第三十二話 其ノ二
すみません、先程ご指摘がありましたので修正致しました。ご迷惑をおかけいたしましたこと、お詫び申し上げます。
遂に病室の前まで来てしまった私。凄く緊張する。陽さんはノックした後ゆっくりと扉を開く。
入って最初に目にしたベッド。横たわる女性はとても美しい人だった。まるで今すぐにでも起きるんじゃないかってくらい穏やかな表情をしている。私は話し掛けられるまで唯さんに見入っていた。
『第三十二話:病院 side S』
私に話し掛けてきたのは美しい人だった。なんというか大人の艶みたいなものが出ていると言うか何と言うか……一言で言うと着物が似合いそうな女性、それが歩さんだった。
私は緊張しながら自己紹介したんだけど、翔太郎君に私の事を聞いたらしい。変な事を言われてなきゃいいけど………。
次に現れたのは筋肉質の彫りの深い顔立ちの男性が誠さん。豪快な笑い声としゃがれた声が凄く大人の男性を意識させられる。この二人が陽さんの一時期育ての親だった人達。今でもそうらしいけどね。
煙草を買いに陽さんは出掛けてしまった。取り残された私。少し静かになった病室。私は唯さんをじっと見ていた。
「すぐ起きそうなのにねぇ。」
いきなり歩さんに話し掛けてきた。私はしどろもどろしていた。
「そんなに怯えなくても食べたりしないわよ。」
笑いながら歩さんは私の頭を撫でた。誠さんもニコニコと私を見ている。
「あっ、あの!!」
私はここに来る時に考えてたことを言うことにした。二人は不思議そうにこちらを見ている。
「私に……私に、陽さんをください!!」
ポカンと口を開けたまま二人は微動だにしない。……沈黙が流れる。
「「プッ……ハハハハ!!」」
今度は私がポカンとした。二人はお腹を抱えて笑っている。
「あっ……あのぅ……。」
「ああ、スマンスマン。いきなりそんなこと言われちゃ吹き出すのも当然だよ、なぁ歩?」
「咲羅ちゃんは可愛いのに面白いのねぇ。」
私は今になって恥ずかしくなって顔が真っ赤になっていた。
「でもそういうのは陽に言わなきゃねぇ。」
「えっ、いや、あの、その………」
「……もしかして唯の事を気にしてるの?」
見事に当てられた私は小さく頷いた。歩さんは目を細めながら唯さんを見て、そして私をみた。
「確かに唯と陽はいい恋人だったわ。でもね、このまま陽を縛りつけるような事はこの娘も願ってないと思うわ。」
私は黙って話を聞いている。
「私は陽の親として、陽の幸せを望んでるわ。だから咲羅ちゃんは気にしないで、ね。」
するとさっきから黙って話を聞いていた誠さんが口を開いた。
「咲羅ちゃんはなんか唯に似てるんだよ。」
「え?」
「いや、顔とかじゃなくて雰囲気って感じかな?どことなくな。」
「そういえばそうね。似てるわ。」
なんだか二人とも私を見て微笑んでいる。
「でも咲羅ちゃん頑張らないと。陽って結構モテるでしょ?」
「いやいや、モテるなんてもんじゃ無いですよ!!ファンクラブまであるんですから。」
「「ファンクラブ!?」」
二人は目を丸くして驚いている。
「知らなかったんですか?」
「あの子最近自分の事は言わないのよ。」
「そりゃ話のネタになるな。」
それから私は陽さんが帰ってくるまで私が見てきた陽さんの事を話した。陽さんにつねられたけど………。
帰るとき、また唯さんを見た。ごめんなさい。私、やっぱり陽さんが好きなんです。奪う形になっちゃうかもしれないけど……お互い陽さんの幸せを願うのは同じだよね?
車に乗って帰る時に何を話したのか聞かれたけど誤魔化した。私も陽さんの事を色々聞いたから。
「陽さん、陽さん。」
「………どうした?」
「実家にあるエッチなビデオ、回収してくれって頼まれましたよ。」
「なっ……!!」
陽さんは真っ赤になって動揺していた。