EP.21 覚悟と責任
現在リンダはエルノアをキッカーとエイジ達から離した所だ、周りに敵ADはいない。一対一の戦闘になる。
さて、ここまで距離を離せばガキどもも落ち着いて戦えるだろう……。
しかし、この傭兵の動き何処か見たことある……色んな奴と仕事をしたり対峙したりしたがコイツは私の中で危険であり特別な部類に入る。もし、彼であればありえない。
『腕が落ちたか、死体撃ち?フレイクスの時は世話になったな。』
私のあだ名を知っている……まさか。
「やっぱりエルノアか……足を洗ったんじゃないのか?こんな安い機体に乗ってさ!」
リンダは右のトリガーを引き速射砲を浴びせるがエルノアは避け続ける。
『悪いが戻ってきた。娘の命が掛かってる、お前も金にしてやる。』
この男は本来非情ではない、戦う時に限られる。
「なんだ?知らない内にガキでも出来たか?」
『ああ、貯めた金で地球に移住したのさ。不法移民だがね。』
エルノアは充填式帯電ナイフを左手に持ち右手は装甲貫通砲を装備している。
「あの世に行きたくないなら、とっとと失せな!」
『相変わらずの減らず口だ。』
銃弾がお互いを交差し攻防が始まる。
エルノアは貫通砲を捨て、身軽になると腰にマウントされた速射砲を装備する。
『やはりリージンは関節が弱い……貫通砲の反動には耐えられんか……』
愚痴を溢しながらも確実にリンダを追い詰める。
「バケモンが……」
エルノアの速射砲は直撃とまではいかないがリンダの装甲を当てている。
『もう、そろそろ金になるぞ?』
「バカにしやがって!」
リンダは速射砲を撃つもエルノアに避けられてしまう。明らかに押されている。
『お前で何体目かな?だいぶ稼げるんだ、このご時世……。』
エルノアはわざと射線を逸らしリンダの目を引き付けると充填式のナイフを投げる。
「こんな子供騙し効くか!」
リンダは避けようとするがその方向にナイフが来る、右肩に食い込み返しが付いてるため中々外れない。
『昔と比べて弱くなったな。』
充填式ナイフはADと線で繋がっている、エルノアがそれを引っ張りリンダの体制を崩す。機体はうつ伏せの状態になる。
『お前の動きは知っている。だから警戒したがこんなもんとはな……』
エルノアは近づき背中のバッテリー部分に速射砲を撃ち込もうとする。
そのはずだったが、速射砲の排莢口が焼けて詰まる。
『くそ!舐めた整備か……』
リンダは幸運にも助かりコードで繋がれたナイフを引っ張る。
エルノアの機体はコードが引きちぎられると武器は一切なくなった。
「運だけはねぇ……いや、金のないアンタの負けか……」
金がない奴ほど余裕はない……舐めた整備じゃない、純正品の武器を使わないからだ。
リンダ腰にマウントされた大型帯電ナイフを装備し一気に距離を詰める。
エルノアは不良の速射砲でそのナイフを受ける。
「エルノア、こっちに来い!仕事を選んでるようじゃ娘と会う前に死ぬんじゃねーか?」
とりあえず交渉を仕掛けるか……今後コイツが敵になったら洒落にならん。
『依頼があれば受ける!だが、現在の情勢で地球軍の報奨金は少ない。分かるだろう?』
ナイフを引っ込みお互いが引き下がる、いつでも入れるよう間合いを確認する。生憎私の左手には速射砲が装備されている。弾は少ないがほぼ丸腰の相手には丁度いい。
「分からんか?これからもっと報奨金は高くなる、新型のマスプロを携えて物量戦に持ち込んだ暁には多くの傭兵に多額の報奨金を約束するだろう。確実に落とすためなら思いっきりがいい連中なのさ。」
『悪いが手段は選んでられない、彼女が病気で戦っている間私も戦わなくてはならない。最悪娘が先に……』
エルノアの機体の背部に突貫的に取り付けた丸い筒がある、装甲車から外してただ取り付けたものだが、効果はあった。それを発射すると正体はスモークディスチャージャーであり周りが煙に包まれる。
『娘は植物人間の状態だ……脳しか機能してない……あの姿は彼女の人生そのものを否定しているようで我慢ならない、できる事は彼女を強化人間にさせることだ……。』
金がいる理由は分かった、とは言え手加減は出来ない。話の最中に上手い事彼の手中に収まってしまった……。
『以前の報酬で第五世代型の情報を手に入れた、最悪体が動けば良い……人工骨格に人工的に作った筋繊維を張り巡らす……彼女の脊髄と頭部を移植する……そのためには莫大な……。』
なるほど、月への移動費と手術費を考えれば高くつくな……おまけに移民なんだ、人の仲介がないとまず出来ないな……。
こうやって、私の気を逸らすんだから。だが、面白い話を聞いた現在地球軍は第四世代の強化人間を作っているらしいが手術内容は一切明かされない。月も躍起になって対抗してる訳か……。
その場から動かず煙が明けていく、仕掛けてくると思ったが……機体を乗り捨てて逃げやがった。通りで足音がしないと思ったが、娘の為なら生きる事も選べるようだ。
「私には、あんた程の覚悟はないよ。」
敵の反応を確認した、スモークに敵が気づき始めたのが原因だろう。強敵は消えた訳だが油断はできない。
一方で、ハンソン・ドロイド社の地下には独房もある。そこにマルヒト・カーが収監されており地上の物音に対し敏感になっていた。
「そろそろ、潮時か……最後にニールの顔を見たかったが……。」
「おい!囚人番号47!移動だ!」
看守がやっと来た、彼に聞いてみるか。
「すまない、あの新型戦艦と共に来たニール・カーという少年は知らないか?」
「悪いが、今はそれどころじゃない!地上ではお前の仲間が暴れている!」
あいつらを仲間と思った事は一度もないさ、だが襲撃に遭うとならばニールの状況は危ういか。
看守は次の牢へ行くと囚人を出そうとしている、ここのブロックに看守は三人……私の手には錠が課せられている。
手錠はチェーンタイプ、鍵穴がある。急に外してアラームが鳴る心配もない。私は協力的な事もあってここの連中からあまり警戒はされてない。
「ふぅ……」
看守全員が私から目を離した瞬間さっき私に話しをかけた看守は背を向けている、右の腰に銃がある、ならば……。
一気に距離を詰めて右の銃を奪い取るがホルスターに引っかかる、なのでセーフティを器用に解除し引き金を引くと看守は体制を崩し背中をマルヒトに預ける形になる、銃も丁度抜けて良い状態だ。
「指紋認証システムは高官しか扱えないのか?こういう事も考慮すべきだ。」
マルヒトは痛がる看守のこめかみに銃を突きつけ看守を引きずりながら出口に向かう。
他の看守はそれに気づき銃を抜き、マルヒトに向け出す。
「銃を捨てろ!この状況だ!味方を撃つ覚悟がないと思ったのか!」
「俺はただ、息子の居場所を知りたいだけだ。」
すぐさま、向かいの看守に銃を撃つと当たりどころが悪かったのか死んでしまった。
「いいか?俺は本気だ?手錠もしている、当たりどころが悪いかもしれないな?」
「くそ!正気か!」
あいつは仲間までは撃てない、さっきの看守は殺しておいて正解か……。
「息子の居場所を言えと言っている!お前も死にたいのか?」
「F地区東軍病棟……住宅エリアにいると聞いている……後は分からん。」
「ありがとう。」
看守を引きずりながら自動ドアを無理やり解錠させるよう脅す、従わなければもう1発撃ち込めばいい。
ドアが開き負傷した看守を置いて地上への道を走っていく、自身の息子へ会うために手段は選ばないのだ。
EP.22へ続く……。
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