第十四投
暗くなった夜の道を月明かりが照らしてくれる。
今はお父さんの運転する車で病院から家へ帰る最中だ。普段は助手席に座っているお母さんが、わたしと並んで後部座席に座っている。それだけで、心配してくれる気持ちが伝わってくるし、同時に、迷惑をかけて申し訳ないとも思ってしまう。
――バッケさんの声が聞こえてから、まもなく、わたしと高清水さんは救出されるのであった。
聞こえてきた声は幻聴でなく、ちゃんと本物のバッケちゃんで、その後すぐに先生方も駆けつけてくれた。
かろうじてわたしの手足は動いてくれたが、高清水さんを背負ってのハイハイだと、いつ安全な場所にまで避難できていたのか分からなかったので、バッケちゃんや先生方には感謝しかない。
校庭を避難場所に指定しているらしく、他の生徒達も校庭に集まっていた。
わたし達も救急車が停まりやすそうな位置まで移動される。幸い高清水さんに命の危険や身体に重度の影響がなさそうなのと、メンタル面も加味して、わたしと二人セットで一緒に置いてくれた。こっちも高清水さんが心配だったのでありがたい。
そして、救急車を待つための間、学校でわたし史上一番怒られたのはいつまでも覚えているのだろう。
もともと、先生方の避難指示を無視して、独断で高清水さんのいる火元付近まで行っただけに、停学処分ぐらいは全然覚悟していた。
実際はあの火事の時、保健室に高清水さんだけしかいないことを知っていたのは、わたし含めて三人だけだったらしい。講話するために体育館へいた保健室の先生と、職員室で事務対応兼居残りの教職員一人。その職員も、火災があった時は消防署への通報等々で混乱状態だと想像できるし、個人的にはしょうがないと思う。
それが理由かは分からないけど、わたしが保健室へ独断で向かったことを、先生方は心配こそすれど、責めることはなかった。それどころか、担任の先生からは「任せてしまって、ごめんなさい」と頭を下げて、謝罪までさせてしまった。
しかし、あの場でただ一人、わたしを怒っていたのはバッケちゃんだった。それも、あまりの激しい剣幕に先生方もバッケちゃんをなだめようとしていたぐらいにだ。
はじめは、まさかバッケちゃんに怒られると思っていなかったので驚いてしまったが、すぐに自分を恥じることになった。
泣いていたのだ。
バッケちゃんが泣いていたことなんて、たぶん、小学三年生以来の気がした。それぐらいに普段泣くことがない人なのに、わたしを心配するあまりに、怒って、泣いて感情をぶつけてくる。途中から、投げられる言葉が支離滅裂になったが、そんなことは関係ないぐらいに全部わたしへ突き刺してきた。
火事よりも強いバッケちゃんの感情に、避難場所で待機していたクラスメイトや他の生徒からも注目を集めているが、周囲の目は気になることはなかった。
そんなことなんて上回るほどに、バッケちゃんに今まで迷惑をかけていた事実を、自分勝手な考えだけど受け止めたかったのだ。
救急車のサイレンが聞こえてきたところで、バッケちゃんは怒るをやめて、わたしの隣りにいた高清水さんを見る。
「高清水さんごめんなさい。幸咲に助けてもらった高清水の前で、悪く言ってしまうのが、ダメなのは分かっていたんだけど……」
謝罪を受けて、今まで見守っていた高清水さんが口を開く。
「場家さん大丈夫だよ。今回の件で心の底から私も分かったし、もっと日運さんに言ってもいいと思うよ」
あれ?
「……タカッシーありがとうね」
バッケちゃんの笑顔が爽やかで眩しい。
一人唖然とするわたしを除け者にして、高清水さんとバッケちゃんが通じ合う。
ちょうど救急車も到着して、一旦この話は終わったようだ。あっ、高清水さんだけではなく、当然わたしも救急車で搬送されました。
そうして、疲弊して精密な検査が必要だった高清水さんよりも、早めに検査結果の無事を伝えられて、お父さんとお母さんに病院まで迎えにきてもらった現在へと至る。
お父さんとお母さんの二人はなにか言いたそうな雰囲気があったが、直接なにか言われることはなかった。それでも、その日二人はわたしが寝る直前まで、ずっと付き添ってくれた。
火事の日から土日休みを挟んだGW期間中の月曜日。本来は祝日と被っていないから平日扱いの登校日なはずだけど、学校が火事になって、学校付近で熊の出没情報があったから臨時休校となった。
わたしはこの貴重な休みに何をしているかと言うと……
「日運さんお待たせ〜」
体調が回復した高清水さんとデートだ!?
次回の更新は、1/8(木)を予定しております。




