第四十九話:最終話
これで完結です、今までありがとうございました。後書きにちょっと長めに書かせて頂きますのでよろしければどうぞ。
桜咲く季節がまたやってきた。黒い礼服姿の俺を桜の並木が迎え、やわらかな風が俺を包んでくれた。沢山並ぶ墓石の中の一つに足を止める。手に持つ花束を墓前に飾り、線香に火をつける。
「……あれから……もう五年か。……お前は……元気でやってるのか?」
語らない墓石に一人呟き、水をかける。灰色の石はたちまち黒くなる。
空を見上げると入道雲が気持ちよさそうに浮かんでいた。
ふと足音が、こちらに駆けてくるのがわかった。俺はそっちに視線をずらした。
『第四十九・最終話:サクラの愛のカタチ double side』
「よーさーん!!」
走ってくる咲羅も礼服に身を包んでいる。少し息を切らしながら俺の隣で止まる。
「………あのなぁ、妊婦は走るもんじゃないだろ。」
「母は強しってやつですよ。」
「………はぁ。」
そこまで目立っているわけではないが、お腹が膨らんでいる咲羅。姉貴が妊娠した時より全然膨らんでいないのだが、もうすぐ臨月である。
「あっ、そうそう。唯さんに持って来たの。」
咲羅の掌には桜の花びら。それをコップの水に浮かべる。
「………んじゃ帰るか。」
「はい。」
俺達はゆっくりと墓地を後にした。
家に帰るまで私は陽さんにひっつきながら歩く。まぁ妊婦だから安全に安全を重ねてるだけだけど。
私が事故にあってから五年が経ちました。目を覚ました時、陽さんの顔を見た時は嬉しかった。
臓器の反発みたいなのは無かったらしくて、あぁ、唯さんが私を助けてくれたんだなぁって実感した。
大学も無事卒業し、直ぐに私達は入籍した。お父さん達に挨拶するとき、陽さんめちゃくちゃ緊張してて笑っちゃったなぁ。
そんで今、私の中には陽さんとの愛の結晶があります。たまに私のお腹を蹴る感じがたまりません。陽さんもちょっと親馬鹿になりそうな傾向があったりして。
………と、そんな過去を思い出してるうちに我が家に到着です。今日も賑やかな我が家の扉を私達は開いた。
「おかえりー!!」
「………お前なぁ、勝手に宴会を始めるな!!」
翔太郎はまた勝手に冷蔵庫からビールを取り出して飲んでいる。
「………栞、頼むからお前の馬鹿亭主をなんとかしてくれ。」
「無理。だって面倒だもん、ねぇ詩音?」
栞は娘の詩音と絵本を読みながらソファでくつろぐ。
あぁ、そうだ。忘れてた。この喫茶『frontier』は三年前に改装して今じゃ雑誌に載るほどの盛況ぶりだ。理由は……
「じゃーん!!新作ケーキ第26号が出来ました〜!!ほら咲羅に栞に詩音ちゃん、試食、試食!!」
桃華がフランスから帰国して、この店でケーキを作ってるのが大半だろう。で、店長はと言うと……
「う〜ん、新しいテーブルちょっと高いなぁ。いや……でもここはコレで……」
「……てかまた改装する気か、龍太?」
「う〜ん、従業員用の部屋とか作らなきゃいけないしなぁ。」
大学を休学していた龍太も無事に卒業し、この店の経営を担当している。
「……で、そこの二人は相変わらずただ飲みか?」
「やっぱり原稿書くにはここが一番なんだよねぇ。」
「私も絵を書くのはここが一番ね。」
芸術夫婦と化した愁と絵美。幼稚園児に読ませる絵本を二人して作るとはさすがだな。
翔
「おーい、陽!!今日のスポーツ紙見たか?」
「………ああ、あのスポーツ夫婦が出てるやつだろ?」
咲
「そうそう!!綾子ったら昨日取材でウチの店の宣伝したらしいですよ。」
「………またか。」
誠治はオリンピックに出場し、陸上200m争で日本人初めてとなる銀メダルを獲得した。
綾子もメダルまではいかなかったが同種目で5位入賞を果たした。
皆が皆、各々の道を進んでいるが必ずどこかでつながってると改めて実感した。
最近皆が一緒にいることが少なくなってきた。でも皆繋がってるって私は思う。
いつもの様に陽さんが翔太郎君にキレたり、絵美が愁さんとのんびりしてたり、お姉ちゃんのケーキを皆で食べたり、綾子達がテレビに出て『咲羅、みてる〜?』って何回もやったり………あれ?もしかしてあんまり変わってないのかな?
あっ、そうそう忘れてた。私はちゃんと教師になりましたよ。もちろん陽さんと一緒に。今は産休もらってますけ………ど?
あれ?なんか……痛い?いや、痛たたたた!!まさかこれって陣痛?
「……陽さん。」
「…どうした?」
「………う」
「……う?」
「………産まれる。」
「………はぁぁぁぁ!?」
そんなビックリしなくても……てか私のがビックリしてるし……あ痛たたた………こりゃ本格的だわ!!
翔
「陽、車、車!!」
「…おっ、おう!!」
あんなにしどろもどろした陽さんって初めてだなぁいたたたた……今はそんな場合じゃないのね……。
「……あ〜どうしよう……」
さっきから行ったりきたりの俺。
愁
「とりあえず落ち着きなよ。」
龍
「それにしても陽がここまで慌てるとはな。」
栞
「大丈夫よ、そんなに早く生まれないわよ。」
翔
「経験者は語るってやつだな。」
栞
「まぁね。」
桃
「咲羅〜頑張って〜!!」
誠
「ハァ……ハァ……お待たせ!!」
綾
「絵美、さ、咲羅は!?」
絵
「まだよ、だから一回落ち着いて。」
さっき連絡したばかりなのに……さすが陸上夫婦(車だから関係ないか?)
こういうとき俺は何にも役に立たないな。いくら勉強出来てもスポーツが出来ても、咲羅の代わりに痛みを受けることもできない。出来ることは………祈るだけ。
数時間後……
『おんぎゃ、おんぎゃあ……』
……聞こえた。聞こえた!!確かに今、赤ん坊の声が!!
「おめでとうございます、元気な男の子ですよ。」
看護婦さんに言われた時、涙が出た。
天井が見える。そして愛する人も。なんか事故の時に見たのと似てるなぁ、あの時も陽さんは泣いてたっけ。
「……咲羅、頑張ったな。」
「……えへへ。」
「……元気な男の子だってさ。」
私は横を向く。まだしわしわの小さな赤ん坊がそこにはいた。
「………可愛い。」
「……咲羅に似るかな?俺に似るかな?」
「男の子だからやっぱり陽さんに似て欲しいなぁ。」
陽さんは嬉しそうに赤ん坊を見てる。
「ねぇ、陽さん。」
「……ん?」
「これが私達の愛のカタチだよね?」
「………ああ。」
陽さんは微笑んで私に口付けをしてくれた。
命名『桜華』
さくらの花びらって意味。私達の愛のカタチはやっぱり桜だから……かな?
今まで本当にありがとうございました。長くなった『サクラの愛のカタチ』如何だったでしょうか?
連載当初20、20で40話くらいしか考えていませんでしたが四苦八苦しながら91……長いですね(汗)
さて、一応ストーリーとしてはここで終わりますが、作者の勝手な形であとがきを書かせて頂きます。キャラ設定とか裏話とか、まぁ本当に自分勝手に書かせて頂きます。そこで皆様から、Q&AのQを出して頂ければなぁなんて思います。作者に聞きたい事があったら(多分無いと思いますが)感想かなんかに書いて頂ければなぁなんて思ってます。
一応来週あたりまで受付しますが、多分無いと思いますので独り言みたく書くと思います。馬鹿な作者の妄想ですが、もしよろしければお付き合い下さいませ。
最後になりましたが、読んで下さった方々、評価、感想、メッセージをくれた方々、本当にありがとうございました。長文失礼しました。
――鶉――