第三十三話 其ノ二
誠さんと歩さんに会えて良かった。私の中で、まだ唯さんのことははっきりとしたわけじゃないけど、それでもなんとなく良かったような気がする。
大学が始まるまではしばらくのんびりと過ごしていた。お店も最近は私達三人が揃って働いてるし、なんかやっと普段の生活に戻ってきた。そしてまた一人戻ってくる。少々の波乱を含んで。
『第三十三話:帰国 side S』
一週間前に龍太さんから手紙が届いた。なんでもそろそろ帰国するらしい。半年もヨーロッパかぁ、私も行ってみたい。そういえばお姉ちゃんもフランスに行ってたっけ。
龍太さんは向こうで彼女が出来たらしい。羨ましいな。私も陽さんと………
「?どうかしたか?」
「へっ?いっ、いや、全然何も考えてませんよ!!」
更に陽さんはあやしがっていたけど適当にはぐらかした。危ない危ない。
龍太さんが帰国すると言っていた日があっというまに来た。私はいつもの様に陽さんとコーヒーブレイクをしていた。なんだか二人きりなのにドキドキしない。もうこの環境に慣れてしまったせい?いいのか悪いのかよくわからないけど………陽さんが穏やかな表情だからいっか。
ガチャ!!カランカラーン。
扉が開いて入ってきたのは久しぶりに見た顔だった。
「たっだ今ー!!」
龍太さんは髪型以外はほとんど変わっていなかった。元気そうで良かったけど………噂の彼女がいない。
噂の彼女について聞いてみた。そしたら驚かしたくて今、外で待たせてるらしい。
龍太さんが連れてきた彼女はまだ背中に隠れている。
ひょっこりと姿を現した彼女。その姿をみた時、私は固まってしまった。そして向こうも。陽さんは不思議そうに私の顔を覗いている。だっ、だって、目の前にいるのが……お姉ちゃん!?
世界って意外と狭いのね。まさか龍太さんの彼女がお姉ちゃんだなんて。しかも向こうで知り合うなんてどんだけ偶然が重なるのよ!?
それからお姉ちゃんと龍太さんの出会いだとかお姉ちゃんが向こうでちょっと有名なパティシエになったとか、龍太さんが陽さんをいじったり、お姉ちゃんが私をいじったりとすごい早さで時間が過ぎていった。てか私達はいじられキャラだったの?私はともかく陽さんは違う気が……
龍太さんの携帯が鳴ったのはそれから数時間経った後だった。
実は家族に会う前にこっちに来てくれたらしい。
陽さんは腐れ縁だとか言ってたけど、私はいい友達を持った陽さんは幸せだと思う。
しかもお姉ちゃん、向こうの家族に挨拶しにいくらしい。………てことは、もしかして龍太さんがお兄さんになる可能性もあるってこと!?なんか………複雑。
「咲羅、咲羅。」
「どうしたの?」
帰り際にお姉ちゃんに呼ばれた私。
「アンタもしっかり陽君捕まえなよ!!」
「えっ!?なっ、何言って」
「アンタがベタボレなのはバレバレよ。いい?とにかく押しよ、押し!!」
「………押し?」
「そうよ!!咲羅そろそろ誕生日でしょ?」
「あっ、忘れてた。」
「誕生日とかイベントはチャンスよチャンス!!女は度胸!!ファイトだ、咲羅!!」
「わっ、わかった!!」
お姉ちゃんは最後まで私を励ましながら龍太さんと一緒に帰って行った。誕生日……かぁ。すっかり忘れてた。誕生日って言っても………どうしようかなぁ?
あれ?そういえば陽さんの誕生日っていつだろう?まさかもう過ぎたなんて………いや、まさかねぇ。だって誕生日だったら翔太郎君が絶対来るはずだもんね。ファンクラブの広報に載せるはずだし。後でそれとなく聞いてみようかしら?
誕生日にまた波乱が起きる………かなぁ?でも少し期待してたりして。いい方に波乱が起きて欲しいな。
「………どうした?」
「へっ?」
「……ニヤついてるぞ。」
「あっ、その……元々です!!」
「?」
焦って変な事を言ってしまった。顔を真っ赤にしながら部屋に逃げ込む私だった。
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