第十四話 其ノ二
長かった海編がようやく終わります。まぁ、これといって他に言うこともないのですが……。
この前、前書きでコメント下さいと言ったら本当にコメント頂きました。感謝です。以上、作者の独り言でした。では本編をどうぞ。
カチャカチャと網の準備等をしている誠治さん達。その中に陽さんの姿は無く、私は辺りを見回した。…………いた!!煙が出てるってことはまた煙草吸ってるな。
でも陽さんの背中は寂しそうで。胸が締め付けられて。気が付けば走っていた。
『第十四話:お約束?海パニックの延長戦 side S』
私が走って来るのにも気付かない陽さんはゆっくりと一服している。
「ど〜ん!!」
勢いよくぶつかると陽さんはそのまま倒れた。私は陽さんを馬乗り状態。私も倒れこみたかったけど陽さんに降りろと言われたらそうしなければいけないような気がして、慌てて降りた。
陽さんはまだ少し不機嫌そうだった。『別に』もいつもと少し違ったし。
「機嫌直してくださいよ〜。」
と懇願してみた。陽さんは少し顔を赤くしてまるで子供のように
「…………どうしようかな。」
なんて言った。またギャップ。不意に理性が消えた。気がつけば私は陽さんの頬にキスをしていた。陽さんは呆然としている。当然だろう。とりあえず私は皆の所まで戻った。全速力で。
「どうしたの咲羅?顔が真っ赤だよ。」
綾子が近づきながら聞いてきた。てか綾子……また焦げた色してるし。
「べっ、別になんでもないよ!!走って来たから熱くなっちゃってさ。」
「そうなの?」
「そんなの嘘に決まってるわよ、ねぇ咲羅?」
「絵美………何でそんな判断を下せるのよ。」
「私の視力をなめないでよね。見えちゃったのよね〜。咲羅ったら大胆なんだから。」
「えっ、何何〜?」
「実はね……ゴニョゴニョ。」
「ふ〜ん、走ってきたなんて嘘はよくないなぁ、咲羅?」
私の全身の血が冷たくなった気がした。………絵美恐るべし。
バーベキューは美味しかった。ビールにお肉に野菜に、もう最高だね!!でも陽さんと誠治さんはお酒が飲めないから少し悪いことしたかな?食事の後は花火をした。数は少なかったけどやっぱり夏の風物詩、綺麗だった。花火大会もいきたいなぁなんて……連れてってくれるかな?
帰り道。混んでない道をゆっくりと車が走る。後ろの二人は手を繋いで寝てる。………羨ましいな。
「………寝てもいいぞ。」
不意に陽さんが話し掛けてきた。でも眠るわけにはいかない。
「………寝ませんよ!!」
「………起こしてやるから大丈夫だよ。」
「い〜え!!絶対寝ません!!」
「………何で?」
「だって!!陽さんが運転してるのに私が寝るなんて失礼です!!」
「………」
「ただでさえ泳げないのに海に無理矢理連れて行っておまけに運転までさせて、お酒も飲めないなんて可哀想じゃないですか!!」
思わず熱弁してしまった。ちらりと覗くと陽さんは穏やかな顔をしていた。
「…………気にするな。」
「でもっ!!」
「………ゆっくり眠りな。」
陽さんは私を優しく撫でてくれた。それはとても心地良いもので。まるで魔法にでもかかったみたいに私の瞼はゆっくりと閉じた。
気付いたのはまた陽さんの腕の中。
私ったら何回迷惑かけてるんだ?ベッドに降ろされた後で目を開けて起き上がる。
もう一度寝ようかとも思ったけど目が覚めてしまった。ゆっくりとフロアに降りようとしたらクラシックがかかっている。カウンターで一人ビールを飲んでいる陽さんを見つけた。私はお酌という名目で陽さんの隣に座った。私もビールを取り出して飲む。枝豆を食べてると陽さんが質問してきた。さっきのことを。
私は『好きだからですよ。』と言った。言ってしまった。陽さんは驚いた顔をしていた。私は急に不安になった。
『もしここでフラれてしまったら?』
それほど気まずいことはない。私は怖かった。今までの様に話せなくなってしまうんじゃないかということを。だから言った。
「な〜んちゃってぇ。」
陽さんは更にびっくりした表情になっていた。ここは酔ってたという理由でなんとか流すしかない。一瞬『私は酔うとキス魔になるんです』ということも頭によぎったが、後々陽さんに引かれるかもしれないと思い却下した。
「陽くんは〜まだまだ子供だから〜私みたいなお姉さんがいないと〜駄目なんだよ〜。」
「………そうか?」
「そ〜ですよ〜」
陽さんは笑っていた。
「………俺が子供ならそっちは胎児だな。」
最後の台詞は聞き捨てならなかったけど。