第十八話 其ノ一
更新遅れました、すいません。
二千人突破記念としまして一挙二話更新致します。次の更新は夕方になりますが、読んで頂けたら幸いです。頑張らせて頂きますので応援よろしくお願いします。では本編をどうぞ。
周囲はそこまで俺達を気にしていないようだ。現金な奴らだと思う。ここまでおいまわしておいてサングラスと髭をつけただけで判らなくなるのだ。つまりは、所詮そこまでの想いだということだ。表面だけを見て全てを決めている。本質というものを見極めていないのだ。そんな相手に『好き』だのとよく言えたものだ。
………女と手を繋いで歩いている今の状況の俺に語る権利なんて無いとは思うが。
『第十八話:波乱の学園祭 後編 side Y』
俺が変なことを考えてる間、咲羅は口笛を吹きながら繋いでいる手を振り子の様に反動をつけながら揺らす。
「………ご機嫌だな。」
「そうですか〜?」
「………顔がフヤけてるが?」
「気のせいですよ〜。」
……何か良いことがあったらしい。やたらご機嫌だ。まぁ不機嫌よりは扱い易いが……。
「あっ、陽さ」
言い終わる前に空いている手で咲羅の口を塞ぐ。咲羅はフガフガ言っている。
「………名前禁止。」
そうでなければ変装の意味がない。咲羅は顔を赤くしながら頷く。………俺が押さえてるから息が出来ないのか。少し面白かったが離してやる。
「ハァ……ハァ……じゃ、じゃあ何て呼べば?」
「………任せる。」
「じゃあ………よっちゃん!!……あっ!!」
言い終わった後で咲羅が叫んだ。
「………どうした?」
「やっぱりよっちゃんは駄目です!!じゃあこの際佐倉からとってサクでいいんじゃないですか?」
「………俺は別になんでもいいのだが。」
「じゃあ女性撃墜お」
「………駄目。」
「なんでもいいって言ったじゃないですか!!もう……じゃあサクで決定!!ハイ、じゃあサク、早く行こう?」
「………はいはい。」
最近は全てにおいて咲羅に主導権を握られているような気がする。……そういえば昔アイツが俺は尻に敷かれるタイプって言ってたな……。
俺の手を引っ張りながら歩き回る咲羅。既に手には先程やった射的の景品であるヌイグルミ(全長約150センチ)を抱えさせられている。重い。かさばる。結論………邪魔。しかし『部屋に置く!!絶対置く!!』と意気込まれてはもう止められないだろう、と思ってとったのだが………失敗だな。
咲羅は先程買ったたこ焼きを食べながら歩いている。俺は両手を塞がれているため食べれないが。
「アーンして下さい。」
「………断る。」
「いいから口を開けて下さい!!」
「………拒否。」
「………ぐすっ……」
「なっ!!………泣くなよ。」
「……ぐすっ……」
「………ほら。」
ため息をつきながら口をひらいてやる。待ってましたといわんばかりに俺の口にたこ焼きを持ってくる。………笑いながら。
とにかく咲羅はいく先いく先で無茶ばかり連発している。先程の熊のヌイグルミに続いて今度は犬のヌイグルミ(全長約170センチ)を背負っている。この世界どこを探したって俺の様な格好をしている奴なんていないだろう。
「よ…サク!!あっちに凄い人だかりだよ!!行こう行こう!!」
「………はぁ。」
咲羅に引っ張られて人だかりを進んで行く。中心には………一番会いたくない奴。
「翔太郎君じゃん!!」
「おー!!咲羅ちゃんと……ヌイグルミの化身?」
「………誰がだ。」
「すごっ!!」
咲羅がやたら驚いている。………自分の顔が売られてるのはかなりムカつくな。それに群がる奴らもどうかと思うが……
「じゃあその写真頂戴。」
「おっ、咲羅ちゃんお目が高いね………やっぱり買うの止めたほうがいいよ。」
「えー、何でです……か………わかりました!!即止めますからその負のオーラは止めて下さい!!」
後ろを振り返った咲羅は俺の姿を見て買うのを止めた。とりあえずここは離れた方がいいな。
「一通り回りましたね〜。」
「………そうだな。」
……俺の背中には追加で猿のヌイグルミ(全長約198センチ)が背負わされている。……もう嫌だ。
「………なぁ。」
「はい?」
「………何でさっき俺の写真を買おうとしてた?」
「………ノリ?」
………おい。