EP.19 同士討ち
昇降機を上がり地上に出ると奥で戦闘をしている音がする。このハンソン・ドロイドの工場敷地はとてつもなく広い、この42万平方キロメートルの敷地の中を地下も含めるとなれば新型を探すなど困難を極めるはずだ。
『エイジよイシダだ。現在敵は正門前に集結している、月政府以外の機体も見受けられた。傭兵を雇ったとしか考えられん、この工場は街の真ん中に有る訳だが、四方から既に囲まれている可能性が高い。尚、住民は避難完了だ。たった今艦長からもお主達の作戦を聞いた、エイジ率いるAD部隊は直ちに五号機の場所へ向かい準備せよ。』
「了解です。しかし、もう一つの囮である初号機はそのまま野晒しですか?」
『いや、ここの衛兵に守って貰うよ。あの初号機は内部からの敵を炙り出す材料だ。』
このブリーフィングを聴き、マヤ達と合流する。
『エイジさん、やはり周りは固められてます。僕が訓練をしていた東側にも傭兵が現れてました。』
『私もだよ、西にもポツポツと出てきたが深くまでは攻めてこない、揺動か……』
マヤとアリエスタルはそれぞれ決められた位置で訓練をしていた訳だが、敵が姿を現しても数が少なく攻めてくる様子は無かった。
『聞こえるか!こちら南部正門!黒い機体が中央部に……あああああ!!』
『こちら、南部正門!AD部隊は壊滅!各格納庫に入っては何かを探している!中央部隊は直ちに戦闘準備!奥まで行かせるな!』
「俺達は五号機の格納庫に向かうぞ。」
二人と共に五号機の格納庫へ向かう、その五号機だが中央格納庫に目立つように入っている。天井は吹き抜けになっており明らかに相手に分かりやすい。
『よぉ、待ってたぞ。』
その格納庫へ向かうと既にリンダがその場に居た。だが機体の体がAD.E-MPに対し頭がAD-3だった。
『ニューラル・インターフェイス・システムを無理矢理取っ払ったのさ。私には合わないからね。それで、こいつらがお前の部下か?』
『は、アリエスタル・シグマであります。』
『マヤっす。』
アリエスタルに対してマヤはなんか素っ気ないな、一応目上の方なのに。
『エイジさん、ノアです。ここ中央部Bブロックに敵がやってきます。』
「早いですね……」
『恐らく予め知っているのでしょう。敵が機体に乗るまでは手を出さないでくださいね?』
「了解。」
この時の為に地下格納庫がある、今は物置のような感じになっており寂れている。AD五機は入りそうだ。艦長が遠隔で操作し開けると中に入って敵が五号機に乗るのを待つ。
『映像を回します。』
するとゴーグル内に映像が流れる、黒いADが二機と複数の傭兵と部下を引き連れている。
「隊長、この新型はあなたが乗るべきだ。おまけに二機も……」
『悪いが私はこの機体からは降りない、最後の最後までこだわらせてもらう。』
「今は戦争中ですよ?手段は選んでられない。」
『悪いが時間が迫っている。エイジ・スガワラをもてなす準備をしなくてはならない。』
それだけ言い残すとどこかへ去ってしまう。
「私はあなたの崇拝者ですが、今回ばかりは癪に障る……。」
彼は強者である以前にプライドが高すぎるのだ……彼がこの機体に乗り私が一方の機体に乗れば上手く行くはずなのに……クソが……。
『おい、早く乗れよ!敵が来ちまう!』
「分かってるとも。」
後ろの傭兵に急かされるままコクピットのハッチを開ける。
「マウル!お前も降りろ!」
『ぼ、僕もですか?』
「ああ、もう一方の新型に乗れ!」
新型のコクピットに近づくとAD.E-5と型番が書かれている。
「これで間違いないか……おい!そっちはなんて書いてある?」
「ADQ.E-5/S.Aっと書いてあります。」
「兄弟機か……四脚だからクワドルペッドってとこか……」
中に入るとニューラル・インターフェイスが起動する。
「なるほど……これが……とにかく負荷が酷い……。」
『キッカー隊長!機体が動きません!』
「起動スイッチは起こしたか?」
『起こしました!ですが……』
その時ADQは動き出す。
「動いているぞ?アウル……」
『そんな……ゴーグル内が真っ暗で……』
ADQは専用のレールガンをキッカーに向ける。
「おい!アウルよせ!」
『違うんです!僕じゃない!』
引き金を押される前に地面を蹴って格納庫をぶち破り弾を避ける。
ADQはこちらをジッと見つめ再びレールガンを向ける。
「まさか……ハメられたか!」
『聞こえるか!新型をやるぞ?!』
「よせ!」
傭兵がADQに銃を向けると高く飛び上がる。
『嘘だろ……なんて跳躍力だ……』
そのまま傭兵の上に飛び乗り四脚で体を固定する、メリメリと装甲が食い込まれ剥すのは容易ではない。
『おい!ジャック!動くなよ!』
『撃つな!』
もう一人の傭兵が速射砲を放つ瞬間また飛び上がり銃はボロボロになった装甲の傭兵に直撃する。機能は完全停止しパイロットの安否も分からない。
『ちくしょう!』
今度こそ当てようと上へ照準を向けるが既に間に合わず先程のように掴まれてしまう。
『た、助けてくれええええ!』
そのまま首の間にレールガンを突っ込まれ放たれると爆破する。
「聞こえるかエルノア!こっちに来てくれ!」
『分かってる!今向かってるさ!その様子じゃ諦めて殺せ。』
「だが、中に……」
『悪いが帰るにはアンタらの用事を早く済ませる必要がある、こっちの事も考えてくれ!』
「クソッタレ……」
ADQの目が赤く光る……カメラは液晶のようになっており艶やかで何かを秘めているように恐ろしい。
「武器は……右腕だけか……」
明らかに同士討ちを想定している……ADQにレールガンだけ持たせてこちらには何も持たせない……あわよくば私を鹵獲してというシナリオだろうか……。
再びレールガンが向けられると地下格納庫だろうか四機のADが姿を表す、AD.E-MPとその頭部がAD-3になっている、二号機とAD-3がいるという事は……エイジ・スガワラの部隊か……私は愚かにも彼らにハメられたのだ。
「すまない……アウル。」
『右腕『超高電圧サージ』を起動……』
再びレールガンを向けられるが予測し避ける。そのまま確実に近づく。
『チャージ80%完了……バッテリー残量15%……』
予め起動分のバッテリーしか用意しなかったのだろう……だが、このキッカー・エル……やる時はやる男だ。負けはせん。
『チャージ完了……対象を確認。』
「許せ!」
キッカーはADQのコクピットに右手を押し付ける右手の指は爪のようになっており掴んだら最後離さない。
『装甲解放……内部緊急弁を閉鎖……放電開始……』
『え……隊長……助け……。』
右腕から青い稲妻が辺りに飛び散るとADQのバッテリーが徐々に膨張し座席の後ろから膨張したバッテリーが攻め寄せる、アウルは潰されながら全てを諦めた。
ADQは大爆破を起こし黒煙が上に立ち上る。
「聞こえるか……エイジ・スガワラ……私が仲間に情けをかける男とでも思ったか?」
そうだ、私は騎士として正義の行いをしなくてはならない。己の道こそ正義だ……以前彼にも言ったように体現しなくてはならない。
「はぁ……はぁ……今、ここで貴様らを殺す……バルトン隊長へ合わせる前に……。」
あれ、おかしい……頭が……なんだ……私はランクS……不適合者ではない……。
「頭を弄られた末路を……お前らに……」
キッカーはレールガンを拾いエイジ達に向ける。
『おい、新型とはいえ1対4は不利だ!』
エルノアがキッカーに近づく。
「黙れ!」
レールガンをエルノアに放つが外れる。
『どうした?』
——さっきから様子がおかしい。キッカーが新型に乗って時間が経過してるが以前と比べて感情的になってるように感じる。
『エイジさん!』
ローラから通信が入る。
「どうした?」
『私がいる格納庫に敵が……』
「今向かう。」
護衛がやられたのか……。
『私の格納庫のカメラは全て破壊されてます、挙句発信機が……』
すると、キッカーが襲いかかる。
「くそ……ローラ、情報を送り続けろ!絶対そっちに向かう!」
——一方でローラもとい初号機が囮としている格納庫には敵ADが潜入していた。
『おい、見つけたぞ。』
『こいつも対象なんだろ?なんでも最重要目標だとか……』
『生憎機体は例のパイロットじゃねーと動かせねぇ……頭だけ引っこ抜いてガイア・システムだけ回収すれば良い。』
『体も回収しようぜ、リージンに売れば高値で取引される。』
『そいつは良い、敵もそこそこ倒したし報酬は期待できそうだ。』
傭兵が初号機の頭に触れると手が動き腕を掴む。
『どうなってんだ!パイロットはいねぇはずだ!』
「私から言わせればこの機体は私であり私を動かす権限をエイジさんに与えただけです。」
『訳のわからねぇ事言ってんじゃねーよ!』
ローラは二体の傭兵を格闘でボコボコにする程強かった、敵は戦闘不能状態までお陥る。
「出てきて下さい、私の周りを彷徨いてる整備兵。」
「おかしい……ガイア・システムが独立で動くなんて出来ない……。」
その正体はミランダ本人でありカメラの破壊工作に発信機の取り付けも彼女自身がやったものだ。
「私自身が考えた作戦です。自らを囮にして内通者を炙り出す、エイジさんに少しは良いとこを見せたいので……」
ローラは周りを探り内通者であるミランダを探し始める。
「明らかに意思がある……間違いない……アタリは……」
EP.20へ続く……。
読んで頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。




