第四話 其ノ二
学校に行く途中、いきなり背中に衝撃が走った。多分、というか確実に犯人はあの娘しかいない。痛む背中をさすりながら後ろを向くと、やっぱりいた。
『第四話:それぞれの学校生活にて side S』
「おっはよ〜、咲羅!!」
「……おはよう、綾子。」
「あれ?いつもは無視するのに今日はちゃんと挨拶したね?良いことでもあった?」
「別に〜。」
そういって私は少しクスッと笑った。口癖がうつっちゃったかな?
「な〜にニヤついてるのよ。ほら、学校行こう?」
「そ〜だね、行こうか。」
いきなり私の背中に突撃した彼女は東雲 綾子。私と同じ三年D組の親友。やたらハイテンションでスポーツ万能なボーイッシュな女の子。
「そういえばさ、引っ越しはしたの?」
「昨日したよ。」
「い〜な〜一人暮らし。うらやまし〜。」
「実は一人暮らしじゃなかったんだよね……。」
「えっ?どうゆうこと?」
「話すと長くなるんだけど…」
「おはよう。」
「あっ、おはよう絵美。」
「おっはよ〜絵美。」
この娘は西野 絵美。女の子らしい女の子。セミロングの髪が風になびくときなんか女の私ですらメロメロになっちゃうくらい可愛いの。
「ねぇねぇ、何の話?」
「ほら、昨日話してた咲羅の一人暮らしの話よ。」
「あぁ、あの話〜。で、どうだったの?」
「まぁ、立ち話じゃなんだし教室行こうよ。」
「そうだね。」
「行こ〜行こ〜」
そういって校門をくぐった。さて、どうやって説明しようかな?
「「えぇ!!どうせ(ムグッ)」」
すんでの所で二人の口を塞ぐ。こちらを怪訝な顔で見ているクラスメイトにはとりあえず微笑んでおいた。
「二人とも声が大きいよ。」
「だって……」
「いきなりなんだもん!!」
確かにいきなりだった。私だって驚いたんだもん。
「で、なんかされなかった?」
「えっ?なんかって?」
綾子の問いを疑問に思い聞き返すと絵美が答えた。
「そりゃあ、……肉体関係?」
「なっ、無いってそんなの!!」
「な〜んだ。」
「つまんないわね。」
………友達止めようかな?
「ねぇ、今日行ってもいいかな?絵美行きたくない?」
「あっ、行きた〜い!!」
「今日?……大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。はい決定!!」
「ちょっ、ちょっと綾子〜。」
「まぁまぁ、少しくらいなら大丈夫だよ。」
「……絵美、人事だと思ってない?」
「まっさか〜。」
なんか無理矢理決められた気がします。
時間なんてあっという間に過ぎちゃうもんなんだね。もう放課後だよ。
「さぁ、噂の同棲相手を見にレッツゴー!!」
一人張りきり飛び出して行く綾子。流石陸上部のエース。ってか少し声のボリューム落としてよ!!変な噂が立つでしょ!!あれ?でも……
「綾子場所知らないんじゃないの?」
「うん。」
絵美の言うとおり場所は教えてない。とりあえず絵美とゆっくりと校舎を抜ける。
「絵美、今日美術部は?」
「休んじゃった。」
「……そうですか。」
「お〜い!!早くしなよ〜!!」
遠くから綾子が呼んでいる。他の生徒が笑ってる。私と絵美は恥ずかしくなってしまい顔を伏せた。
やっと家に着いた。まだ鍵が閉まっていたので初めて鍵を開ける。少し緊張するなぁ。
「「お邪魔しま〜す!!」」
「ど〜ぞ〜。」
静かな店内。とりあえず明かりをつける。
「なんか飲む〜?」
「紅茶がいいな〜。絵美は?」
「私も紅茶がいいな〜。」
「オッケ〜。」
お湯を沸かして紅茶のパックから三つ取り出す。勝手に使って大丈夫かな?と思いつつ使っちゃった。カップにティーパックを置き、お湯を注ぐ。透き通った茶色のレモンティーを三つ、カウンターに運ぶ。
「「ありがと〜」」
「いえいえ。」
と、そのときカラン、カランと鳴らしながら扉が開いた。
「あっ、陽さん。おかえりなさい。」
「………ただいま。」
二人共固まってる。そりゃそうだ。世の中にまだこんなかっこいい人がいるのだから。
「………お友達?」
「ハッ、ハヒッ!!私、東雲綾子っていいます!!」
「わっ、わたっ、私は西野絵美です!!」
二人とも噛みすぎ。
「………佐倉陽。……よろしく。」
「……もしかして勝手に呼んじゃダメでした?」
「………いや、俺の友人もよく邪魔しに来るし、別に大丈夫だよ。」
そういってカウンターに入る陽さん。
「………あぁ、悪いけど看板を引っくり返してくれないか?そろそろ開ける時間だ。」
「あっ、わかりました〜。」
私は階段を上がり扉を開いて壁に掛っている看板を『open』にした。すると突然扉が開いて中から二人が出てきた。
「ちょっ、ちょっと咲羅!!」
最初に口を開いたのは綾子だ。
「どうしたの?」
わかってるけどとぼけてみる。
「あんなにカッコイイ人だなんて聞いてないよ〜!!」
絵美も少々ご立腹だ。
「あれ?言わなかったっけ?」
「「言ってない〜!!」」
とりあえず中に二人を押し戻した。二人ともまだ少し緊張している。
するとまたカランカランと鳴りながら扉が開いた。
「あ〜!!陽が女の子を三人も連れこんで『シュパッ!!』」
翔太郎君が最後まで言う前にトレイが翔太郎君の頬をかすめた。
「………よく生きてたな、そしてもう一回行ってみるか?」
「じょ、冗談だよ!!やっと復帰したのに……咲羅ちゃんのお友達かな?」
二人はまた固まってる。タイプは違うけど翔太郎君もまたカッコイイのだ。二人共緊張しまくってさっきと同じ自己紹介をしてた。噛んだところも同じで。