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第四十二話 其ノ二

夕食を済ませた私達。私の視界には部屋に向けて歩き出している陽さんを発見した。陽さんが着ている浴衣の端を掴む。陽さんは一瞬よろめきながらこちらを見た。とても不安そうな顔で。

私は陽さんと散歩に出かけた。なかば強引に。陽さんの


「………無理」


には少しってかかなり覇気がなかった。お疲れ様。それでも私について来てくれる陽さんはホントに優しいんだと実感した私。



『第四十二話:温泉旅行と各々の想い 其ノ四 side W』



汗が滴となって頬を伝い、顎で止まり、床に落ちる。既に浴衣の背中はびっしょりだ。手に握るラケットの柄にも染み込んでいるだろう。対峙している誠治さんのプレッシャーは凄まじく、これが温泉卓球だなんてすっかり忘れていた。


「ハンデなんて要りません!!」


な〜んて強気に言っちゃったけど、ハンデもらってたら多分もっと早くに決着がついてたはず。

いつの間にかギャラリーがわんさかいるし。なんか凄いことになってるなぁ。……って、何人事みたいに考えてるのよ!!集中しなきゃ!!


「大丈夫か?疲れたんじゃないのか?」

「まっ、まだまだー!!絶対誠治さんに勝つもん!!」

「いくら彼女とはいえ負ける訳にはいかないなぁ。」

「それはこっちの台詞!!」


お互いがお互いに負けず嫌いだからなぁ。だから今だけは誠治さんは敵なのよ!!そう思いながら白球を高々と上げた。






「悔しー!!」


部屋の中で枕を叩きながら怒りをぶつける。枕には悪意とか何も無いけど………とにかく悔しい。


「あーやこっ。」


部屋に入ってきた誠治さんは私の顔をのぞきこむ。


「まだ怒ってるの?」


切なげな誠治さんの顔に思わずドキッとしてしまう。


「……別に怒ってませんよ。」


自分で嫌になるくらい低い声が出てしまった。こんな性格だから嫌われても仕方ないよね。

その時暖かい感触が。私は誠治さんに包まれていた。


「ごめんな………スポーツマンとしては手加減とか出来ないんだ。やっぱり手加減したら相手に失礼だし。だけどさ………俺のこと嫌いにならないでくれよ。」


違うの………嫌われてもおかしくないのは私なの。誠治さんが言ってることだってわかるよ。私だって一応スポーツ選手だもん。だから私の頬には涙が伝ってた。誠治さんの優しさが心に染みて。


「じゃあ……」

「ん?どうした?」

「今日はこのまま……寝てもいい?」

「了解。」


1つ軽いキスをして私達はそのまま眠りについた。






目の前に広がる雄大な景色を私のスケッチブックに残す。思い出作りの為に写真を撮るのと同じことだと思う。描くことによって、ここは私の思い出になる。そんなに上手いわけじゃないんだけど。

絵を描いていて気付かなかった後ろの気配。気付いた時には心臓が止まるかと思った。愁さんはいつも驚かされてばかり。でも今度は私が驚かす予定だし。


「見せて。」

「………まだ駄目。」

「み、せ、て。」

「…………むぅ。」


で、結局私が折れちゃう。愁さんの笑顔はずるい。女の子なら一撃でKOされちゃうよ。だからちょっと心配。愁さんって誰にでも優しいし、彼女としては凄く不安なんだよ?

愁さんは私の絵を見ていつも褒めてくれる。先生とかお父さんとかお母さんに褒められるのも嬉しいけど、やっぱり愁さんが一番だね。

私が照れ隠しでぽりぽり頭を掻いていると愁さんはペラペラってスケッチブックをめくり始めた。


「あっ、だめ!!」


私が叫んだ時には遅かった。愁さんが見てる。私が描いていた愁さんを。

愁さんはよく寝てることが多い。だから私はちょっとずつ愁さんの寝顔をスケッチしていた。もうすぐ愁さんの誕生日だからサプライズにって思ってたけど………見られちゃった。なんでか知らないけど涙が流れた。止まらない。

愁さんは静かに、そして優しく抱き締めてくれた。


「ごめんね、知らなかったから……。でもね、嬉しいよ。」


私は愁さんの言葉を聞きながら愁さんの胸の中で泣いていた。




泣きやんだのはしばらくしてから。


「大丈夫?」


寂しげな笑顔で私の涙の跡を拭う愁さん。だから私は笑顔で言った。


「あ〜あ、また誕生日プレゼント考えなきゃ。」

「気にしなくていいのに。」

「気にしますよ!!私は愁さんの彼女なんですから。」


ニッと笑うと愁さんも笑ってくれた。

80回目にして8000アクセス突破ってなんか嬉しいです。なんか8ばっかですが、綺麗に揃うと嬉しいですよね?……自分だけ?

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