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第三十八話 其ノ二

少し眩しい朝の陽射し。私が瞼を開くと目の前には……陽さんがいる。あれ?どうして陽さんは上半身裸なの?………そうだ、昨日は………考えただけで真っ赤になりそうな私。そんな私に優しくおはようと呼んでくれる陽さん。

私も小さな声で挨拶した。毛布にくるまりながら。



『第三十八話:忘れていたこと side S』



ふと、後頭部に違和感が。そ〜っと覗くと……腕?


「ひゃっ!!」


思わず頭を持ち上げた。毛布にくるまったままで。よくみればそれは陽さんの腕。頭が乗ってた場所は赤くなっていた。まさか一晩腕枕をしてくれてたなんて……。


しかし感動したのはその後の陽さんの台詞。聞いた時に私は彼女になったことを改めて自覚した。

朝ご飯の準備をしなきゃと思い毛布を巻いて立ち上がる。陽さんはいつの間にか下着つけてるし。ズルッ!!反則だって!!

そのまま私の視線はシーツに。……見事に痕が残ってる。……洗わなきゃ。


おっと、そうだ朝ご飯。と思い歩こうとしたらおもいっきりこけた。めちゃくちゃ痛かったのに陽さんは笑ってる。確かに裸でこけてマヌケだけどさぁ……。


ふと、カラーボックスの上に何かがあるのを発見。

……あー!!温泉旅行のチケットだ!!すっかり忘れてた。あれ?何かチケットのはしっこに書いて……締め切り!?締め切りってあるの?しかも日にちは今週末ってもう明日行かなきゃまずいじゃん!!もう無理矢理陽さんにオッケーをもらって行かないと……そんなときに電話が鳴った。私を天国へ誘う電話が。



「はい。」

『もしもし?咲羅ちゃん?』

「翔太郎君?どうしたの?」

『いやぁ実はね龍太がたまたま競馬でバカ勝ちしてさぁ。その金で皆で温泉旅行なんてどうかなぁなんて。』

「いいですね、温泉。実は今……」


私はさっきまでのことを話した。


『成程、じゃあそのチケットは誠さん達にあげれば?良い嫁度がアップするかもよ?』

「やだ、嫁だなんて!!」

『とりあえず陽には偶然性を装って福引で当てたっていっといて。』

「なんでわざわざ?」

『いや、特に理由はないんだけど何か陽を騙すのが定番になってるかなぁって。』

「別にいいですけど。」

『じゃあ出発は明日だから、じゃね〜』

「あっ、明日!?ちょっ、ちょっと……」


既に電話は切られていました。




突然の決定だったけど意外と楽しみな私。とりあえず必要な物を買いに二人でデパートに行きました。


「とりあえずタオルとかはありますから……なんか必要ですか?」

「………基本的には現地調達で大丈夫だと思うが?」

「そうですか?……あっ、陽さん下着足りてますか?」

「……お前が気にすることじゃないだろ。」

「せっかくデパートに来たんだし宿泊セットも新調しましょうよ。」

「………別に。」

「じゃあとりあえずぐるぐる回りましょうよ。」


私は陽さんの腕を引いてあちこち歩き回った。とりあえず宿泊セットという名目で私の服とか化粧品とか陽さんの下着とか(勝手に)を買い漁りながら時間を過ごした。

あれ?もしかしてこれってデート?


「陽さん、陽さん。」

「……ん?なんだ?」

「買い物終わったらどっかいきましょうよ。」

「……どこ?」

「それは陽さんが決めて下さい。」

「……なんで俺が……」

「かっ、彼氏でしょ?」


言いたかった台詞を少し噛みながら無理矢理言った私に対して陽さんはぽかんとしていた。


「?陽さん?」

「……俺達……恋人同士なんだ。」

「なにを今更。私をあんなに汚しておいて……」

「………人聞きの悪いことを言うな。」

「あっ!!」

「………今度はなんだ?」

「私、陽さんファンクラブに殺されるかも……」

「………はぁ。」



若干の不安を抱えつつも、今が楽しければいいじゃんというなんとも楽天的な神の声が聞こえた(気がした)。結局公園でぶらぶらして時間を過ごした。まぁ陽さんと一緒なら楽しいけど。




その日の晩、荷物をつめおわった私は暇だった。

とりあえず陽さんの部屋に行く。せっかく恋人同士になったのに一人でいるのもおかしいでしょ?


とはいったものの陽さんも荷物をつめおわったらしくてすることがない。なんかこのまま流れで寝そうな雰囲気……とりあえずおやすみのチューを求めた。陽さんは少し溜め息をついてからそっと触れようとしたけど昨日の仕返しをこめて私からおもいっきりしてみた。

そしたら体の芯が熱くなってそのまま………。あれ?これじゃ私が襲ったみたいじゃん!!………まぁそうなんだけど。そして朝……


出発まで一時間と迫っていた。

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