僕らは「4:3」を求めている。
テレビが、僕らにとって「嘘」となったのは、「デジタル放送」へと完全に移行したあたりからか。
かつてテレビは、縦横比4:3(横:縦)のアナログな放送だった。それがいつしか、映画のような16:9の画面サイズへと変わり、何かが急に「虚飾」へと変わり始めた。
アナログが、懐かしいわけではない。
横幅を持たせたことにより、登場人物たちへの集中が、分散されてしまったことこそが、何かの敗因のように思える。
テレビは、映画ではない。
完璧な作り込みのもと、画面を見せているわけではない。
ただ、漠然と、スタジオをそのまま映しているに過ぎない。
横幅を持たせたことにより、キャストも増やさなければならなくなった。それによって、すべてが薄まった。
10の価値を持つ人間をふたり並べるだけで作れた番組が、増設された「横の空間」のせいで、6の価値の人間を3人並べなければならなくなった。コストを考えれば、10の価値の人間を呼ぶことすら、なかなか出来なくもなった。
横幅の狭い番組は、本来、それほど価値のない人間でも「クローズアップ」により、価値を持たせることが出来た。安物でも、ドカンと、ど真ん中に置くことにより、洗練の機会が与えられた。
「テレビは死んだ」と呼ばれるのは、意外にこういったことも原因なのかもしれない。だとすれば、試しに「4:3」の縦横比の番組を再び作ってみるのも面白い。
削られたサイドには、変な広告などは入れず、真っ黒なままにし、視聴者の集中を促す構図こそが、意外に効く気がするのは、果たして筆者だけだろうか。
「ひな壇」と呼ばれる、害悪でしかないシステムも、16:9という横幅に対する「見栄え」として、主流となった。この「豪華に見せた空虚」こそが、テレビが死んだと思わせる要因ともなっているのだろう。
逆にスマホサイズで見るのは、YouTubeなどのワンショットや、ツーショットの動画ばかり。登場人物は、やはり絞った方が、見る側の集中力も増すというものだ。