第四十一話 其ノ二
スキーは楽しかった。最後は『誠さんに全部もっていかれた』って嘆いてた三人だったけど、三人もかっこよかった。もちろん陽さんが一番だけどね。
部屋に戻ると陽さんはベッドに転がった。私もベッドに倒れこむ。ってか跳ねる。そんで待ちに待った温泉に私のテンションはあがっていく。いやぁ、温泉っていいよね!!
『第四十一話:温泉旅行と各々の想い 其ノ三 side S』
陽さんを無理矢理引っ張ってフロントまで降りる。とりあえずまだ皆来てないみたいだからソファで一休み。
周りをキョロキョロと見回すとカップルとか家族連れとかがやたらに目につく。将来は私も陽さんの子供を………
「………咲羅?」
「ひゃあ!!」
「………なにしてんだ?もう行くぞ。」
「はっ、はい!!」
ぼーっとしてる間にいつの間にか皆が来てたみたい。恥ずかしいので俯きながら陽さんの元に向かった。
更衣室で服を脱ぎながら温泉の方を眺める。いかにも温泉っぽい風景に心踊らせてると……
「あれぇ?咲羅また大きくなってない?」
「あっ、綾子!!どっ、どこ揉んでるのよ!!」
「それはあれよ、綾子。愛の営みで咲羅が熟してきたのよ。」
「絵美!!表現がヒワイよ!!そんで綾子!!あんたはいつまで揉んでる気よ!!」
「ちなみに咲羅ちゃん、陽はどうだった?」
「しっ、栞さん!!そっ、そんなの……私の口からはとても……」
「咲羅も大人の女の仲間入りね。お姉ちゃん嬉しいわ。」
「赤飯炊く?」
「なに言ってるの綾子!!赤飯は別に関係無いでしょ!!てかマジで手を離してよ!!」
『ギャー!!』
遠くからの叫び声に皆の動きが止まる。
「今の声って……」
「翔太郎君……」
「だよね?」
私達は三人で栞さんの方を向く。栞さんは右手で顔を覆って深く溜息を吐いた。
「どうせ覗きかなんかしようとして皆にとっちめられてるんでしょ。」
「栞……アンタも大変ね。」
「大丈夫、もう慣れたわ。でも龍太の声が聞こえなかったわね。」
「多分翔太郎君でも売って逃げたんじゃない?」
「ありえる。」
二人して笑ってるけど……よくここまで相手の事がわかるなんて。私達は驚いていた。
「まぁ馬鹿な奴の事は忘れて早く入りましょ。」
「そうね、じゃあ皆行こうか。」
「「「はーい。」」」
ヤバイ……マジでヤバイ。もう……気持ち良すぎ!!ビバ温泉!!ビバ日本の風呂!!もうあれだね、ドリフターズの気持ちがわかるね、うん。
「いっい湯〜だ〜な、」
「………さっそく歌ってるし。ちょっと綾子!!私も歌う!!」
ハンドタオルを頭の上に乗せて合唱。少し控え目に。
「あっ、そうだ。」
「どしたの咲羅?」
「向こうに陽さんいるよね?」
「そりゃまぁさっき一緒に来たからねぇ。……咲羅、あんたまさか……」
「よーさーん!!」
私が手でメガホンを作り陽さんを呼ぶ。止めようとしてた綾子は『あっちゃー』と言わんばかりの表情をしている。
「よーさーん!!」
返事が無いのでもう一回言ったけど……聞こえてないのかな?私は何回か繰り返して陽さんを呼ぶ。栞さんとか笑ってるけど気にしない。そしたらやっと返事が返ってきた。
「……どーしたー?」
「お湯加減どーですかー?」
「……いー感じだー!!」
「こっちも気持ちいーでーす!!」
「……そりゃ良かったー!!」
隣でクスクス笑う栞さんと絵美。呆れてるのは綾子とお姉ちゃん。
「いいわね、ラブラブで。」
「綾子もやったら?」
「恥ずかしくて出来ないって。こんなの出来るの咲羅くらいだよ。」
「そうかな?」
「「「「そう。」」」」
「しかし陽君も良く返事したわね。」
「多分あれよ、あのままだとずっと咲羅が叫び続けてたから諦めたのよ。」
栞さんもお姉ちゃんも陽さんの心理を読んでいた。でも実際のところは?
………正解でした。部屋で陽さんが最初に言ったのが風呂での叫び禁止だった。ちょっとムッとしたので少し悪戯しました。浴衣の前を少しはだけさせて陽さんの方を向く。陽さんは顔を赤くしてベッドに転がってしまった。
でも夕食の為に私はまた陽さんを引っ張りながら部屋を出た。
なんだかんだ言って結局陽さんは私についてきてくれる。やっぱり優しいなぁ、なんてね。




