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第七話 其ノ一

咲羅と最初に会った時から一ヶ月半が経った。時間の流れとは早いものだ。この前まで葉桜が舞っていたのに今じゃ雨ばかり。梅雨というのはあまり好きじゃないが客が減ってくれればそれでいい。



『第七話:梅雨と教育実習、どちらも晴れず side Y』



「いらっしゃいませ〜!!」


しかし最近また客が増えた。原因は二つ。一つは綾子達が俺の存在を暴露したために女子高生が増えたこと。なぜ俺の存在がバレたとかいう話になっているのかはのちに分かるだろう。たこと。もう一つは咲羅、綾子、絵美の三人のウェイトレスに惹かれて男が増えたせい。


ただ、最近絵美はあまりシフトに入らなくなった。大学受験の為に予備校に通っているらしい。受験生は大変だ。

綾子はスポーツ推薦で大学に入るらしく絵美の分も働いている。何でも早いうちからスカウトが来たらしく、ほぼ確定なんだと。

そして咲羅はというと………


「今日もよろしくお願いしますね。佐倉センセ♪」

「………それは止めてくれ。」

「え〜いいじゃないですか?勉強教えて下さいよ〜。」

「………そうじゃなくて、その呼び方だ。」

「だって事実じゃないですか、センセ♪ていうかもう二週間も言ってるんだからいい加減慣れて下さい。」

「………はぁ。」

「センセー、コーヒー追加ね〜。(綾)」

「……………はぁ。」


ため息も多くなるさ。なぜ『センセ』などと呼ばれているか………二週間前を振り返ろう。



「…………着いた。」


スーツ姿で校門の前に立つ俺。今日から教育実習が始まるのだ。そして隣には……栞がいた。


「………お前もここだとはな。」

「まぁ、同じ大学だし普通じゃない?」

「………そうか?」

「てか同じ母校なんだから当たり前じゃない。」

「………まぁな。」


そう、ここは俺達の母校だ。戻ってくるのは約三年振りか。


「さっ、行くわよ。」

「………あぁ。」


そのまま職員室に向かう。早い時間なので生徒には会わない。職員室の扉を開けると懐かしい顔が見えた。


「おお!!佐倉、久しぶりだな!!」

「………ご無沙汰してます、朝井先生。」

「そっちは天海か!!」

「久しぶりね、先生。」


朝井 忠 (あさい ただし)。高校時代の俺達の担任の社会教師。ふさふさの髭を生やし、髪はオールバック。ビシッとスーツを着こなす姿はとても五十代には見えない凛々しい姿である。『恩師』と言う言葉が適切だろう。大分お世話になった。


「佐倉。お前の担当は俺だからビシビシ行くぞ!!」

「………よろしくお願いします。」

「よし、じゃあクラスに行くか!!俺達は三年D組だぞ。」

「………はい。じゃあな、栞。」

「じゃあね。」




「最近はどうだ?」

「………まぁまぁです。」

「でもあの頃よりも顔つきが穏やかになったぞ。」

「………ウチに変わったのが居ますから。」

「? おお、ここだここだ!!お前はちょっと待っとけよ。」

「………はい。」


中からざわついた声が聞こえる。俺も昔はそうだったかな?


「よし、入ってこい!!」


ガラッ!!

引き戸を開けてゆっくりと教壇まで上がる。落ち着け、落ち着……

「「「あ〜!!陽さんだ!!」」」

次の瞬間、俺は座席表と出席簿を落としてしまった。………なぜ三人がいるのだ?そこで考えてみる。……確かに一番初めに見た制服のリボンはウチのものだ。油断した、まさかこんなところに伏兵がいるとは………


「なんだ!?中元と東雲と西野は佐倉の知り合いか?」

「「「はいっ!!」」」


おいおい……止めてくれよ。いきなり精神的にキツクなってきたよ。とりあえず黒板に名前を書く。一度深呼吸をして……


「………佐倉陽です。みなさんよろしく。」


女子生徒からは歓喜の声、男子生徒からはドス黒い目で見られた。これから大丈夫か、俺?


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