善人二人、仲が悪いのに付き合ってます。
「お願いします! 付き合ってください!」
オレは同級生の女の子に告白した。
「は? 嫌なんですけど?」
そして撃沈。
でもな、オレも本当は嫌なんだよ! なんのためにお前に告白してると思ってるんだ!?
――それは高校生活二日目にまで遡る。
◆◆◆
オレはその日遅刻した。
理由はもちろん、人助けをしていたからだ。
まだ二回目の通学路で道がわからない小学生の二人組を学校方向へと案内してやったり、孫を見に上京してきたのかは知らないが困っている老婆に道案内としてついていったり……。
たしかそんな経緯だった気がする。
学校に着いた頃には一時間目の授業が終わっていた。
そしてそのとき、のちに因縁の相手となる黒髪ロングの女子、稲葉ユウに話しかけられたんだ。
「えーと……」
「厚山ハルキです」
呼び方がわからなかったようなので、親切に教えてやるオレ。
うーん、なんて優しいんだろうか。
「厚山くん……キミ、高校生としての自覚はあるの? 二日目から遅刻だなんて、たるんでるわね」
オレは内心イラッとしたが、その気持ちを抑えて丁寧に理由を説明する。
「入学して間もない小学生の子たちと、上京したてのおばあさんを助けて遅れたんだ……ですよ」
「そういう作り話はいいから。ていうか、仮にそれが事実だとしても、時間を守るために急ごうとか思わないわけ?」
「はぁ……」
うぜぇぇぇ!!!
なんでこんなにオレにだけ当たりが強いんだよ! そもそもオレ善人側だろうが!
「えーと、あんた……」
「稲葉ユウよ」
「稲葉……さんは、なんでオレに対してだけ当たりが強いんすか?」
「あなたが嫌いだからよ」
「はぁ!?」
こっちだってお前みてーな女、嫌いだっつーの!!
つーか人助けをした人間を嫌うとか、性格ねじ切れてんのか!?
「……オレなんかした?」
「理由は単純。キミが入学初日から良い人ムーブをしたからよ!」
「別にいいことだろ」
「それだけなら嫌いにはならないわ。問題は、キミがあたしの分も奪ったからよ!」
「はぁ?」
ますます意味がわからん。
ていうか、善行に奪うもクソもねーだろ。
「とにかく! あたしの前で堂々と善行できるだなんて思わないことね!」
「へいへい……」
なんだこの女……? 変なヤツ。
その日以降も、オレは色んな人助けをした。
授業内容を理解できていないヤツには、授業の終わり際にコソッとアドバイスをしてやり、教室の中にあるゴミを率先して休み時間の間にササッと片付けたり、ゴミ箱のゴミを分別したり……。
すると、またあいつに話しかけられる。
「ふぅ、すっきりした!」
「ちょっと厚山くん! あたしのために残しておくって約束だったでしょ!」
「そんな約束一度もした覚えがないんだが……」
「空気を読めって意味よ! あ、そうだ。キミ、善行が好きなんでしょ? あたしに善行を譲ってくれない?」
「はぁ? 嫌だね」
「な、なんでよ?」
お前のことが嫌いだからだよ!
……なんてことは本人を前にして言えず、適当な言葉で濁す。
「なんでもいいだろ! さてと、黒板消しでもクリーナーにかけてくれるかな」
「あ! また横取りして!」
「ならじゃんけんで決めないか? 少しムカつくけど、それで公平だろ?」
「わかったわ。最初はグー!」
「じゃんけんぽん!」
オレはグー、稲葉はチョキを出した。
「はい、オレの勝ちな」
「くっ……!」
ていうか、オレを無視して抜け駆けすればいいのに。
律儀なヤツだな……。
とまあこんな感じに、毎日毎日張り合っていた。
でも、いつの間にか「付き合ってるのかどうか」だとか、そういう噂が広がっていた。
みんな恋バナが好きだよなぁ。
いや、オレも自分のことじゃなければ後押ししたり茶化したりしただろうよ。
でも、なんでオレがあんな善行好きで生意気な変人女を好きにならないといけないんだ?
冗談でもやめてほしい。
そう思ったので、オレは勘違いをされないように、稲葉に嫌がらせを始めた。
といっても、いつも通り善行をしただけだがな。
だが、これで稲葉は困るだろうからな。オレの助けグセも消化できて、一石二鳥だ。
すると、だんだん稲葉は張り合ってこなくなった。
一瞬心の中でガッツポーズしたが、冷静に考えると、理由はすぐにわかった。
「そうか、稲葉も噂になってることは知ってるはずだよな……」
ただ、それでもオレは善行をした。
稲葉に対する嫌がらせではなく、純粋に人助けしてしまうタチなのだ。
オレにはそういうクセがある。
だから、よく好意があると勘違いさせたり、他人に嫉妬されてしまったこともあった。
それでもオレはやめなかったがな。
でも、オレの人助けを本気で嫌がったり不快に思う人がいるのならオレは――。
そう思った次の日から、オレは人助けを辞めた。
これであの稲葉が関わってこないと思うと、気が楽になる。
善行ができないことにムズムズしつつ、オレは机に伏せ、稲葉を眺めていた。
そうしたら、稲葉が善行をし始めた。
オレはその状況にすこぶる安心した。それと同時に、イライラする自分もいた。
「……なんだろう、この気持ちは?」
稲葉以外が人助けをしてもイラつきはしないんだがな……。
それってつまり……
「オレは稲葉が大っ嫌いってことか……?」
いや、嫌いなのはわかっていたが、ここまでとはな。
そう思っていると、突然クラスメイトが話しかけてくる。
前はまったく相手にされてなかった感があったが、どうしてだ?
まあ、オレ自身関わろうともしなかったがな。
試しに理由を尋ねてみると……
「いやー、厚山くんって稲葉さんと仲がいいから邪魔したらダメかなって」
「わかる! 稲葉って完璧超人オーラあるし、近寄りがたい存在だよなー」
「おれも厚山も完璧なヤツかなって思って、正直距離置いてたわ。ごめんな」
……とのことだ。
オレが完璧? 人助けを続けてるだけで完璧になるっていうのか?
稲葉が超人? あんな生意気なヤツが完璧超人なのか?
オレは混乱して頭がクラクラとした。
「ちょっと具合悪いから、保健室行ってくるわ」
「大丈夫か?」
「気をつけてねー」
「先生には言っとくから、安静にな」
みんなはそう言ってくれたが、実際はサボりみたいなものだ。
保健室に行くと、稲葉がいた。理由はわからんが興味もない。
オレは先生に断って、ベッドに寝転がりながら考える。
「人助けってなんだ……?」
そう考えていると、オレはそのまま寝落ちしてしまったようだ。
その証拠に、窓を見ると夕方になっていた。
部屋を見渡すと、稲葉も先生もいなくなっていた。
「ふぅ、帰るか」
……なんだか申し訳ないな。
オレだけ授業も受けずに帰るだなんて。
「あ、そうだ。カバン、カバン……」
カバンを取りに教室へ向かうと、教室には稲葉が別のクラス?の男子とふたりっきりでなにか話しているように見えた。
ドアを開けにくい状況なのでドアのそばに隠れていると、突然男の方がガラッとドアを開けて走っていった。
「なんだったんだ……?」
カバンを取りに教室に入ると、稲葉が妙だった。
普段と違って反応が女の子らしいというか、ビクビクしている感じだったからな。
「あの、どうかしたのか?」
「……もしかして、聞こえてた?」
「何のことだ? オレはカバンを取りに来たんだよ。善行好きな変人に興味ねーから」
「そうよね……。うん、やっぱ勘違いね!」
「……マジで何の話?」
「こっちの話!」
要領を得ないな。
あ、そうだ! ふたりっきりだし、ついでに言っておくか。
「そんなことよりさ、来週からオレ、人助けしねーから」
「えっ?」
「だから、大っ嫌いなオレから解放されたんだし、喜べ変人」
「……えっ?」
なんだ? 善行が好きすぎてバカになったのか?
「もう一度言おうか? オレはもうお前の前じゃ人助けしねーの! 人助け、オレ、しない。わかったか?」
「わかったから! ちょっと動揺しただけ!」
「そうか。じゃ、また来週……。つっても、お前はもうオレに関わってこないか」
オレはニッと笑って教室を出ていった。
と言っても、稲葉のいないところでは人助けする気だけどな。
それにしても稲葉のやつ、硬直しやがって……。
「あーイラつく! いつか痛い目見せてやる! でも――」
来週からはもう稲葉とはほとんど関わることはないんだ。
これからはあいつのいないときに善行をして、友だちと一緒に仲良く学園生活を送る。
そして最終的には、稲葉のことなんて忘れてやる!
そう決意してオレはその日下校した。
だけどその次の週からだ。
稲葉の本質が出てくるのは。
それから、オレが稲葉に告白する羽目になってしまったのは。
そうして月曜日、オレは恐る恐る教室へ入る。
すると、稲葉がめちゃくちゃ人助けしていた。
「ふふっ、ついにあたしの時代が来たのね! 厚山くん、キミの天下は終わったのよ!!」
登校するや否や高らかに宣言され、ちょっとイラッとするオレ。
「へいへい、おめでとうございます」
でもそうか。稲葉から見たオレって、いつもこんな感じだったのかもな。
それにしても、稲葉にイラつくのは何故だろう。
やっぱり、オレが稲葉のことを嫌っているからか……? それとも同族嫌悪ってやつか?
なんにせよ、こいつの前で人助けはできない。
その悔しさをぐっと堪え、勉強道具一式をカバンから出す。
すると、先週話しかけてきたクラスメイトたちが話しかけてくる。
「厚山、稲葉となんかあったのか?」
「今日の稲葉さん、やけにハイテンションだよね……」
「正直不気味なんだが、厚山はなんか知らないか?」
うーむ、知っているといえば知ってはいるが、本当に言っていいものか。
でも、せっかく稲葉が頑張ってるんだし、ここは濁しておこう。
「オレは知らないけど、本来はああいう性格なんじゃないかな? ほら、前はオレと競ってたし」
「なるほど。彼氏が譲ることになったからハイテンションなのか……」
「たしかに……。恋人が抑えるって言ってくれたなら、そりゃあ嬉しいかも」
「サンキューな、厚山!」
「うん、いいってことよ。……ん? みんな、いまなんて言った?」
なんか、ものすごく気色悪い言葉が聞こえたような気がしたんだが。
「あれ? 二人って付き合ってないのか?」
「だよね。前から仲良かったし」
「前はライバルって感じだったよな! いまは違うけど」
「あのなぁ……まずオレは稲葉が嫌いだ。オレは人助けするのかを人によって選ぶヤツなんて、好きになれないからさ」
ま、それだけが理由ではないけどな。
「この感じだと……」
「ホントに付き合ってないみたいだね……」
「なら別のクラスの男子が稲葉に告って、フラれた事件は知ってるか?」
「事件ってのはまた大げさな表現だな……。知らないけど?」
つーか、なんでそんな話をオレにするわけ?
内心疑問に思いつつも、オレは黙って聞いた。
「なんでも、あの超イケメンなサッカー部のエースがフラれたらしいぞ」
「でも、稲葉さんの好みじゃなかったみたい」
「だから、いま厚山と稲葉が付き合ったって噂になってるんだよな」
「そうなんだ……って、現在進行形かよ!?」
あの反応からして、稲葉は噂のことを知らないだろうな。
そう思っていると、稲葉がオレの席に近づいてくる。
おそらくこの状況を自慢しにきたのだろう。
でもいまはタイミングが悪い。
「ちょっと用事!」
オレは颯爽と廊下の人が少ないところに移動する。
すると、案の定稲葉もオレについてきた。
つーかなに? そんなにオレに自慢したいわけ?
オレはついてくる稲葉に振り向き話しかける。
「さっきから付きまとってきて……オレになんの用だよ?」
「キミに自慢しようと思って。これで少しは、善行できないムズムズ感とイライラを味わえたでしょう?」
「はぁ……そんなことより、噂になってるの知ってるか?」
「噂?」
やっぱり知らなかったか。
「お前とオレが付き合ったっていう、現在進行形で流れてる噂だよ」
「あー……いや知ってるけど?」
「知ってんのかよ!?」
「ええ。でも、知ってたとしても、あたしだけじゃなんにもできないし」
「……それもそうだな」
少しは否定したりしてるんだろうが、そういうのも焼け石に水だろうしな。
仕方ない、人肌脱いでやるか。
「そうだ! 放課後に話があるから、逃げんなよ」
「えっ? いいけど……」
「それじゃ、間を開けて戻ってこいよ。そうしないと変な目で見られるだろうからな」
「はいはい」
教室に戻ると、なんだか嫌なムードが流れていた。
まるで「お前ら付き合ってるんだろ?」と言いたそうな顔をみんなしていたからだ。
だけどオレは無視した。放課後になればなんとかする策があったからな。
だが、放課後になるまで噂は止まなかった。
オレの耳に嫌でも流れてきたってことは、稲葉も同じなのだろう。
それでも我慢した。
それから放課後、オレたちは二人して教室に残ろうとする。
「それじゃあな、厚山」
「わたしたちは帰るけど、よかったら一緒に帰らない?」
「そう言ってもらえて嬉しいんだが、今日は用事があるから……」
「そっか! 頑張れよ」
「あ、ありがとう」
頑張れか……。そう声援をもらって、少し勇気が湧いてきた。
みんなが出ていって教室で稲葉とふたりきりになると、オレは稲葉から距離を取ってから右手を前に出し、例の言葉を放つ。
「お願いします! 付き合ってください!」
「は? 嫌なんですけど?」
「いや、フリでいいから! なんなら人助けの機会を譲ってやるから! 一日一回!」
オレは必死になって説得する。
「……ていうか何? 告るために居残りさせたわけ?」
「そうだよ! オレだってお前のことは好きじゃないからな」
「じゃあなんで告ったの? 『付き合ってください』って、やっぱそういう意味でしょ?」
「『お願いします』って言っただろうが! 作戦はこうだ。まずオレとお前が付き合ったフリをする」
「お断りします」
オレは稲葉をスルーして話を続ける。
「それで、そういう噂が消えるまでの間だけ、付き合ったフリをするんだ」
「……そんなの、もっと変な噂が広がるだけだと思うけど? てか、カップルとして扱われる方がキツいんですけど」
……たしかに、ベストカップルみたいな雰囲気になったらと思うと嫌だな。
こんなヤツとカップルとして扱われることも、正直嫌だし。
だがオレ個人としては、ありもしない噂の方が鬱陶しい。
「付き合った後に何も進展させないのと、付き合ってもいないのに鬱陶しい噂に耐えるの、どっちがキツい? オレは後者の方が面倒くさい」
「はぁ……じゃあルール作りましょうか」
「ルール?」
なんだかおかしなことになってきたな。
「そうね、『善行は競うもの。ただし、無関係の人たちに危害は加えたらダメ』っていうルールはどう? お互いに善行を我慢した経験があるんだし、自分で勝ち取るのなら文句ないでしょ?」
「マジで!? よっしゃ!」
これでコソコソせずに人助けができるぞ!
「どうせあたしの方が多く善行できるだろうけど、ルールを作らないと不公平だものね」
「じゃあオレからも一つルールを要求する」
「なに?」
とは言っても、どんなルールにしようかな……?
あ、そうだ! いいこと思いついたぞ!
「『人助けを百回したとき、言うことを一つ聞かなければならない』ってのはどうだ?」
「ならいまのうちに決めておきましょう。エッチなことだったら嫌だし」
「あのな、稲葉相手にするわけないだろ……」
ほかの女子にならわからなくもないけどな。
「ふーん。ま、いいけど。あたしは『今後厚山くんは、あたしの前で善行を譲るようになる』とかかな」
なるほど、永続的に命令すればいいのか。
……となると、やってほしいことは一つだな。
「オレは『今後稲葉は、オレに対して張り合わなくなる』とかでいいかな」
「……それだけ?」
「おう」
「それって、適用後も善行はしてもいいのよね?」
「うん、いいぞ。でも、張り合わないで仲良く善行しよう。オレはまだ、お前のことをいいヤツだとは思ってないからな」
「……なんで?」
「オレにいいことをしようとしないからだよ! 善行をするかどうかを人で選ぶ人間は最低だ」
「それならあたしだって厚山くんのことは、善行をしようとすると毎度のこと横取りしてくるから嫌いなんだけど」
「あーそうかよ」
つーかもうすでに嫌いあってるし、仲良く互いの条件を呑めばいいんじゃね?
ま、オレはそんな敗北宣言は御免だけどな。
こいつにだけは負けたくないし。
ま、そう考えてるのはオレだけじゃないだろうがな。
「じゃあ、とりあえず付き合うってことでいいのよね?」
「おう。『善行は弱肉強食』ってこと、忘れんなよ?」
「そっちもね」
「「ふんっ!」」
オレたちは息を合わせたかのように声を揃える。
「よし、じゃあ帰るか」
「そうね。帰りましょう」
おいおい、下校するタイミングまで一緒になるのかよ……。
「あの、稲葉ー? 別に一緒に帰る必要はないんじゃないか?」
「言っておくけど、これは厚山くん。キミに対するあたしからの嫌がらせだから」
「なるほど。じゃあ、オレからも……」
と手を繋ごうと一瞬よぎったが、初めて女子と触れ合うのがこいつか……。
嫌だという気持ちの方が勝ってしまうな……。
「なによ?」
「なんでもないです……」
「そう? ほら、帰るわよ」
こうして、付き合うことになったオレたち。
「なーんか、付き合ってる実感が湧かないなぁ……」
つーか、初めての彼女がこんなヤツだとは……。
そんなことを思いながら、オレは稲葉と一緒に下校する。
だが、これでよかったのかもしれない。
これでまた人助けできるからな。
「稲葉」
「なによ?」
「人助けを百回すんのはオレだからな!」
「ふふん、いまのうちに好きなだけ吠えておきなさい」
「お前がな」
「「ふんっ!」」
再度口を揃えて言うオレたち。
こういうところからして、オレたちは案外似た者同士なのかもしれない。
「それじゃあ厚山くん……また明日」
「はいはい、また明日」
そうして、逆方向に帰っていくオレたち。
嫌味ったらしい言い方がまた稲葉らしいなと思いつつ歩き始めると、稲葉が一言。
「あ、そうそう。厚山くん、一日一回だけ善行するチャンスを譲ってくれるって言ったわよね?」
「え? あ、ああ。心配すんな、約束は守る!」
「いらない」
「は?」
「あたし、別に善行が好きなわけじゃないから。それじゃあ」
そう言って稲葉は去っていく。
ただ、オレにはどことなく寂しそうに見えた。
意味深な発言も、オレにはどういう意味かわからなかったし、何が言いたいんだ?
……いや、わかったぞ。
あいつは人助けがしたいわけじゃない。
おそらく、競う相手がほしいだけだ!
そして寂しそうに見えたのは、きっとオレが競う相手と認識していないからだ。
なるほどな、つまり稲葉はライバルが欲しかったのか。
「よーし、おい稲葉! オレたち、明日からはライバルな! また明日!」
オレは叫ぶようにそう言った。
そして、稲葉はそれが聞こえたようで、
「バカ!!」
と、少しだけ悔しさを含んだような声で怒鳴った。
そして、オレは稲葉が怒鳴った意味を考えながら、家路についた。
……ていうか、なんでオレは怒鳴られたんだ?
読了ありがとうございます。
「善人同士なのに馬が合わない」と「仲が悪いのに付き合う」という歪な関係を軸に書いてみました。
この二人の話はまだ広げられるので、反応があれば続きも書くかもしれません。




