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第二十四話 其ノ二

明日だよ、明日!!ついに明日、センター試験の日だよ〜。

大丈夫かなぁ?勉強足りてるかなぁ?何か明日の試験の事を考えたら憂鬱になってく自分がいる。………情けないなぁ。何か力が抜けてくみたいな感じ。高校受験の時はこんなに緊張しなかったのに〜。



『第二十四話:遂に試験開始!! side S』



………駄目だ。ご飯が喉を通らない。いつもならちゃんと食べれるのになぁ。


「はぁ。」


気付けばまた溜息吐いてるし………駄目じゃん、私。


「………大丈夫か?」

「………ふぇ?」

「………ちゃんと食べなきゃ。」

「……食欲がないんですぅ。」


せっかく陽さんが作ってくれたのに………もったいない。


「………まぁ、あれだ、センターは本番までの最後の模試かなんかだと思えば大丈夫だ。」

「………模試?」

「……そう、模試。センターでウチの大学に入れる奴らはもう頭がいっちゃってる奴位なんだから。とりあえず滑り止めが確保出来れば御の字だ。」

「……そう、かなぁ?」

「………そう。だからあんまし根をつめるなよ。」

「はぁい。」


そうは言われても……どうしても憂鬱になっちゃう。私ってこんなに弱かったの?



シャワーを浴びてまた単語を覚える。そのまま眠れるかなって思ってたけど………無理。


「………早く寝ろよ。」


陽さんの声を聞いて、私の心は決壊した。少し泣きたくなった。気付けば私は枕をもって陽さんの部屋にいた。


『一緒に寝て下さい。』


なんて………私ったら何を言ってるんだろう。

でも陽さんは悩みに悩んだ末にベッドに入れてくれた。内心ドキドキしながらベッドの中に入る。私の頭は丁度陽さんの胸板に当たる位の所に収まった。

………ドキドキしてるんだけど、何か落ち着く。矛盾してるのは分かってるけど、暖かいからかな?陽さんの鼓動も少し早く聞こえる。陽さんもドキドキしてくれているのかな?


「陽さん………暖かい。」

「………お前もな。」


そう言えば………


「陽さんって……私のこと一回も名前で呼んだことありませんね。」

「………そうか?」

「そうですよ。」

「………気にするな。」

「呼んで下さい。」

「………絶対か?」

「絶対です!!」


陽さんは少し溜息を吐いた後で耳元で囁いた。


「………咲羅。」

「…………」

「………人にやらせておいて何で顔を赤くするんだ?」

「だっ……だって……」

「………だってって言われてもなぁ。」


まさか本当に言ってくれるとは思わなかった。私の心臓は今にも破裂しそうなくらい。そんな私を尻目に、陽さんは寝てしまった。

………ずるいなぁ。私はそっと陽さんの唇を指でなぞった。そのまま頬に手を置いて私はそっと唇を重ねた。



朝起きて隣に陽さんがいて驚いたけど……よく考えてみたら私が押し掛けたんだっけ。流石に起こすのは可哀想だから、私はフロアに降りて朝御飯を作り始めた。



陽さんのお陰で緊張は消えた。あれだけ不安だったのに……不思議だなぁ。朝御飯もしっかり食べたし、忘れ物もないし、そろそろ出発の時間も迫ってきた。

するといきなり扉が開いた。翔太郎君と栞さんだ。栞さんは私にお守りをもって来てくれた。翔太郎君は………ついで?とにかく応援が嬉しかった。元気が出た。


家を出ようとした時。


「………咲羅。」

「はい?」


陽さんは自分の腕から時計を外して私に渡した。少し重みがある。


「………ほら。」

「……腕時計?」

「……親父の形見だ。お守り程度にはなるだろ。」

「………いいんですか?こんな大事なもの、私に貸したりして………」

「………頑張れよ。」

「………ハイッ!!」


お父さんの形見なんて………私なんかに渡して良かったのかな?でも、嬉しかった。何よりも陽さんの言葉が一番心の奥底に響く感じがした。

家を出た時に気付いた。


「陽さん………私の名前を呼んだ。」


私は気分上々で会場へ向かった。



会場には沢山の人、皆頭が良さそうに見える。でも大丈夫、私には強いお守りが二つもあるんだから。


「おはよう、咲羅。」

「おはよう、絵美。」

「どうしたの?何か嬉しそうだね。」

「そういう絵美こそ。何かあったの?」

「実はね、朝から愁さんがウチまで来てくれて………ホラ、これ!!」


絵美の手にはお守りが握られていた。


「あと………前祝いの……キスを……」

「やったじゃん!!これでバッチリだね!!」

「で、咲羅は?」

「私は………」




「へ〜、咲羅も中々調子良いじゃん。」

「まぁねぇ。」

「よっし、この調子で頑張ろうか?」

「うん!!」


そして………試験が始まる。

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