第十七話 其ノ一
どうも、鶉です。本日も多分やります、土曜日恒例二話更新。ただ最近、書きためていた作品が切れてきているため作者、苦労しております。来週は出来ないかもしれませんが、頑張ってみたいと思います。
コメント頂けたら更に力が入る……ような気がします。駄目な作者ですが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
更新は午後7時頃予定となってます。よろしければ見てやって下さい。では本編をどうぞ。
ついにやってきてしまった。キャンパス内には既に大勢の人で埋め尽されている。校舎の窓からその人数の多さにため息をついていたら、ポケットの携帯が震えた。画面には『咲羅』と着信の知らせが点滅していた。
『第十七話:波乱の学園祭 前編 side S』
通話ボタンを押し、耳を近づける。
「………もしもし。」
『あっ、陽さん!!着きましたよ〜!!』
声が大きい。周りの雑音に負けじと出しているのだろうがやたら響く。近くにいた女性が、携帯から発せられた女の声に驚いている。当然と言えば当然か。俺が女性と会話しているなんて滅多に無いことだからな。
「………で、どうした?」
『実は今、校門の前に絵美と一緒にいるんですよ。だから愁さんと一緒にきて下さいよ。』
「………俺が迎えにいくのか?」
『当たり前でしょ!!早くして下さいね〜。』
………電話が切れた。仕方ない、行くとするか。学園祭だというのに寝ている愁の頭をパンフレットでひっぱたく。スパン!!と良い音がした。
「痛っ〜、……どうしたの?」
「………お呼びがかかった。」
「咲羅ちゃんから?じゃあ何で俺を叩くのさ。」
「………ご要望だ。」
「?」
頭上に『?』を出している愁を連れて校門まで迎えに行く。途中女性グループに囲まれるが、無視。視界に人を入れないように愁と話しつつ、体から不機嫌なオーラを出す。大抵はこれで大丈夫。
校門で手を振りながらこちらを見ている咲羅と絵美。ここでやっと愁が何故自分が連れてこられたのか理解した。しかし俺にそんな余裕は無く、全速力で二人の手を抑える。
「どっ、どうしたんですか!?」
「………目立つな。」
既に周りからの(特に女性からの)視線が痛い。二人もそれを感じたのか、手を下ろした。
「……大人気ですね。」
「………迷惑。」
「じゃあ咲羅、私は愁さんとぶらりして来るから〜。」
「じゃ、そういうことで〜。」
「あっ、ちょっ、ちょっと!!」
咲羅が言い終わる前に二人は去ってしまった。残されたのは俺と咲羅と女性多数。
「どうしますか?」
「………逃げる。」
「えっ?ひゃ、ひゃあ!!」
俺は咲羅の腕を掴み、全力疾走した。隙間を縫ってどんどん速度を上げる。とりあえず人がいなさそうな校舎の裏に身を隠す。
「ハァ、ハァ、……よ、陽さん、速すぎ。」
「………済まん。」
とりあえず咲羅の呼吸が落ち着くまで待つ。その間にどうするか考えなければ。
「ハァ、ハァ、………ふぅ。……とりあえず落ち着きました。」
「………そうか。」
「予想以上に凄いですね。」
「………いい加減勘弁して欲しいな。」
「う〜ん……緊急事態の為に持って来てみたんですけど、これ付けます?」
咲羅がポシェットの中から取り出したのはサングラスと……つけ髭……。
「………何故つけ髭?」
「あっ、鼻眼鏡もありますよ。」
「………サングラスだけでいい。」
「駄目です!!念には念を入れて下さいよ!!」
「………マジ?」
「大マジ!!」
この勢いには勝てそうもないので仕方なくつけた。………髭を。
何故か咲羅は驚いている。
「………どうした?」
「……えっ?」
「………ぼ〜っとしてるぞ。」
「いや、意外に……似合うから。」
「………そんなにジロジロ見るな。」
「………ずる。」
「………何か言ったか?」
「い、いや、別に何も。」
「?………じゃあ行くか。」
「はいっ!!」
俺たちはゆっくりと校舎裏を後にした。
「………なぁ。」
「どうしました?」
「………おかしいだろ。」
「何がですか?」
「………今の状況。」
とりあえずバレてはいないのだが、咲羅が俺の腕に絡みついてくる。
「これは……そう!!カップルだと思わせておけば、きっとこうなるはず!!『ねぇ、あれ佐倉さんじゃない?』『でも佐倉さんが女の子と歩いてるなんて有り得なくない?』『それもそうね。』ってな具合で!!」
咲羅は一人二役をしながら俺に説明をしたが………果たして本当にそう上手くいくものか?……いや、しかしこれでは俺が(主に理性と世間体。いや、この場合バレてないから世間体は大丈夫か。………俺は何を冷静に解説しているんだ)マズイ。………さて、どうしよう。