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第二十三話 其ノ一

姉貴は一週間と言いながらまだ居座っている。既に二週間が経過しかけてる今日この頃。相変わらず姉貴は咲羅に勉強を教えたり店の仕事を手伝ったり咲羅を抱き締めたり俺をいじったり………。仕事をしなくてよいのだろうか?あっ、また咲羅の頬をつっついているし……。



『第二十三話:台風二号襲来!? side Y』



カリカリカリカリ………。

相変わらず響くペンの音。センターまであと二週間を切っているのだから当然と言えば当然だ。姉貴は今日は珍しく家にいない。


「会社で残りの仕事を終わらせなきゃいけないのよ。」


と言って慌ただしく出ていった。つまり咲羅と二人なのだが………この前言われた姉貴の台詞が引っ掛かってまともに咲羅の目が見れない。………あの時の答えも出てはいない。


「陽さん?」

「ん………何だ?」

「ちょっとここの問題ですけど………」

「ああ、これはだな………」


ドンッ!!


いきなりけたたましい扉の音がフロアに鳴り響いた。目線を上げると、そこにはスーツ姿の男性の人物が立っていた。しかもよく分からないがご立腹のようである。


「………どちら様?」


俺の質問も無視してこちらに向かってくる。そして突然殴りかかってきたのだ。思わず俺も手が出てしまい、クロスカウンター状態となって相手は倒れてしまった。




気を失ってしまった男性をソファに寝かせて、引き続き勉強をしていたら突然起き上がった。


「………大丈夫ですか?」

「大丈夫なわきゃねぇだろ!!めちゃくちゃ痛かったじゃねぇか!!」

「………いや、だって正当防衛だし。」

「だからってあんなに強く殴ることねぇだろ!!つっ……。」


というか………誰だ?


「………てか、どちら様ですか?」

「俺は真島(ましま) 一樹(かずき)、25だ。」

「………で、何で殴りかかってきたんですか?」

「しらばっくれるな!!おめぇが光をかっさらっていったんだろうが!!」

「………光って、佐倉光?」

「たりめぇだ!!」

「………何で俺が実の姉をかっさらわなきゃいけないんだ?」

「………姉?」

「………佐倉光は俺の姉貴ですけど?」

「………は!?」


いや、こちらがその台詞を吐きたいくらいなのだが………。

すると丁度良いところに姉貴が帰ってきた。


「ただいま〜!!………一樹!?」

「光〜!!」



とりあえず姉貴と一樹さんを正座させて話を聞いたところこのような具合だった。




――回想――




「………で、どこをどうすれば俺が姉貴をかっさらうことになるんだ?」

「あのね、実はね………私がこっちにくる前に一樹に電話したの。『私は日本に連れ去られることになったの。だから………さよなら。』って。」

「………はっ!?」

「だってほら、ただ単に仕事で行くなんて言ってもつまんないじゃない。だからね……」

「ふっ……ざけんなぁぁ!!」




………と、まぁ久しぶりに噴火してしまった。反省しなければ。咲羅が驚いて目を丸くしてたし。恥ずかしっ!!


「………とりあえず誤解が解けて何よりです。」

「ほんっっとうに済まなかった、陽君!!知らなかったとは言え殴りかかってしまったことは俺の責任だ。」

「………いいですよ。俺に怪我はありませんでしたし。悪いのはこの馬鹿姉貴ですから。」


とりあえずゲンコツをかましておいた。


「痛った〜!!」

「………天罰だ。」

「咲羅ちゃん助けて〜!!」

「きゃあ!!」


………また抱きついているし。


「じゃあ俺はこのあたりで帰らせてもらうよ。」

「えっ?もう帰るんですか?せっかく光さんに逢えたのに。」

「何しろ仕事をほっぽり出して帰国しちゃったからね。ここのことを探すのにも時間がかかったし。」

「ごめんなさい、一樹。迷惑かけちゃって。」

「まぁ慣れたよ。じゃあ俺は先にアメリカに戻るから、光はゆっくりしておいで。」

「ん、ありがと。」

「………これからも姉貴をよろしくお願いします。」

「ああ、任せなさい!!」


そう言って颯爽と帰っていった一樹さん。


「………いい人じゃないか。」

「そりゃ私が見込んだ男だもん。ねぇ咲羅ちゃん。」

「何で私にふるんですか?」

「さってと〜、じゃあ私も一樹について行こうかしら?」

「帰っちゃうんですか?」

「そんな顔しないの。あっ、そうだ、咲羅ちゃん。」


姉貴は咲羅に何か耳打ちをした。俺には聞こえなかったが。


「それから、陽。」

「………何だ?」

「(咲羅ちゃん、大事にしてやんなさいよ。)」


俺は素直に頷いた。姉貴は笑って


「じゃ、またね〜」


と言って出ていった。台風はやっと過ぎ去ったみたいだ。




「ごっめ〜ん、荷物忘れたわ!!一樹にも運ばせなきゃ!!」



………台風はまだ停滞していた。

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