EP.7 知らせ
4月12日……アルテミス・クエルの修理が急ピッチで進む。
ノア艦長の予定では明日、13日には出航し15日にアメリカ中西部、ADを量産している工場を目指す。
中西部は製造業が盛んであり自動車や戦車を作っている。その影響もあり、ADも兵器として多く中西部で量産されてきたわけだ。
そこには『ハンソン・ドロイド社』があり新型を作った場所である。旧来のADは地球政府がハンソン・ドロイドに委託し作っており頭部に内蔵されたガイア・システムのOSはガイア・コネクト社が提供している。
月政府の独立とADが兵器として登場した際、当然対抗すべく設計を変えた。
地球政府はアメリカ南部に存在する『チャーリー宇宙開発事業株式会社』通称『CSDP』と言われる会社に委託した。アメリカ南部は宇宙技術に精通している他、電子、航空の技術産業が発達している。地球政府は彼らを見込んだ。
これまで無骨だったADのデザインをCSDPに委託すると新型は人のような滑らかなデザインへと進化し機動力も向上、動きに至ってはバイオニクスの分野を踏襲した。
ただの乗り物で装甲車や戦車のような扱いだったADは人機一体とも言えるもう一つの体のような扱いになったわけだが。何よりも人の脳とADを接続するニューラル・インターフェイス・システムの効果が大きいとされる。月政府の黒いADに搭載されたシンクロ・リンク・システムのようにうなじに接続部分を作る手術を受けず似たような事ができるのだから。
このアイディアが生まれたのは月政府のADの製造元と思われるがバイオニクスの研究はもしかしたら月の方が上なのかもしれない、所詮はパクリでありその代償として大きな疲労感や長時間の使用により脳に障害をもたらす危険性もある。仮に短時間でも脳のニューロンを刺激し興奮状態になり精神性発汗が著しく現れテストパイロットのスーツは汗の水が溜まっていたそうだ。
このCSDPは新型の設計をハンソン・ドロイドに送り作らせた。今現在、六機目の新型である『AD.E-5』とAD.E-1の量産型が作られている……。
「……それにしたって、俺たち整備兵は扱いが雑なこって。」
俺はマルコスとネスト1格納庫近くの休憩室で話をしていた。
「愚痴っても仕方ないだろ、時間も限られいるし……。」
「まぁ、これも新型であるAD.E-5を拝めるためと考えれば良いか。」
言うまでもなく彼はメカニックとして熱い情熱がある、見たりいじったりが趣味だ。
「そういえば分かったか?初号機のOSとしての機能は?」
「分からん。あれから色々調べたけど他の新型と比べて初号機だけおかしい。整備長はガイアコネクト社の新作OSじゃないと説明がつかないと言ってたけど実際どうなのかね?」
あの初号機特有のOSだが二号機は付いておらずマヤがニューラル・インターフェイス・システムを作動させた際ガイア・システムは通信でしか機能しなかった。
休憩が終わり、マルコスと共にアルテミス・クエルの中へ入る。エンジン部分とジェットの修理に時間がかかっているようだ。整備兵達は寝ずに体を動かしているようで皆目の下にクマができている。
「ああ、そういえば……AD部隊の隊長になったらしいな?」
「ん?耳が早いな。」
「俺たちは整備兵だ、パイロットの事も考えなきゃならない。」
「なるほど。」
「なんでも、『アリエスタル』っていう奴がお前と顔を合わせたいらしい。気前の良い青年さ。」
「アリエスタル?」
「本来なら三号機のパイロットだったが、襲撃があったからな……しばらくは旧型のADで出撃するらしい。」
「彼はどこに?」
「トレーニングジムじゃね?いつもそこで見かけるって聞いてるぞ。」
俺はマルコスと別れトレーニング室へ向かう。中に入ると重量のあるダンベルやランニングマシーン、レッグプレスやら何やらと充実している。
その中でも一際目に入るのはADの操縦訓練を行えるマシーンが存在する。見た目はADのコクピット内を模しており操作はADとなんら変わらない。
その中座席に一人座って訓練している兵士が一人いた。
彼の手が止まり操縦していた音が無くなり静まり返る。
「あーまたBか。」
彼は口ずさみゴーグルを取って、俺の存在に気づき座席から立ってこちらに近づく。
「これは軍曹殿、お初にお目にかかります。私は『アリエスタル・シグマ』少尉です。これからよろしくお願いします。」
「こちらこそ、エイジ・スガワラだ。」
お互いに握手をし緊張をほぐす。
「隊長はなぜここに?」
「友人から君の存在を聞いてさ、一応世話になるし挨拶しないと。」
「世話になるのは私の方ですよ。初めて人が死ぬのを目の当たりにしました、本来であれば勇気を振り絞って三号機に搭乗し敵へ渡さないようにしなければならなかった。」
「でも、逃げるのも大事だよ。それに君も若いし、まず前線に出そうとする政府がおかしいのさ。」
ここで疑問に思ったのが彼を含めて新型のADパイロットの年齢が明るみになった事だ、マヤとアリエスタルそして死んでしまったが態度の悪かった兵士達は皆んな若かったのだ。学校を卒業して間もないであろう青年達を前線に送るというのは何か考えがあるのだろうか、ましてや新型に傷を負わせようなどと政府が考えてないはず……。
「ですが、私は兵士である以上。死を覚悟しています。新型に選ばれた『優秀成績者』として貢献しなければいけませんし。」
「優秀成績者?」
「ええ、以前AD科パイロット生として養成していまして。成績は他の人と比べれば上の方ではあります。その生徒達は優秀成績者として政府から認知されるようでして、高待遇を受けられます。なので地球のため貢献し期待を裏切りはできませんね。」
「つまり優等生ってこと?」
「まぁそういう事です。マヤさんほどじゃありませんが……」
マヤと初めて会った時は俺が18で高校卒業後すぐに軍学校のAD科に入った時だ。彼女は当時併設されていた軍学校の高等科に属していたが飛び級だったらしく16歳で高等科を卒業しそのままAD科へ行きパイロットの道へ志したようだ。先輩と呼ばれているが一応同期である。
「彼女は優秀だからな……。」
「隊長はマヤさんとお知り合いなのでしょう?なんでも同じ学校だったとか?」
「いつも振り回されてたけど良い奴だよ。」
彼と他愛ない会話をする。俺の過去について少し話したがなんで除籍されたかまでは話さなかった、気持ちの良い話ではないのが一番の理由である。
……一方アルテミス・クエル艦長室ではノアが事務作業を淡々とこなしていた。
「これでよし……」
私は今クルーの登録手続きをしている、ネスト1から整備兵、ナースと監視員など多くの人が搭乗する予定だ、メインブリッジにも通信兵が二人入る。一つ席が空いてしまうのがもどかしいが故障した際の予備として扱われる。
『リーです。失礼します。』
リーが中へ入る、彼女は副艦長として仕事が多い。何より今増えているクルーの確認や管理、艦内の問題など人間関係での仕事が多い。正直人見知りをしてしまう私には不向きだ。
「先ほど艦内での監視員2名の配属を確認しました。彼らを信用するので?前にエイジ・スガワラを拷問した尋問官と同じ部署から出ています。艦内で取り扱うのであれば問題の種になりかねません。批判が発生する前に……」
「心配する気持ちは分かりますが、内部へ強い疑いを持ってる人間がいれば反逆者が出た際、抑止力になります。それに彼らは上官の人間ではありませんから尋問官程地球にベッタリという訳ではないでしょう。」
「そうおっしゃるのであれば……」
リーは渋々理解した。
「今ここで拒んでも地球からの命令ですし、我々で監視員を見届ければ良いでしょう。」
余程の理由が見つからない限り独断で決定するのは良くない、それに彼らの人間性をも否定することになってしまう。人としてまず受け入れなければならないと私は思う……私が人に近づくための第一歩なのだから……。
……ネスト1外部宇宙空域ではパトロール部隊が周辺を警戒していた。
『こちら三番機以上なし。』
ADがバックパックに宇宙用の推進機を装備している、強奪の件もあるため警備はいつもより厳重に行なっていた。
『二番機も以上なしだ、通信機の異常も見られない。敵は周辺にいない。』
ネストの周辺には通信機がありネストにあるガイアシステムと繋がっている基本は有線で繋がっており管理室のような建物も設けられている。戦闘が始まれば通信機はシャットダウンしAD同士による遠隔での通信はできなくなる。戦闘中でも通信はできるがハッキングされる危険性があるのと戦闘領域は基本ネットが混線するためネスト外ではネットは意味をなさない。
尚シャットダウンを問わずこの通信機は宇宙空間でAD同士の発生音声の補助をしており音が一歳ない宇宙ではこの通信機の微弱な電波を伝いADの発生音声の補助してくれている。
『こちら四番機!新型を確認!こちらに向かってきている!』
『了解!本部に報告した後通信機はシャットダウン!各々新型を叩け!』
複数のADは新型に対抗すべく動き出す。
「宇宙用の奴か!」
ADに乗ったパイロットが呟く。
新型は高速移動で複数のADを翻弄する、直進しそのまま旋回したりと中に乗っている人はかなりのGに耐えていることになる。
「このアン・シルバーがお前ら地球人に引導を渡してやる!」
新型は両腕にあるビームマシンガンでADを破壊する。
「は、速い!」
目の前の味方が爆破した瞬間、新型は既に後ろを取っていた。
「残り四つ!」
アン・シルバーはビームソードで敵の背中を貫くとADは爆破を起こし次の標的へ向かう。
「こんなん目で追えるか!」
各兵士は速射砲で乱射するが当たる訳がなかった、彼らが翻弄されていると月政府の戦艦が姿を現す。
『戦艦を確認しました!』
「お前だけでも本部へ連絡しろ!」
ADがネスト1へ近づくのをアンは見過ごさなかった。
「逃すかよ!」
新型が急速接近するとADに阻まれてしまう。
「どけ!」
アンはADにビームソードを喰らわすが両腕を掴まれてしまう。
「こうも腕を抑えられてはな!」
両腕を押さえらた新型の背後に二機のADが現れる。
「コイツの推進力を舐めるな!」
新型はADに掴まれたまま高速移動をし背後のADに突っ込む。
すると掴んだADと接触し大破する、かなり雑破な戦い方だが新型のパワーに兵士は驚いた。
「くそ!」
兵士は速射砲を連射するが案の定避けられコクピットにビームソードを受け大破した。
アンの乗る機体は月政府の戦艦内へ入って行く。
『おいアン!新型なんだぞ?大事に扱え!』
整備兵の一人が怒る。
「悪かったって。そんな事よりバルトンが出るだろ?私に構ってないであっち行けって。」
『都合の良いこと言いやがって。』
整備兵がムカつくと言わんばかりの表情をしている。
「こちらバルトン・シミラス。出撃準備は完了だ。」
『こちら管制室、射出準備完了。』
「さぁ、行こう。我が愛機……騎士として恥じぬ戦いをせねばな……。」
EP.8へ続く……。
読んで頂きありがとうございます、投稿頻度が落ちてますが頑張って気合い入れていきます。これからもよろしくお願いします。




