第二十二話 其ノ一
やっと出来上がりました。本日二回目です。最近皆様からコメントを沢山頂き大変嬉しゅうございます。頑張って書いて行こうと思いますので応援よろしくお願いします。
まさか本当に泊まるとは……。姉貴は
「長旅で疲れたー!!」
と言ってさっさと寝てしまった。ちなみに車はうちの車庫の方に持っていった。パーキングもばかにならない。車は預かってもらっていたのを返してもらったらしい。
『第二十二話:共同生活は凄まじきかな side Y』
朝。咲羅が起こしにきた。最近は俺の目覚ましの一時間前には起こしに来る。………目覚まし要らずってか?起こし方にも問題がある。わざわざ俺のベッドの上にダイブするのだ。しかし今日はいつもと違う。いつもの約二倍の重さが俺にのしかかる。咲羅一人でまさかこんなに重くはない。目を開けると顔が二つ。………ウザい。
「いやぁ、これ面白いね。」
「でしょ?」
………『でしょ?』じゃねぇだろ。俺、耐えられるかな?
しかしこの二人、いつの間に意気投合していたのかが気になる。姉貴はアメリカ帰りだけあって英語の教え方が上手い。
基本的に日本の大学は文法事項だの何だので、ネイティブの様にはなかなかなれない。しかし、姉貴は文法も完璧でかつ、ネイティブにも負けない英語力がある。……我が姉ながら恐ろしい奴だ。
しかし………本格的にすることがないな。何か疎外感みたいなのを感じた。………何故?とりあえず暇なので先程、邪魔された睡眠でもとることにしよう。
邪魔にならないようにそ〜っと階段を上がりながらふと考える。何か俺が居候みたいだな………。
空は既に茜色に染まり始めている。俺の目の前には唯がいる。しかし近付こうとしても近付けない。心臓の音が妙に五月蠅い。悲しげな表情の唯。
――ありがとう。
何だよ、ありがとうって!!
――楽しかった。
何で過去形なんだよ!!
――陽、……ばいばい。
おい!!どこ行くんだよ!!おい、聞けよ!!戻ってこいよ!!俺を置いて行くなよ!!なぁ、何か言ってくれよ!!
汗まみれで起きると時計は既に午後五時を指していた。随分と長いこと寝ていたんだな。
………久しぶりに見たな。最近は見ることもなくなってたのに。寝ていたのに妙に疲れた。シャワーでも浴びてこようかな。そろそろ開店の時間だ。
フロアに降りると姉貴が着替えていた。
「………何してるんだ?」
「えっ?ほら、咲羅ちゃんの代わりに働こうかなって。」
「………そうか。」
「どうかしたんですか?顔色があんまし良くないみたいですけど。」
「………大丈夫だ。」
咲羅に心配させたくない。受験生が他のことに心労をかける必要なんて全く無いのだから。
数分後、綾子がやって来た。綾子はやたらと姉貴に『美人』だの『素敵』だのと連発していた。姉貴は姉貴で『カッコいい』だのと言っていた。女性にカッコいいって………。
閉店してからも姉貴が咲羅の勉強をみていたため、また暇になった。部屋で煙草を吸っているとノックの音が聞こえた。
「………どうぞ。」
入ってきたのは姉貴だった。
「うっわ、煙草くさっ!!」
姉貴は風呂上がりなのか髪が濡れていた。俺の視線に気づいたのか、姉貴はニヤリと笑った。
「咲羅ちゃんと入って来ちゃった。羨ましいだろ〜。」
「………別に。」
「いやぁ若いって良いわね。肌にハリがあるわ。」
「………もう歳だし『ボフッ!!』」
顔面に枕が激突した。
「五月蠅いわねぇ!!まだピチピチの25歳に向かってババアとはいい度胸じゃない!!」
「………そこまで言ってねぇし。てか何の用だよ。」
「アンタさぁ、咲羅ちゃんの事好き?」
「…………はぁ?」
「はぁ、じゃなくて。」
「………唐突だな。」
「私の性格よ。知ってるでしょ?」
「……………」
「どうなの?」
「…………分からない。」
「分からないわけないでしょ!!」
「………分からないんだよ。本当に。」
姉貴は溜息を吐きながら俺の横に座る。
「………それは唯ちゃんのことがあるから?」
「…………」
「どっちにしろ、話してあげなさいよ。多分咲羅ちゃんは唯ちゃんについて何かしら気づいてるわよ。」
「…………どうしてわかる?」
「あくまで『女の勘』だけど。」
「………それ以前に何で話す必要が……」
姉貴は目を見開いて動揺している。………何故?
「陽……あんたよく鈍いって言われる?」
「………たまに。」
「やっぱり………。」
姉貴はうなだれている。理由は謎だが。
「………それでも今は言えないだろ。」
「『今は』ってことは時期が来れば言えるの?」
「………分からないな。」
「しっかりしてよ。アンタには幸せになってもらわなきゃお父さん達に申し訳が立たないじゃない。」
「………その台詞も何度も聞いたな。」
「てか陽!!こんな所に位牌並べて!!これじゃ私も死んだみたいじゃない!!お祖母ちゃんのは他に並べなさいよ!!てかここに写真を飾らない!!」
………やかましいな。結局姉貴は俺を諭しにきたのか文句を言いにきたのか分からないまま部屋を出てった。………台風みたいだ。
俺は………咲羅が好きなのだろうか。