第三十五話 其ノ一
朝、目覚める。いつもみたいに咲羅が起こしに来ないことに安心と落胆が半々くらいになっている俺は重度の病気に違いない。
ちなみに起きた理由として挙げられるのが………やたら下が五月蠅いことくらいか。しかも高い声。………昨日倒れてた奴らが復帰したのか。……いい迷惑だ。
『第三十五話:明日は誕生日!? side Y』
昨日の酒………あんまり残ってないな。頭も痛くはないし、とりあえずは大丈夫か。とりあえずシャワーを浴びに上へ上がった。
頭をタオルで拭きながら下へ降りる。予想通り……ってか予想以上に人が多いな。しかも女が。
「陽さん、おはようございます。」
こちらに気付いた咲羅が挨拶する。咲羅につられてこちらを見た綾子と絵美は何故か絶句して固まっている。固まっていたのがなくなると作戦会議の様にヒソヒソ話。………俺、何かしたか?
先程のことは結局何だかよくわからずはぐらかされた。
………しかし、これは朝食の風景だろうか?俺一人に対して女性四人。全員美女。……有り得ねぇ。
「「「「いただきます!!」」」」
「……いただきます。」
何か圧倒的なパワーに圧されてる気がする……。
「そう言えば陽さんって咲羅と同じ誕生日って聞いたんですけどホントですか?」
綾子の問いにとりあえず頷く。
「なんか運命みたいですね〜。」
絵美が目を輝かせながら言う。何故か慌てて止める咲羅の顔は真っ赤だ。
「てことは将来は私の弟にあたるわけね。」
桃華はニンマリと笑う。咲羅は桃華をポカスカ叩いている。こんな効果音が当てはまるのも珍しい。
「じゃあ陽さん、私達は出掛けてきますから。」
「………おぅ。」
咲羅は他の三人と途中で栞と合流して明日の誕生日に俺と出掛けるための服を買いに行った。
先程までの騒がしい空間が今は静寂が戻った。
「………あ。」
………そうだ。プレゼントをまだ買ってなかったっけ。俺は車の鍵を手にとり裏口へ向かった。
とりあえず何を買うかは車の中で決めよう。あの時は散々迷って結局ネックレスだったな……。
一応明日着ていく服も買って、ついでに晩飯の材料も買ってから家に帰った。家には既に咲羅が帰宅していた。テーブルの上には袋が沢山乗っている。
「………何買ったんだ?」
「ひゃあ!!」
俺が袋を開けようとしたらいきなり奇声をあげた咲羅が俺から袋を取り上げた。
「だっ、だめですよ!!明日までのお楽しみです!!」
やたら慌てていたが何が入っているのだろうか……。
「とっ、ところで!!明日は何処に行くんですか?」
「……明日は………フレンチがいいかなって思ったんだが。」
「何か高そうですね。」
「………金の心配なんかすんなよ。」
「いや、でも………。」
「………誕生日なんだからさ。遠慮しないで何でも言えよ。」
「………何でも?」
「………まぁ無理難題な事はさせないでくれ。」
「わかりました。じゃあ明日までに決めておきますね。」
「………ああ、そうしてくれ。」
そんなのんびりとした会話を楽しみながら、俺達は夕食を作り始めた。……しかし袋の中身が気になる。
食後、咲羅とコーヒーを飲むのももはや日課になってしまったな。
「ねぇ、陽さん。」
「ん?」
「もう私が来てから一年経ちそうなんですね。」
「………もうそんなか。」
本当にそう感じた。咲羅が来てからは毎日が刺激的な気がした。もう何年も暮らしてるみたいだ。俺もずいぶん咲羅にはまってしまったもんだ。
「大学生になってもお世話になりますね。」
「………覚悟のうちさ。」
「もー、どういう意味ですか!!」
「………そういう意味さ。」
こうして憎まれ口しか叩けない俺が情けないな。明日は………素直になれるかどうか。日付は3月21日にかわろうとしていた。