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第四十六話 其ノ二

大学生活も(ほんのちょっと、ってかミリ単位くらいで)慣れてきました。まぁまだ一週間位しか経ってないんだけどね。

大学生活は今のところ快調な滑り出しを見せています。

初日に陽さんとの交際が発覚してしまい、ファンクラブの方々に何をされるのかとビクビクしていたのですが、あの時の陽さんの迫力に(私はよく覚えてないんだけど……)恐れをなしたらしくて案外穏やかです。



『第四十六話:悪夢 side S』



私のことはまぁともかくとして……最近陽さんの顔色が良くない。心なしか元気もないみたい。

ただ、私には大丈夫と言ってくれてる。でもね、私は陽さんの彼女なんだから話してもらいたいんだよ?

今朝の登校中もあんまり体調は良くないみたい。……口は達者だったけど。ホントに疲れが原因かなぁ?

ともかく、陽さんが元気になれる様に前々から思ってた計画を決行しなきゃ。しかもそれが丁度今日だし。


陽さんに内緒にするため用事があるって言ったら


「………浮気か?」


だって!!どんだけ信頼ないのよ!!顔を見られたらバレそうだから走って校舎まで行く。軽く息があがる私、綾子を見習わなきゃ。






お昼休み。綾子と絵美でランチの時間。三人掛けのベンチに座り、お弁当を広げる。私と絵美は手作り。綾子は学食のAランチ。学食でもいいんだけど毎日だと食費がねぇ。あと陽さんに作ってあげるのも楽しいし。


「………タコさんウインナーはやめてくれ。」


って言われても入れ続け、諦めたらしい。ちょっと前にはウサギさんの形の林檎とか入れたりしてたし。でも陽さんの口から『タコさんウインナー』って聞いた時は笑いそうになったし。


「で、話って何?」


綾子は鯵フライをかじりながら聞いてきた。


「何の話なの?」


絵美は首をかしげながらおにぎりを頬張る。


「実はね………」

「「実は……?」」

「今日はなんと、陽さんと私が初めて出逢ってから一年が経ったの!!ねぇ凄くない!?」


「綾子、海老フライちょっとちょーだい。」

「じゃあ玉子焼きと交換ね。絵美のだし巻き玉子はホントぜっぴ……」

「無視!?ねぇ無視!?せめてなんかリアクションしようよ!?」

「だって……ねぇ。」

「結局ノロケ話じゃん。」

「むぅ。」


否定出来ないのが痛い。確かにノロケ話だけどさぁ……


「はいはい、わかったからそんな顔をしない。せっかくの美人さんが台無しですよ?」

「………美人じゃないもん。」

「でも今年のミス・ユニバース候補に挙げられてるらしいわよ。私達三人。」

「「………はい?」」


ていうかそんな情報を絵美はどこから仕入れてくるんだろ?


「そっ、それより!!今日私、ケーキとか買いに行かないといけないから私の分まで働いてね。」

「ケーキ買うのにそんなに時間掛らないでしょ?」

「栞さん家で作るんだもん。前々からお姉ちゃんに作り方聞いてたし。」

「まぁ仕方ないか、陽さんラブなんだから。今度ランチ奢りね。」

「おっけおっけ、任せておいて。」




手に紙袋と買い物袋をぶら下げながら歩いていると、やじろべえみたいな気分になるのは私だけ?

ようやく作り上げたケーキ、ちょっと栞さんにも手伝ってもらったけど完成した。


「陽君、喜んでくれるといいわね。」

「はい!!お世話になりました〜。」

「次のケーキはいつかしら?」

「う〜ん、付き合ってから一ヶ月記念ってとこですかね?」

「ずいぶん早いこと。まぁ幸せそうでいいわね。」

「えへへ〜。」

「少し暗いから送ってこうか?」

「大丈夫ですよ。もうすぐ翔太郎君も帰ってくるでしょ?」

「じゃあ気を付けてね。」

「は〜い。」



ケーキを崩さない様にゆっくり歩く。大通りはいつもより人が少ない、まだ帰宅ラッシュには早いかな?小学生も元気そうに帰っている。

私も子供が出来たら元気な子に育てたいな。……もちろん陽さんとの。……なに大通りでそんな事考えてるのよ!!少し顔が赤くなってるかも………

またまた小学生が通り過ぎる。うんうん、子供は風の子。元気が一番。

そんなとき嫌な音が聞こえた。地面を擦る嫌な音。信号を渡ろうとしている小学生の横から車が――

私は気付けば走って小学生を突き飛ばしていた。体に鈍い衝撃が走る。

視界にはさっきの小学生。あぁ、無事だったんだ。良かった、良かった。



………そこで私の意識が切れた。

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