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第二十一話 其ノ二

本日も更新二回やらせて頂きます。次の更新は午後六時半頃になると思います。

もう冬だ。時間とは気づかぬ内に過ぎ去ってゆくことを俺はもう何回感じただろうか。咲羅と出逢ってからは更に早く感じる。気が付けば咲羅のペースに巻き込まれながらも不思議と不快感は無い。むしろそれが今までもそうであったかと言うくらい自然なのだ。………不思議だ。



『第二十一話:突然の来訪者は美女!? side Y』



フロアをこだまするシャープペンの音。咲羅は過去問に集中している。俺はすることもなく煙草を吸ったり、たまに欠伸をしたりしている。咲羅は良く勉強した。夏以前のままならうちの大学には受からなかっただろう。今では十分合格ラインに立っている。しかし試験はその時その時で大きく変わる。咲羅は受かるだろうか。


煙草を買ってくることを告げて外に出た。外の空気は冬らしく冷えきっていた。吐く息も白い。外に行くのにわざわざコートを着るという面倒くささ、あまり冬は好きではない。理由は色々あるが。


咲羅には受かって欲しいが、受かった場合、文化祭でいつのまにか獲得してしまった温泉旅行にいかなければならない。しかも二人きり………。他の二人は既に行ったらしい。綾子がうちの大学に入学が決定したお祝いだと。俺には真似出来ない。


コンビニに行くとき見たことがある車が俺の横を通りすぎた。気のせいだろう。まさか帰ってきた筈は無いし。

コンビニでいつもの煙草と咲羅へのお土産にチョコレートを買って家路へつく。

葉の無い木々が淋しげに立ち並ぶ。残りの葉も吹き飛ばされそうだ。哀愁を感じながら俺は家の側まできた。するとさっきの車がパーキングに止まっている。多少嫌な予感はしたものの、寒さのせいだなと思いながら家の扉を開ける。


嫌な予感と言うものは何故こうも当たるのだろうか?久しぶりに叫んでしまった自分が恥ずかしい。

そこには三年振りに会った姉がいるのだ。


「陽の彼女でーす!!」


なんて調子の乗ったことを吐いてやがる。咲羅が泣きそうだ。誤解を解かねば。………どうして俺はこんなに焦っているんだ?



………それにしても。さっきから姉貴は咲羅をだっこしながら喋っている。抱き心地がいいんだと。……確かにいつも担ぐ時、柔らかいような……何を考えてるんだ俺は!!



というか聞きたいことは沢山ある。


「………ところでいつ帰ってきたんだ?」

「昨日の夜よ。」

「………何で?」

「仕事の関係でね。私だって忙しいのよ?」

「………そうは見えないが?」

「うるさいわねぇ!!ウチの会社で佐倉光を知らない人はいないのよ?」

「凄いんですね。」

「でしょ〜?咲羅ちゃんもっと褒めて〜。」

「………図に乗るな。」


調子に乗ると直ぐこれだ。もう慣れてしまったがな。

実際姉貴の仕事ぶりは凄いらしい。いつか雑誌で『海外で働く日本人女性達』という記事に載っていた。というかなかば強引にその雑誌を送ってきた。そして同封の手紙には


『感想を400字詰原稿用紙五枚に記入の後、送ること。』


と添えられていた。逆らえば何を言われるかわからない。渋々書いた。ぴったり五枚。一週間かかった。………辛かった。


姉貴はさっきから咲羅で遊んでいる。間違っても咲羅とではなく、咲羅で遊んでいる。頬をつっついたり、脇を擽ったり、挙げ句の果てには………ご想像にお任せしよう。


すると咲羅を一旦隣に置き(この時点で不運にも咲羅は物扱いである。)、俺を見つめてきた。


「陽、お願いがあるんだけど。」


こういうときの『お願い』程危険なことはない。しかし聞かなければもっと怖い。


「………何だ?」

「一週間ここに泊めてくれない?」


………今、泊めてと言ったような。気のせいか?


「………姉貴、もういっかい言って?」

「だから、一週間ここに泊めてくれない?って言ったの。」


ちなみに姉貴の様子からすると既に泊まる気満々らしい。一体何が起こるのやら………。




とりあえず今だけ出来れば時が早く進んで欲しい。

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