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第三十一話 其ノ二

やっと咲羅サイド復活です。ちなみに本日も二話更新致しますのでよかったら見て下さい。

4000アクセスを越えたので日曜にも二話更新……出来たらいいなと思います。あくまで出来ればですが(汗)

陽さんが話を始めた。ゆっくりと淡々と。私はずっと陽さんを見ていたけど陽さんはたまに視線をずらしたり俯いたりしていた。心なしか顔色もよくないみたい。当たり前だよね、辛いに決まってる。そんな陽さんから話を聞こうとしてる私は………心の中が罪悪感で支配されていた。



『第三十一話:陽ノ過去 其ノ五 そして…… side S』



内容は辛いものだった。多分……きっと私なら耐えられない。両親が死んで……恋人が死んで……なんで陽さんが不幸にならなきゃいけないの?この世に神様がもしいるのなら聞きたいくらい。でもそれも叶わぬこと。聞いたところで陽さんの両親は戻ってこない。

気が付けば私は陽さんの頭を抱き締めていた。


「私は………どこにも行きませんよ。」


私に言えるのはこれくらいだった。すると陽さんは泣き始めた。小さな子供の様に、大きな声で。初めて見た陽さんの姿。気が付けば私も涙を流していた。


嬉しかった。陽さんが私に初めて素直になってくれた気がした。頭を撫でながら、私はずっと陽さんに寄り添った。


寝息が聞こえた。陽さんがまだ頬に涙を流しながら眠りについていた。私は陽さんを担いで部屋まで連れて行った。歩いて一分かからないのに、着いたら一時間かかっていた。確かに陽さんと私の体格差を考えたら大変なんだけど、さ。


ベッドに陽さんを降ろして私も隣に寝る。


「咲………羅……」


びっくりした。陽さんが私の名前を読んだのだ。寝言だけど。でも陽さんが私の夢を見てくれてるってだけで私は幸せだった。私は陽さんに気付かれないようにまた唇を重ねた。





目が覚めた。いつもの習慣だから少し早め。陽さんはまだ寝ている。頬には涙を拭った跡があったから一回起きたのかもしれない。……でも手は握ったまま。

名残惜しいけど私はゆっくりと陽さんの指をほどいていった。暖かい陽さんの手。手と手が離れても私の掌には温もりがある。



そのまま朝御飯を作り始めた。いつも通りにしないと落ち着かないし、陽さんも気まずいだろうし。フライパンに卵を割って半熟で皿に移す。朝御飯はもうお手のものって感じね。


味噌汁の味見をしてたら陽さんが起きてきた。


「おはようございます。」


私は満面の笑みで挨拶をした。陽さんが不安にならないように、昨日話をしたのを後悔させないように、私は笑った。陽さんの表情も少しだけ穏やかになったような気がした。




いつもの朝食の風景。陽さんは私の料理を多少小声だけどおいしいと言ってくれる。その言葉だけで私は元気になれる。私って現金な人間かな?やっぱり誰かにおいしいって言ってもらえるって嬉しい。それが好きな人なら尚更だよね。


陽さんが味噌汁を飲んでいる時に私は思いきって聞いてみた。


「私………唯さんに会いたいです。」


陽さんは一度目を見開いた。かなりびっくりしている。


「……そりゃまた急だな。」

「やっぱり会ってみたいんです。……恋のライバルとしては。」

「ん?何か言ったか?」

「いっ、いえ何も言ってませんよ!!」


怪しそうに私を見る陽さん。私は苦笑いをしていたと思う。



「………わかった。じゃあお昼から行くからな。」

「はい。」



遂に………唯さんと会うのか………少し、いやかなり緊張している。まだ病院に向かってすらいないのに。



見上げた空は雲が綿菓子みたいにもくもくと浮かんでいる。もうすぐ春を感じさせるように桜の枝には小さな蕾が遠慮がちについている。


「………いくぞ。」


陽さんは車に乗り込んだ。


「………はい。」


私も車に乗り込んだ。そして車はゆっくりと走り出した。病院へ行くために。

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