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第十五話 其ノ二

暑い。兎に角暑い。ムカつくほど暑い。原因は………私。あ〜、もう!!ほんのちょっと温度下げたまま消し忘れて寝ちゃったからって壊れるクーラーが悪いのよ!!……いけない、いけない。暑さのせいで頭がこんがらがってる。



『第十五話:思わぬ帰省者との出逢い side S』



ただいまフロアのテーブルで勉強中。鬼教師佐倉(命名、私)は私に勉強ばかりを強要します。鬼と言っても


「早くやれ。」


だの


「集中しろ。」


だの、主に態度についての指導が厳しいだけ。教え方自体は素晴らしく分かりやすく、予備校教師をやってもいいくらいのレベルで、本人がそのことを鼻にかけないのがまた凄いところ。悔しいのでとりあえず鬼、悪魔扱いです。


そんな事をしてると店の扉がいきなり開いた。よく見ると私が4ヶ月前まで毎日のように顔をあわせていた人物。私の両親だった。




………しかしおかしい。例えあの変なお父さんとお母さんでも男性と同棲してるのを簡単に許すなんて………な〜んか裏があるような。

陽さんは気をきかせて外出してくれた。何て出来た人なんだろう!!多分車で何処かにいくのだろう。裏口の方から扉の閉まる音が聞こえた。


「で、本当に何もされてないのか!?」


いきなりの父の質問に驚いた。


「あっ、当たり前じゃない!!」

「……な〜んだ。」

「『なんだ』はないでしょう、あなた。」


母は父に冷静に突っ込みをいれて私の方を向いた。その顔はとても穏やかな顔。


「でも良かったわ、陽さんが思ってた以上の好青年で。」

「でしょ。すごいん………今何て言ったの?」

「だから好青年……」

「その後!!」

「その後って……思ってた以上のところ?」

「そう!!そこよ!!初対面のはずなのに何で『思ってた』って過去形なのよ!!」


母は

「しまった!!」

みたいな表情をした。流石親子だ。さっきの私がしたと思われるしでかした時の顔。すると黙ってた(ハブにされていたともいう)が口を開いた。


「実はな……アメリカ行きの前から知ってたんだよ。」

「知ってたって………陽さんのこと?」


父は頷き、話を進める。


「翔太郎君から聞いたんだ。最初は反対したんだが、翔太郎君の話術にはまってしまってなぁ……」

「確か最後の台詞が『もし何かあったら俺が責任を持ちます!!』だったわよね?」

「確かに一人暮らしよりは他に誰かと住んだ方がいいとは思ったがな。でも今のお前を見て、ここに置いて良かったと思ってるよ。」

「え?」

「だって咲羅、陽さんと話してる時、とっても幸せそうだもん。そういうこてよね?」

「咲希の言う通りだよ。新婚さんか!!って突っ込みそうになったぞ。」

「そう?」

「そうとも。最近の若者と違ってしっかりとしたいい人じゃないか。」

「いい彼氏見つけたわね。まぁ賢さんには勝てないけどね。」

「いやいや。咲希のが……」

「イチャイチャしてるところ悪いんだけど、私と陽さんは付き合ってないわよ。」

「「えっ!?」」


……何だ?この二人の驚き様は?


「陽さんにも色々と事情があるらしいのよ………」


私がそこまで言うと父は私の肩に手を置いた。


「わかったよ咲羅。だからそんな悲しそうな顔をするな。」

「えっ?そんな顔してた?」


二人は同時に頷く。


「昔から顔にでやすいタイプだからね。賢さんそっくりよ。」

「え〜、お父さん似〜!?」

「何だよ、その反応。ヘコむじゃないか。」

「まぁまぁ、娘なんてそんなもんですよ。」

「お父さんは悲しいよ。」


……この三文芝居はどうにかしてほしい。


「兎に角、咲羅は私似のスタイルがあるわけなんだから陽さんを魅了しちゃえばいいのよ。」

「う〜ん、効果があるか表情に出ない人だからな〜。」

「何とかなるだろ。」

「賢さんは楽天的ねぇ。」

「ホントお父さんが羨ましいよ。」

「なんか俺がものすごく悪い人になってないか?」



父の愚痴は流して、久しぶりの家族の会話を楽しんだ。アメリカのことだとか、お姉ちゃんのことだとか。

実は私には陽さん達と同じ年のお姉ちゃんがいるんだけど、今はフランスで生活してる。パティシエの勉強中。もう三年近く会っていない。元気かなぁ?



時が経つのは早くて、陽さんが帰ってきた時にやっと夕方だと気付いた。ホントは泊まってって欲しかったけど、また戻らないといけないらしい。大変だ。しかし帰り際の台詞は余計だったような………陽さんに変な家族だって思われたのが少しショック。

陽さんにお母さんの年を教えたら、指を折りながら数えて小声で『すげぇ』って呟いてた。

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