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第四十話 其ノ一

ホントにツインルームだよ。鍵を開けてから俺はもう諦めた。咲羅が先に部屋に入る。


「すっごーい、綺麗ー!!」


部屋の窓からは白根山が聳えている。遠くの方に見える白い傾斜はスキー場だろうか。3月の後半に入っているから出来るかどうかは微妙な所だろう。

と、部屋の電話が鳴る。電話は翔太郎からだった。



『第四十話:温泉旅行と各々の想い 其ノ二 side Y』



「………で、どうした?」

『スキー場行こうぜ!!』

「………今からか?」

『当たり前だ!!雪が俺を呼んでるぜ!!』

「………雪もまた変な奴を呼んだな。」

『ん?何か言ったか?』

「………いいや。わかった、行くよ。」

『おっけ、じゃあフロントで。』

「どうしたんですか?」

「……スキー場行こうだって。」

「スキー!?私初めてー!!陽さん教えてくれますよね?」

「……時と場合によるか……わかった、わかったからその目は止めろ!!」

「やった、じゃあ行こ行こ!!」

「………はぁ。」


主導権を握られっぱなしの俺。………情けねぇ。




「おお、陽!!早くしろよ!!」

「………誠さん達は?」

「『先に温泉がいい。』って言ってた。」

「………なるほど。」

「じゃあ行くか!!」


なぜか翔太郎が仕切りながら俺達はスキー場へ向かった。




「「「雪ー!!」」」


三人組はいきなりスキー場へ駆けていった。


「あらあら、元気があっていいわね。」

「栞、その言い方おばさ」

「何か言った?翔太郎?」

「………いえ、何も。」


眼力だけで翔太郎を縮みあがらせる栞。まぁ『おばさんっぽい』なんて言ったら即死だろうが。

縮みあがってる翔太郎はおいといて他のメンバーで道具類を借りる。スキーなんて久しぶりだな。


当然ながら一番上手いのは誠治。次に愁、俺、龍太、翔太郎と続く。

女性陣では、一番が栞、次に桃華、後三人組は初めてらしい。まぁ多分綾子あたりは一時間もあれば一番になるかもしれないな。問題は………


「陽さーん!!止まれないー!!」


ドンッ!!


サイドの柵にぶつかる咲羅。思わず吹き出した。


「ちょっ、酷いですよ!!」

「………悪い、悪い。」


向こうは向こうで……


「待って、待って待って!!何か早くない!?早くない!?」

「いや、十分遅いけど。」


絵美は足が揺れている。あっちも苦労しそうだ。


ドンッ!!


「ごっ、ごめんなさい!!大丈夫ですか、陽さん?」

「………痛ぇ。」




数時間が経過し空はうっすらと色を変え始めている。予想以上に綾子の上達は早くもしかして俺より滑れるかもしれないくらいである。絵美も割と滑れる様になっている。


「きゃー!!」


ドンッ!!


咲羅に成長のあとが見られない。いや、曲がったり出来るから成長したのか。しかしどうしても止まれないらしい。普通止まるのを最初に覚えるはずなのに。


「陽ー!!帰る前にレースしようぜー!!」


龍太が高い所から叫んでる。しかも皆スタンバイしてるし。とりあえず俺も登ることにした。雪まみれの咲羅を置いて。



横一列に並ぶ俺達。地平線に沈む夕日が眩しい。


「よし、じゃあこいつがスタートの合図な。」


翔太郎は雪玉を握りながら言う。


「じゃあいくぞ!!」


翔太郎が投げた雪玉は高々と空へ上がった。そのまま重力に従い落下し元あった場所へ着地した瞬間、俺達の戦いが始まった。


先頭はやはり誠治。次が翔太郎、龍太と続く。俺と愁は少し後方で様子見。まぁ俺の予想ではそろそろ……


「ぐはっ!!」

「がはっ!!」


……正解だ。龍太と翔太郎は争うあまりお互い接触して派手にコケる。二人がリタイアしているのを素通りして誠治に近づく。 誠治も気づいたらしくスピードをあげる。しかし徐々に距離は縮まる。5m………3……2……。

三人が並ぶ、そう思った時、突如誰かが俺達の間をすり抜け、そのままゴール。


「ハッハッハ、俺の勝ち〜!!」

「「「まっ、誠さん……」」」


ゴーグルを外したら誠さんだった。つまり俺達より遅くスタートしてなおかつ一番に………怪物だ。


「まだまだ若い奴らには負けねぇよ。」


40を越えた育ての父は人間の限界を越えた運動能力を兼ね揃えていた。笑いながらホテルに戻る誠さんを呆然と見ている俺達。後ろで最下位争いをしている二人をすっかり忘れていた。

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