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第十一話 其ノ一

海行き決定から早くも一週間が経った。そして本日がその日。当初逃げようかとも考えてたが、咲羅がいつも俺を監視してやがる。もう諦めた。咲羅がなかなかしつこい奴だとこの時初めて知った。………海か。



『第十一話:お約束?海パニックの前編 side Y』



『ぼふっ!!』

布団の効果音と共に何かが俺の上に乗っかった。

「…て…だ…い!!…起き…下…!!…起きて下さい!!」

「!?」


誰かが耳元で突如大きな声を放つ………まぁ一人しかいないが。ていうか俺の上に馬乗りになるとはいい度胸だ。重くはないが苦しい。俺が起きたのを確認するとニパッと笑う。


「おはようございます!!いい天気ですよ〜!!」

「………おはよう。」


そういって咲羅はスプリングを利用してベッドから飛び下りる。そしてゆっくりと窓の方に向かいカーテンを開く。まだ少し薄暗い。何故?寝惚けた頭で考える。俺は昨日確かに目覚ましをかけた筈だ。いつもより早めに。しかし目覚ましが鳴った形跡は何処にもない。


「………なぁ。」

「どうしました?」

「………今何時だ?」

「えっ?五時前ですけど?」


………俺はのそりとベッドから体を起こしてゆっくりと咲羅の前に歩み寄る。右手をゆっくりと頭までもっていき……軽く振り下ろす。コツン、と軽く鳴った。


「痛っ、なにするんですか!!」

「………こっちの台詞だ。」

「何がですか!!」


………逆ギレしてるよ。


「………出発は八時だろ?」

「そうですよ。」

「………何故今起こす?」

「暇だったもんで……テヘッ」


………少々可愛いと思ってしまった自分が恥ずかしい。もう一度軽く振り下ろした。コツン。


「痛〜い、もう!!何回も叩かないで下さいよ!!英単語忘れちゃうでしょ!!」

「…………はぁ。」


もうコイツには勝てない。まぁ、起きてしまったものはしょうがない。とりあえず後ろでギャーギャー騒いでる咲羅はおいといて、シャワーでも浴びるか。



シャワーを浴びてホールに降りる。時計はまだ五時を指したばっかりだ。咲羅は鼻唄を歌いながら朝食と弁当を作っている。


「………どれ。」

「ひゃあ!!だから背後からいきなり何か喋んの止めて下さいって何度言ったらわかるんで……あぁ!!つまみ食い!!」


唐揚げをヒョイとつまみあげ、口に放る。揚げたてなのか口の中が熱いが、サクッとした衣にジューシーな鶏肉が口の中に広がる。


「………美味い。」

「も〜、楽しみにしてて欲しかったのに〜!!」

「………人を早く起こした罰だ。」

「ぶ〜!!」


頬を膨らませている咲羅。指で頬をつっつくと口から空気が抜ける。咲羅は耳まで真っ赤だ。そんな咲羅に微笑み、お湯を沸かす。コーヒーくらいいれてやらなきゃな。




朝食も食べ終り、少し早いが他の連中を拾うことにした。とはいっても、誠治は自慢の愛車に綾子を乗っけてくるって言ってたので愁と絵美を迎えに行く。

全くなぜ俺の車をださねばならんのだ。

いきなり車の話をふられた時にはコーヒーを噴き出してしまった。唐突すぎだ。今の今まで秘密にしていたガレージの存在だったが誠治が余計な事を喋ったおかげで咲羅にバレた。

俺の後ろをニコニコしながらついてくる咲羅。これからことあるごとに使われそうな嫌な予感が頭に微かによぎったが、打ち払う。

一階の奥の隠し扉を開く。ちなみにこの扉は翔太郎の伯父さんが家の中には遊び心がなきゃつまんないという結構無謀な考えから出来たらしい。

裏庭と呼んでいいのかわからないが、それっぽい場所にガレージが一つ。ゆっくりとシャッターの鍵を開けて一気に上に引き上げる。少しだけ埃が舞う車庫の中の真ん中にある車のカバーを取る。


「……スッゴーイ!!」


やたらはしゃぎまわる咲羅。カバーの中から出てきた車は自慢のアメ車である。車体は渋い光沢のワインレッド。シートは黒の革張り。しかもオープンカーである。見た瞬間に一目惚れした。あの時は興奮した。人生でまだ数度しかない興奮である。

燃費は悪いものの、デザイン性だけで充分だった。一目惚れしてから一年の歳月をかけて手に入れた。久しぶりに頑張った。受験の時よりも頑張ったかもしれない。扉を開いて、車に乗り込む。咲羅も車の正面から左側に駆けて乗り込んだ。全く、最初にサイドに座らせる女性が咲羅とは……まぁいいか。


「じゃあレッツゴー!!」

「………はいよ。」


キーを回してエンジンの音が心地よく聞こえる。俺と咲羅を乗せた車はゆっくりと道路に入っていった。

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