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第六話 其ノ二

綾子に飲まされたせいで睡魔が私を襲った。うつらうつらした中で絵美も綾子も帰ると言ってたような気がする……眠い。



『第六話:過去と引っ越しのお手伝い side Y』



あ〜揺れてる。飲みすぎちゃったかなぁ?そんなに弱いわけじゃないのになぁ。あれ?なんかふわふわしてるし〜。重い瞼を少〜しだけ開けて見るとすぐそばに陽さんの顔がある。ドキドキが止まらない。お酒のせい?違う!!だって今私、お姫様だっこされてるよ〜。

……でも気持ちいいからいいや。少しがっしりとした体つきがまたなんともいえない……ってこれじゃ変態さんじゃん、私!!

そんな夢心地も束の間、私はベットに降ろされた。部屋にはまだ陽さんがいるらしい。カタッ、カタッと何か音がした。………写真だ!!私は薄目を開けてみる。陽さんの背中は寂しそうだった。


「唯………もう五年だぞ。……帰ってくる気があるなら……そろそろ戻ってこいよ。」


唯………誰なんだろう。陽さんの彼女?戻って来いって一体………


「………明日、また会いに行くよ。」


カタンッ……

扉がゆっくり閉まった。私は目が覚めてしまった。


『明日、会いに行く。』


穏やかな口調。いつもの陽さんじゃないみたいだった。

私はまだ陽さんの事を何も知らないんだな………あれ?なんで今知りたいみたいな考えになったのかな?…………わかんない。もういいや、寝よ!!




土曜でも朝は早く起きてしまう。朝って清々しくてなんか良くない?流石に休みの日に早起きするのは戦隊もののアニメとかを見る幼稚園児とか(あれって日曜だったような………まっ、いっか)休日出勤のお父様方くらい(私立の学生さんも出勤?最近は公立も出勤らしいけど私の学校は違うのだ)だもんね〜。

いつものように(昨日からだけどそこはご愛敬で)Tシャツとジーンズに着替えてエプロンを装着!!キッチンで調理を始める。

昨日の味噌汁は豆腐と油揚げだったから今日は玉葱とワカメにしようかな?あっ、そうそう、ここに来るとき家からくすねてきた鯵でも焼こうかな?



さ〜ってと、鯵も焼けたしご飯も炊けたし、あとは……


「………今日は土曜だけど?」

「ひゃあ!!」


思わず悲鳴をあげてしまった。後ろからいきなり声を掛けるなんて反則だって。


「……ウチにあったっけ?」

「私ん家から持ってきました。栄養満点ですよ!!」


ふ〜ん、といった様子で鯵を見つめる陽さん。

それからすぐに朝御飯を食べ始めた。


食事中。


「あっ、今日私の荷物が届きますからお願いします!!」

「………なにを?」

「何って……セッティングとか?」


少しとぼけてみる。


「もしかして、用事とかありましたか?」

「………夕方だから平気。」

「そうですか!!じゃあよろしくお願いしま〜す!!」


用事があることは知ってた。だけど一応確かめておきたかった。でも部屋の準備とかもして欲しいってのも事実だし………なんで私一人で言い訳を勝手に話してるんだろ?


お昼前に荷物が届いて、陽さんが従業員さんとベットを運びこむ。軽いわけはないベットを二人だけで運んでいる。従業員さんはわかるけど陽さんってあんなにパワーがあったんだ。そういえば最初に会った時も翔太郎君を殴ってたっけ。

ベットが運びこまれて部屋の整理を始めた。とりあえず簡単な作りのタンスに洋服とか下着とかを閉まっていると陽さんが入ってきた。あわててクッションを投げたけど悪いことしちゃったかな?………見られてないよね?




陽さんが出掛けたのは夕方。後をつけようかな、とも思ったけどそれじゃストーカーじゃん!!と一人でつっこみながら買い物に行った。冷蔵庫の中にはあんまり入ってなかったから買い込まなきゃ。


スーパーで物色していると後ろから声を掛けられた。……誠治さんだ。


「やぁ、咲羅ちゃん。買い物かい?」

「はい、一人で家にいても面白くないんで、食糧を調達しに来ました〜!!」

「あれ?陽はいないの?」

「さっき出掛けていきましたけど?」

「………そう。」

「? どうかしましたか?」

「…いや、なんでもないよ。それよりそんなに買うの?」

「冷蔵庫が殆んど空だったからつい……。」

「じゃあ俺が荷物持ちしてあげるよ。」

「えっ!?そんな、悪いですよ!!」

「いいの、いいの!!気にしない、気にしない!!」


そう言って私からカートを奪い先に進んだ。




「ホントすいません。こんなに持って頂いて。」

「いやいや、全然平気だよ。」


確かに平気そうだ。てか凄い筋肉。


「あっ、あの!!」

「ん?どうしたの?」

「………唯さんって誰ですか?」

「!」


辺りがやけに静かに聞こえた。遠くから子供の笑い声が聞こえた。


「………それは俺の口からは聞かない方がいいと思う。」

「………」

「もし咲羅ちゃんが俺の口から聞きたいって言うなら話してもいい。でも……」

「………でも?」

「出来ればアイツが話してくれるまで待って欲しい。」

「………」

「……多分可能性はあると思うよ。」

「えっ!?」

「だってアイツが人をからかうなんて滅多に無いことだよ?しかも女の子に対してなんて数える位だ。」

「そうなんですか……。」

「咲羅ちゃんはアイツが好き?」

「………えっ!?………わかりません。」

「ゴメン、いきなりすぎたね。でもアイツは咲羅ちゃんのこと嫌いじゃないと思う。だから………待っててやってくれないか?」

「………わかりました。」

「そっか。」

「……でも驚きました。」

「何が?」

「龍太さんにも待っててやってって言われたんです。」

「………そっか。」

「私……待ちますね。」

「うん。………じゃあ帰ろうか?」

「はい。」




家に帰ったあと、私は何も考えなかった。一心不乱に料理を作る。いつか教えてくれるまで待とうと思う。

もしかして私は陽さんに……恋


「………ただいま。」

「ひゃっ!!」


いきなりだよ、この人は。心臓に悪すぎ!!怒ったけど、直ぐに笑顔を見せた。私はやっぱり笑ってないとね。



今日はオムライス。卵を半熟にするのってやっぱり難しい。今日は成功したから良かった。食事中に聞いてみた。


「さっき………どこ行ってたんですか?」


スプーンが止まる陽さん。


「………ちょっと、ね。」

「そうですか。次からは買い物に付き合って下さいよ。誠治さんに助けてもらわなかったら大変だったんですから!!」

「………誠治に会ったの?」

「はい、買い物途中に。」

「………ふ〜ん。」

「あれ?もしかして嫉妬ですか?」

「ブッ!!ゴホッ、ゴホッ!!」

「だっ、大丈夫ですか!?」

「………大丈夫。」

「ごめんなさい、冗談が過ぎました。」

「………まぁ、別にいいよ。」

「じゃあ次からは一緒に行きましょ?」

「………考えておく。」

「約束ですよ〜!!」

「………はいはい。」



とりあえず頑張ってみよう。いつか話してくれるその時まで………

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