第二十話 其ノ二
四十回です。当初の予定より意外と長くなってます。物語も佳境に………まだ入りませんね。じらしてしまい申し訳ありません。出来ればごゆるりと見ていただきたいです。
さて、私事ではございますが、一番最初の連載作品『俺の(以下略)』の読者が4000名を突破したことをこの場を借りてご報告させていただきたいと思います。これも切に皆様のお陰だと思います。ありがとうございました。
長くなりましたが、本編をどうぞ。 ―鶉―
さて、どうやら陽さんも渋々了解してくれたようだ。変化自在?な私の説得………意外と聞いたのかしら?しかしいきなり上着を脱いで着替えるんだもん。私としてはかなりドキッとしたのにそんなことも知らないで軽くストレッチしてるし。………もしかしてやる気満々?
『第二十話:波乱の学園祭 最終幕 side S』
私は栞さんと愁さんと絵美と観戦中。でも私と栞さんはお邪魔だったかしら?見たところ二人は健全なカップルって感じだし。………少し羨ましいなぁ。栞さんは翔太郎君を放っておいといて大丈夫なのかな?多分大丈夫か。まだ磔になってるし。
試合が始まったらしく周りが盛り上がってる。陽さんは直ぐに見つかった。私はサッカーはあんまし知らないけど陽さんのプレーが普通の人より輝いてたのは事実で。やっぱり目で追ってしまう自分がいて。
誠治さんがゴールを決めて。綾子がゴールを決めて。でも陽さんは自分から攻めるようなことはしなくて。何か少し陽さんの性格が出てるようなプレーだなぁ、なんて思いながら見てた。
「みとれちゃって。可愛いわね。」
「しっ、栞さんっ!!みとれてなんて……」
「だって……ねぇ二人とも。」
「陽を見てる時の咲羅ちゃんの顔、恋してるって感じだよ。」
「咲羅めちゃくちゃ可愛い!!」
「ちょっ、ちょっと!!抱きつき禁止よ!!」
私は照れ隠しに怒ってたけど三人にはバレバレだったらしくめちゃくちゃ笑われた。私の顔は火を吹きそうなほど真っ赤だったと思う。こりゃ重症だわ。
陽さん達は確実に勝ち進んでいった。途中、危ないスライディングなんかが陽さんを襲った時には私は思わず目を瞑った。うっすらと目を開けると、上手くかわしながらパスを出す陽さんの姿。そんな光景に私は何度もハラハラドキドキさせられてた。そしてその度にみとれちゃっていた。そんな私を見てやっぱり笑ってる三人。………もうこうなったら開き直っちゃえ!!
陽さん達はやっぱり上手くてあっと言う間に決勝まで勝ち上がった。綾子がこっちに駆けてきた。
「おめでと、綾子。もう決勝じゃん。」
「もぅ頑張っちゃうよ!!」
「疲れてないの?」
「あんましね。陽さんが必ずフォローに来るから。」
「………凄いね。」
「ホントよ!!でも多分疲れも溜ってると思うから、咲羅は帰ったらマッサージでもしてやんなさいよ。」
「了解です!!」
「うむ、いい返事だ!!じゃあ私はもう行くから。」
「頑張って〜。」
綾子は笑顔で駆けていった。やっぱり陽さんは凄いんだな。なんでも出来る陽さんが少し羨ましかった。
「栞さん。」
「なに?」
「陽さんって凄いですよね。なんでも出来て。」
「………そうね。」
栞さんは一つ呼吸を置いてからまた話を始めた。
「でも陽だって万能じゃないのよ。それは身体的と言うより精神的な面かしら。」
「陽は心が弱いのよ。誰かが傷つくのが耐えられないくらいに弱くなっちゃったのよ。勿論、色々な要因はあるけどね。」
「でも、そんなとこ一度も」
「見せないでしょうね。人に弱味は見せない人だから。」
「………」
「でもね。最近陽はよく微笑むようになったわ。勿論あなたのお陰よ。」
「私………ですか?」
「きっと毎日が楽しいんでしょうね。いいことだわ。あなたは周りに元気をくれるわ。だからね、もし陽が弱音でも吐いたらその時は………」
会場が盛り上がっている。陽さん達が一点決めたようだ。
「さぁ、応援しましょ。」
「………ハイ!!」
私は陽さんに比べたら運動だって勉強だって出来ない。でも陽さんを支えてあげることなら出来る。今の私にはそれだけで十分だ。
大会は2対1で陽さん達が勝った。最後は陽さんの劇的なシュートが決まっての勝ちだった。
商品をもらった陽さんの元に駆け寄る。そういえば陽さんに温泉旅行のこと言い忘れてた。何とか誤魔化したけど………大丈夫だよね?
「帰ったらマッサージしてあげますね。」
「………どういう風の吹きまわしだ?」
「だって温泉旅行に連れてってくれるんだから体は大事にしなきゃ。」
「………行く気か?」
「当たり前じゃないですか!!チケットがもったいないでしょ!!」
「………いや…でもな……」
「ほらグズグズ言わない!!」
「…………はぁ。」
とりあえず次の目標は温泉旅行ね!!