第十話 其ノ二
陽さんと暮らし始めて三ヶ月が経過した今日この頃。最近では陽さんの雰囲気に馴れてしまい、私のペースで過ごしてるような気もする。でも、陽さんも嫌がってないし(という自己中な考え)結構楽しいし、いい感じじゃない?
『第十話:夏だ、海だ、その前に受験だ side S』
「陽さ〜ん!!ここ分かんないってば!!」
「………ここはこうで、この文章を根拠に……」
「愁さん!!お願いします!!」
「ここはね〜、こ〜だよ。うん、そうそう。絵美ちゃんは優秀だねぇ。」
「ちょっと愁さん!!それじゃ私が馬鹿みたいじゃないですか!!『は』じゃなくて『も』にして下さいよ!!」
「………細かいな。」
「細かくない!!」
怒鳴ってばっかの私ですけど、ただいま四人で勉強会を開催中。なんたって一流大学の学生が二人もいるんだもん。結構凄いよね。
ちなみに翔太郎君と栞さんは海外旅行に行っちゃった。陽さんに土下座してお金を借りてたっけ。
龍太さんはレポートを出してなかったらしくて家でめっちゃ書いてるらしい。
綾子は走りまくっている。なんか誠治さんのいつも行くジムとかにもちょくちょくついていくらしい。トレーニングだけが目的?って聞いたら『秘密』だってさ、青春だねぇ。
で、絵美と私はウチで勉強会。なんたって(以下略)だからね。ちなみに絵美は愁さんを家庭教師に雇ったらしい。目的は何かな?………ハッ!!気付けば私だけ出遅れてる!?マズイ………こりゃマズイ……なんか考えなきゃ。
そうめんを食べながらまた考える。あっ、梅がサッパリして美味し〜………じゃなくて!!あっ、大葉の香り……じゃなくて!!てか私何一人でノリツッコミしてんの!?考えろ、考えるのよ、私!!
………これだ!!よし、早速行動開始だ!!
「………海行きたいなぁ………」
私の呟きに見事にノってくる二人。アンタ達、ナイスだよ!!
「い〜ね〜海!!」
「受験生も息抜きは必要よね?」
よしよし、いい流れだよ。私が笑顔で陽さんの方を向く。陽さんは明らかに表情が変わっていた。多分私の考えを予測したのだろう。三ヶ月しか一緒に暮らしてないのに私の行動を読むとは……なかなかやるな、お主!!しかし、そちらが読めるということは……
「あ〜あ、誰か連れてってくれないかな〜?」
私にも陽さんの考えが読めるということなのです!!
「今無視しようとしてませんでしたか?」
「!!…………まさか。」
「じゃあ何で今一瞬『ビクッ』ってなったんですか?』
「…………発作だ。」
少しウケた。まさか『発作』で返されるとは思ってなかったからだ。とりあえず両腕をブンブン振り回して反抗する。すると愁さんが意味深な発言をした。
「しょ〜がないよ〜、だって陽はか『ギロリ』」
「『か』ってなんですか?」
「えっ、えっと……」
明らかに動揺している。陽さんが睨んでるから。殺気があるし。しかし、こんなことでへこたれる私ではないのだ!!
「ねぇ、『か』の続きは?気になるよね、絵美?」
「めちゃめちゃ気になる!!」
絵美と私で畳みかける。絵美を使えば100%可能なはず。
「陽、ごめん。たまには革命も必要だよね〜。」
「そうそう、いつまでも睨んだだけで済ませようなんて甘い考えでは困りますな。」
多少お灸を据える気持ちで言葉を発した。
「陽は実は………」
「「実は?」」
「カナヅチでした〜!!」
「「………ウッソー!!」」
これには驚いた!!まさかあの悪魔超人のようになんでもこなす陽さんがカナヅチとは……睨むはずだよ。
「でも海は泳ぐだけじゃないし〜。やっぱり行きたいよね、咲羅?」
「うんうん!!」
ナイスフォロー、絵美!!
「じゃあ決定〜!!」
「「わ〜!!」」
「…………はぁ。」
そして流れで決定!!私達って結構策士?陽さんも呆れたようだった。
この時私は気付いてなかった。海のことで必死だったし、浮かれてたから。三ヶ月で陽さんが私の心を読むまで私に興味を持ってることを……。