第十六話 其ノ二
夏休みも過ぎ去って、学校の試験も終わりゆっくり出来る今日このごろ。でもゆっくりできない。理由は簡単。もうすぐ始まる文化祭の準備の為だから。今年は色々な案が出た結果、ダーツバー風な感じのやつに決まった。要はダーツと喫茶店が合体した感じ。………ある意味斬新?
『第十六話:波乱の学園祭 開幕前 side S』
「ねぇねぇ、咲羅〜!!」
振り返ると綾子が走ってきた。
「どうしたの?」
「黄色のペンキって何処にあったっけ?」
「え〜と、あっちじゃないの?」
「オッケ、ありがと!!」
また走っていった。忙しい子だな。
「咲羅〜、こっち来て〜。」
絵美に呼ばれて行くとウェイトレスらしき衣装が数点あった。
「咲羅はどれにする?」
「う〜ん、どうしよっかな。絵美はどれにするの?」
「私は……これ?」
「どして疑問系?そして何故メイド服?」
「滅多に着れないものがいいかな〜なんて。咲羅もこれにしようよ〜。」
「う〜ん、どうしよう。」
「もしかしたら陽さん喜ぶかもよ?」
「陽さんにこんな趣味……どうだろ?」
「ものは試しよ!!はい決定!!」
「ちょっ、ちょっと絵美〜!!」
………なんか勝手に決められてしまいました。……まぁいいかな。もしかしたら陽さんにその属性が……う〜ん、無さそう。
………着てみたはいいけどやたら露出度高くない?肩はザックリ開いてるし、スカートの丈も短いような………。やたら男子は興奮気味だし。絵美も同じ格好をしているのだが……
「絶対絵美のスカートの丈、私より長いよね?」
「そう?細かいことは気にしない方がいいよ。」
「いや、でも………」
「ゴニョゴニョ(もし、陽さんがその格好を見たらもうメロメロよ!!)」
「これにします!!」
現金な女と言われようが何だろうが、この際関係無い!!かかってきなさいくらいの勢いだ。
「ただいま〜!!」
家に着いたら珍しく翔太郎君がいた。オーナーが来るのが珍しいっておかしいんだけど………
「おかえり、咲羅ちゃん。」
「………おかえり。」
階段をのぼって、私はとっとと制服を着替えてフロアに戻ってきた。開店の準備でも始めようかなというときに翔太郎君が手招きしている。
「何ですか?」
「咲羅ちゃんはウチの大学が第一志望だよね?」
「そうですよ。それが?」
「今度の土日、ウチの大学の学園祭来る?」
即答した。やっぱり第一志望の大学の学園祭くらい見ておかないと、っていうのが建前で本当は陽さんと遊びたいだけだったり。それに私が陽さんの所へ行けば、陽さんをウチの文化祭に誘いやすくなるはず(理論的によくわからないけど……まぁ流れよ流れ!!)。
上手く案内を任せようとしたけどひっかかからなった。でも紳士な陽さんのことだ。私を一人になんてさせないはず!!………多分。
そして先程頭の中で計画した流れ作戦によってウチの文化祭に来させるようにしむけた。私ってやっぱ策士?こういうことばっかり頭は回るんだよね〜。
開店前に綾子と絵美にも電話連絡した。結論から言うと意味なかったけど。
「誠治さんに誘われちゃった〜。」
と綾子。
「愁さんが、たまには息抜きも大事だからって誘ってくれたの!!」
と絵美。
あの二人、中々やるな。………てか本人に誘われてないの私だけ!?おいおい、陽さん。そりゃないよ〜。でも実際私のことをどう思ってるかは気になる。朝井先生には
『変なの』
で通してたし………やっぱり居候?う〜ん、複雑な心境。
「………何頭を抱えてるんだ?」
「ひゃあ!!」
この人は後ろから声をかけるなって何回言っても止めてくんないし………。心を読まれてるようで何か嫌な感じ………。
ともかく!!学園祭楽しみだなぁ。
「………顔がニヤけてるぞ。」
「ひゃあ!!」
………助けて。