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第一話 其ノ二

初回ということで二話目を更新しました。よかったら読んでやって下さい。

彼氏にフラれた。理由は簡単、好きな人が出来たからだって。

別にどうでもいい。大して好きでもなかった訳だし。こんなこと言うとまた綾子に誤解されるかもしれないな。私は別にクールな訳でも大人な訳でもない。私だって恋はしたい。でも世の中の男に興味が持てないんだから仕方ないよね?



『第一話:出逢い side S』



両親にアメリカ行きを告げられたのは一週間前。もちろん断固拒否である。高校生活もあと一年しか残っていないのにいきなりアメリカ!?冗談はその突拍子な性格だけにして欲しいよ。

そんな私に救いの手を指し延べてくれたのは、従兄弟の翔太郎君だった。空いてる場所があるから大丈夫だよ。いつもの笑顔で両親を説得してくれた。


そして今日から一人暮らしが始まる。うわっ!!凄いドキドキしてるんだけどっ!!

キャリーバッグを引きずりながら目的地『frontier』の前まで辿り着く。スー、ハー、スー、ハー。深呼吸して『いざ行かん』みたいな雰囲気で店内へ入る。コソコソと……

中に入るとコーヒーの良い薫りがする。喫茶店なんだから当たり前か。カウンターの向こうから


「お〜、咲羅ちゃん。丁度良いとこに来たね〜。」


と翔太郎君が呼び掛けた。隣には……なんかめちゃくちゃかっこいい人が居るんだけど。バイトの人かな?真っ黒な長めの髪から見えた瞳は鋭く、少し怖い印象はあるけど……なんか寂しそうな目をしていた。

すると突然隣の男が翔太郎君を殴った。意外とバイオレンス?それから作戦会議みたいにヒソヒソ話しを始めた。どうしたのかな?まさかここまできてダメとか無いよね?聞いてみようかな?


「……あの〜。」


簡単に言うと答えはオッケーだった。


「佐倉 陽、大学三年だ。」

「よろしくお願いします。」


名字がさくら。なんか親近感がわいた。でも、私にいきなり衝撃の事実がプレゼントされた。


「で、コイツもここで暮らしてるから。よろしく。」

「……ほへっ!?」


言葉にするとこんな声だったと思う。そりゃそうでしょ、いきなり同棲宣言を勧告されたのよ?

……でも行く場所も無いし、翔太郎君が『安心して』って言ってたし、……何とかなるかな?


「わっ、わかりました。改めてよろしくお願いします。」

「……よろしく。」


……今思ったんだけど、陽さんって声がハスキーでこれまたかっこいいわ。でも口数は少ない。てかお客さんの中にスッゴクちらちら見てる女性が沢山いるんだけど。大人気じゃん。でも本人は興味も無いかのようにコーヒーを注いでいる。


「……どうぞ。」

「えっ!?私ですか?」

「……他に誰が?」

「あっ、そうですよね。……ミルクとシュガー頂けますか?」

「あぁ……どうぞ。」


ポーションではなく小さな瓶が二つ。一つはスプーンが入ってるからシュガーで、もう一方がミルク。コーヒーの上にゆっくりとミルクを垂らす。渦を巻きながらゆっくり沈んでいく。カップの脇の小さなスプーンでかき混ぜるとマーブルみたいに歪み、次第に色が変わってゆく。シュガーを入れて一口。ほのかな苦味に絶妙な甘さ加減。


「おいしいっ!!」


思わず声が出てしまった。今まで飲んでいたコーヒーを見たら笑ってしまうくらいここのコーヒーは美味しかった。

この時初めて陽さんの顔が和らいだ…ような気がした。


「咲羅ちゃんさぁ、ここでウェイトレスやらない?」

「私……ですか?」

「いや、もちろん嫌なら断ってくれても良いんだよ。でも、流石に俺と陽だけじゃ人手不足でさぁ。」

「……良いですよ。」

「ホント!?」

「家でバイトなら遅くなっても大丈夫だし、全然構いませんよ。」

「ありがと〜。」

「………そこまでして仕事をサボりたいか。」

「まぁそういわないで。」


この二人って性格は正反対だけど息が合ってるっていうか何ていうか……


「……経営状況的に、あまり良いバイト代は払えないけど大丈夫?」


いきなり陽さんが話しかけて来たので驚いたけど、落ち着いて答えた。


「はい、お金が目的で働くつもりじゃありませんから。」

「良い娘だね〜、この素直な性格、陽に見習って欲しいくらいだよ。」

「………はぁ。」

「だからため息吐くなっつってんだろ!!」



この二人、お笑いコンビを目指したら良いんじゃないかな?

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