。俺のチャリは放置されたまま……だってまだ詩音に捕まえられてるんだもん。一方的に握られた詩音の手は少しヒンヤリしていた。

道路に伸びる影は大きかったり小さかったり。ふと隣を見ると詩音の顔に夕日が照らされていた。


――もったいないなぁ。


心の中で翔太郎を恨みながら繋いでいた手を少しだけ握りしめる。詩音は少しびっくりしたみたいだったけど、少し微笑んでから俺の方に寄り添っていた。




「ただいま。」

「お邪魔しま〜す。(×6)」


フロアには膨大な量の品々が並んでいた。

更に言うと既に宴会も始まっていた。


「おきゃえりぃ〜」


明らかに酔ってるであろうウチの母。隣では悪の元凶であろう翔太郎が。


「おせぇぞぉ〜おみゃえらぁ」


翔太郎は何故か名古屋弁っぽく喋っている。龍太さんは既に酔い潰れたらしく夢の世界へ向かっていた。

絵美さんと綾子さんはケーキ(多分俺のだよな……)を食べながら談笑、桃華さんと栞さんは相変わらずの酒豪っぷり。

愁さん、誠治さんは親父と飯を食ってるし、佳乃はメグとケーキを食べている。

まぁ一言で言うと………皆勝手だな。

多分俺の誕生日ってのは口実で、結局は集まってどんちゃん騒ぎをするのが好きなだけなんだな、うん。


「食うぞー!!」

「「おおー!!」」


馬鹿三人は早速飯を食いに走る。エレナは先頭に立って行った馬鹿な彼氏に溜め息を吐きながら後を追う。で、残された俺と詩音。俺が詩音の方を向くと詩音は笑いながら俺の手を引っ張る。俺の掌の熱が移ったのか、さっきみたいにヒンヤリとはしていない。


「ほら、桜花。ケーキ食べよ。」

「………ああ。」


そのまま詩音に手を引かれながら歩いて行く。

この光景、はたから見たら多分馬鹿みたいに見えるけど、こんだけずっと一緒にいられる仲間をもった親父達を羨ましく思う。






「ホラ桜花、飲めー!!」

「飲め飲めー!!」

「ちょっ、やめっ、これ普通に酒じゃん!!」

「あらしの息子なんらから、らいひょうふへひょ」

「ひょうひょう、高校生にもらって飲めないんじゃおじしゃんかにゃしいじょー。」




前言撤回。少なくともこの二人(ウチの母と詩音の父)は羨ましくない。……嗚呼、夜が更けてゆく……誕生日なのにもうだめみたいです。




翌日、何故か詩音に抱きつかれて寝ていた俺を不覚に思う。

いかがだったでしょうか?楽しんで頂けたでしょうか?産まれたまま放置では流石に可哀想だったので(笑)。

これで本当にこの話は終わりだと思います。続きを書けば多分支離滅裂になりそうなので……。あとは読者の皆様で桜花の将来を見守ってあげて下さい。(誰か続きを書いても……いや、そんな人確実にいないですね(笑))

評価を頂いた皆様、毎日読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。―鶉―

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ