EP.0 剥離して欲しい。
星間紀146年(S.E.146)8月1日地球政府は月政府によって制圧されたネスト3を奪還する為、多くの戦闘戦艦とADを送り込む、敵は俺達が来るのを知ってるかのようだった。
「エイジ、ADは万全だ!起動しろ!」
整備士の報告を受けて主人公エイジ・スガワラはADのコクピットに近づく。
戦艦内格納庫にて俺はADの準備点検を行なっていた、ADは電気で動く。背中に巨大なコンセントのような物を刺して戦闘待機中は格納庫で背中にコンセントを刺されながら待機している、コンセントは皆、補充コネクトなど意味が伝われば良いと整備士が言ってた。
「コクピット閉めます。」
周りに注意喚起しコクピットを閉める。
『ガイアシステム起動します。搭乗者確認……地球軍エイジ・スガワラを承認。AD起動、操作をパイロットに一任します。』
俺が搭乗するとアース・ガイア・コネクト・システムが音声を発し、地球軍ADにはガイアシステムが内蔵されている。
コクピットの中は狭く座席に座り、シートベルトを付けると上にはVRゴーグルがある、それを宇宙ヘルメット越しではあるが被るとADの頭部と連動して周りを見ることが出来るのだ。
左手には棒型の操縦桿があり戦闘機に付いているものと大差はない、人差し指トリガーは左手攻撃の用途に使われる。
親指は棒の上にあるボタンで長押しにすることで左手武器のセーフティをオフに出来、左手棒型操縦桿はその方向に倒せば移動できる。
続いて右手だが、内容は変わらない。
同じく親指は右手武器セーフティのオンオフで人差し指トリガーは右手武器の攻撃である、ただ操縦桿なのだが、倒すのではなく回すのである、その方向に回す事でADの体を方向転換できる。
右手操縦桿の右前には、エルゴノミクス型のマウスに似たボタンがあり、これは銃のリロードや武器の変更を行うためのもので形こそマウスのようだが、動かせる訳ではない。
足元はどちらも押し込み式のペダルがあり右足は押し込むとジェットパックや宇宙用などの空間系に限定されてしまうが加速できる、左足は押し込むとジャンプできる。右足ペダルだが、上にクラッチがあり足で弾くとジェットパックなどの装備をパージできるのだ。
「エイジ・スガワラ、AD出るぞ!」
ADの管制室に呼びかけ戦艦の格納庫から出る、戦場は宇宙でエイジ・スガワラの初戦闘でもある。
エイジの乗ったADは宇宙空間を漂い、右足のペダルを踏んでネスト3へ急速接近する。
エイジの乗っているADの肩にADの手が置かれる。
宇宙空間はネットが混在し、遠隔での通信が困難だ。そのため、機体同士を接触させて通信を行う必要がある。
『聞こえるか、エイジ?我々地球軍14部隊は中から攻める、ネスト3の格納庫に穴を開けて乗り込む。乗り込んだらジェットパックはパージしろ。』
「了解!」
エイジが配属されたのは地球軍13部隊であり四機の小隊編成だ、みんなエイジよりも歳は上であり熟練者だ。
ネスト3格納庫では敵の月政府のADがいる、見た目は地球軍のものと変わらないが頭が固定されておりモノアイで周りを見渡している、色は大体青で俺たち地球軍は白色だ。
『いいかエイジ、格納庫を守ってるADが三機いる。あれは俺とエンデで破壊する、お前は注意を引け、逃げ回れば良い。アイツらが格納庫から距離を取ったらスワーネの爆弾を格納扉に設置して破壊する。』
作戦を聞かされ言われた通りの行動をする、早速前線で恐怖はあるが仕方がない、俺は三機に威嚇するように右手に持ったAD専用30mm速射砲というアサルトライフルを模した銃を放つ、するとこちらに気づいて敵が接近してくる。
先輩方はデブリに隠れて様子を伺っている。
三機は俺を追いかけている、殺すぞという意思がちゃんと伝わり当時の俺は気が気でなかった。
俺が先輩方の隠れてるデブリ側と距離が近づくと先輩が装備している180mm装甲貫通砲で一体破壊に成功する、敵はデブリに機体がいると確認すると敵の装備している30mm速射砲を乱雑に撃ち始める。
先輩はデブリを盾にして近づき大型ヒートナイフで敵のコクピットを刺して無力化した。
残った敵機体は混乱し銃を乱射していた。
『ちくしょおおおおおおお!!』
敵機体からパイロットの音声が発せられていた、言葉からも混乱と恐怖が分かる、当時の俺はこの事が頭から離れられない程強烈に印象に残った。
すぐさまに先輩は180mm装甲貫通砲を持って砲身の先を敵機体にぶつけてゼロ距離射撃を行った、反動と共に先輩の機体は後ろへ浮遊していく、ヒートナイフを持っていた先輩はそれを支えて俺の方を見る。
『怖いか新入り?』
先輩の機体から音声が発せられる。
すると、ネスト3の格納庫が破壊され中へ入れるようになったようだ。
180mm装甲貫通砲を持った先輩が俺のADに触れて通信する。
『誘導ご苦労。』
それだけ伝えられ、彼らの後を付いていくように俺はネスト3の格納庫へ移動する。
ネスト3の格納庫へ入ると敵はいない、ジェットパックをパージしてすぐさま予備扉で中の大気を外へ出さないようにする。
先輩のADが俺のADと接触する。
『良いかエイジ、ここから先は市街地だ。銃での乱射は極力避けろ、民間人に当たれば問題になる。敵はなるべく近接戦で倒しここを指揮している月政府のADを倒せば俺達の勝ちだ。』
俺たちは市街地にADで潜入し状況を確認する、中の敵ADは少なく、大体は宇宙空間で戦っているようだ。
寂れたビル群を進行していると敵を発見する。
ヒートナイフを装備した先輩は慌てて俺のADの肩を引っ張る。
『バカ!前に出過ぎだ!』
「す、すいません。」
『良いか、なるべく敵を大破させるな。ここに居るってバレるからな。』
ヒートナイフを持った先輩はこっちに気付いてない敵へ接近し、背中を避けるようにコックピットにヒートナイフを刺す。
ADの供給元は背中から電気を貰ってるため背中を損傷させると大破する可能性が高い、そのため先輩は前のコクピットを狙ったのだ。
先輩は敵を無力化した後ハンドサインでこっちに進行するように促す、俺たちは順調に足を進めていく。
また、先輩のADと接触する。
『あれが、司令塔だ。どうやら指揮官ADはいないみたいだな。周りに五機いる、お前にも手伝ってもらうぞ。』
司令塔は地球軍の基地で今では月政府が支配している、基地自体は地下にあるため表へ出ているAD五機を倒し地下へ潜入するのが妥当だろう。
地下には多くのADが居るはずで湧く前に監視している五機を破壊し地下へ潜入、ADに乗り込もうとしている月政府軍を倒せば良いとの事だが上手くいくだろうか。
『あっという間だ、お前は目の前の一機だけやれば良い。』
確かに目の前にこちらを気付いてないADが一機いる、俺はそれだけ倒せば良いとの事だ。
『スワーネは揺動しろ、エイジとエンデで近接戦を仕掛け俺は奥の二機やる。』
先輩は飛び出し揺動に出る、中央に出ると高くジャンプしここにいると敵に伝える。
五機は目立った先輩に攻撃を仕掛けようとする前に、俺は目の前のADをヒートナイフで倒そうとする。
右手で操縦桿の右手前のボタンを操作し、VRゴーグルに武器表示が邪魔にならない程度で出る、ヒートナイフを選択し速度を優先させるため30mm速射砲を捨てる。
俺の機体を目の前の敵が発見すると敵の持っている30mm速射砲を向けられるが左操縦桿のトリガーを押してパンチする、すると敵の持っていた30mm速射砲を落とすのでコックピットにヒートナイフを差し込む。
VRゴーグルに映ってる映像には勝手にガイアシステムが有効な照準を割り出してくれる、後はトリガーを押すだけだった。
コックピットにナイフが食い込むと左から敵ADが30mm速射砲を向けてくるが、コクピットにナイフを差し込んだ敵を盾にして攻撃を防ごうとする。
敵は邪魔に思ったのかヒートナイフを取り出すがその前にヒートナイフの先輩が現れて破壊される。
奥に二機おり、それらは180mm装甲貫通砲を装備した先輩によって破壊される、もう一機いるが、敵わないと思い逃げ出すと揺動をかけてた先輩が30mm速射砲で逃げる背中を撃ち抜く。
案の定敵のADは爆破し煙をあげる。
180mm装甲貫通砲を装備した先輩は早く地下へ急ぐぞとハンドサインをくれた、思いの外すんなりと事が運ぶことは、都合が良いようで恐ろしかった。
ダイヤル式の装置を回して、地下へ繋がるハッチを開こうとする。
『それにしても、敵がいなさ過ぎる。奇妙だ……。』
180装甲貫通砲を装備する兵士はコクピットの中で一人そのような事を呟いていた。
ハッチが開きそうになった時の事だった。
『振動をキャッチした、何か来るぞ!』
さっきまで揺動をしていた先輩はダイヤル式の装置を回しながら機体から音声を発する。
寂れたビル群の影から月政府のADが一機垂直に飛び出して来た、足元にはタイヤが着いており地上では有利な立ち回りが出来そうだった。
『スワーネはそのまま装置を回せ!俺らで食い止める!』
180mm装甲貫通砲を持った先輩は指示を出し、敵のADと対峙する。
敵のADは黒色で他のADとは違った、武器も双刀でどちらも熱を持ったヒート型だ、近接だけで戦うつもりだろうか。
敵ADは右手に持ったナタのようなものを投げると装置を回してる、先輩に刺さる。
コクピットを貫通し無力化された。
『スワーネ!!』
180mm装甲貫通砲を持った先輩は装置を回してた先輩の30mm速射砲を回収し敵ADに放つ。
敵ADは高速移動し30mm速射砲を避ける、そして右手を前に出し腕からワイヤーが飛び出る、それは30mm速射砲に当たり落としてしまう、そのまま急接近し左に装備したヒートナタで先輩のコクピットを貫いき爆発を起こした。
装置を回してた先輩の機体に刺さったナタを引っこ抜いて再び自分の装備にし、こちらに近付いて行く恐怖で手がすくみそうだった。
ヒートナイフを装備した先輩が接触し通信を始める。
『良いか、新入り……お前はここまで来た道を辿ってこの事を報告してくれ。絶対振り向くなよ。』
それだけ言い残すとヒートナイフを装備した先輩は敵のADに接近し対決する、俺はその間に後ろを向いて逃走する、こんなの絶対勝てる訳ない。
『さぁ、来い!月人間!俺を楽しませてくれ!』
そこからの事は何も覚えていなかった、がむしゃらにADを走り続けて気づけばADのバッテリーは0だった。
来た道を辿って最初入って行った格納庫へ行き本作戦の機体回収時間になる。
予備扉が開き自分の乗っていた戦艦によって回収される、回収された後、宇宙で戦っていた地球政府軍は負けたそうだ。
逃げて来たパイロットの記録にはどれも月政府の黒いADが確認された、殆どが彼らによって殲滅させられたらしい。
ネスト3奪還作戦に参加した兵士達は撤退を余儀なくされ、ネスト2へと引き返すのだった。
「おい!エイジ!ちょっとこっちに来いって!」
俺は恐怖と己の未熟さを呪い自分のADのコクピットから出られなかった。
「いつまで、縮こまってんだ!あの黒いADを捕縛したんだよ!中だけでも拝もうぜ!な!?」
彼は俺を励まそうとしていたのかもしれない。
彼に腕を引かれ月政府の黒いADを見に行くと、パイロットスーツを着た男が居た、彼が黒いADのパイロットだろう。
肌は白く色素が薄い、これらは月の住民に見られるものだった。
だが一つ違和感があった、彼は今パイロットスーツを脱がされたのだが、うなじ部分に電子的な何かを接続する穴があった、これは一体何なのだろう。
「これ何なんだ?」
など、整備兵が皆黒いADのパイロットのうなじ部分を不思議に見る。
「今、黒いADのハッキングしてる。情報を抜き出せばそのうなじの正体もわかるだろう。」
「やめろおおおおおおお!!」
黒いADのパイロットは焦るようにハッキングを止めるよう騒ぐ。
「ああ?お前は捕まったの、大人しくしてろ!」
パイロットを拘束している兵士が注意する。
「違うんだ、中の情報を抜き取られたら……!」
パイロットは何かを恐れているように見える。
『ムーン・ガイア・コネクト・システム。ハッキング完了。』
整備兵のハッキングしてるパソコンから電子音が流れると。
「あああああああああああああああああああああああ!!」
パイロットは全身が感電したかのように体が震え口から泡を出し死んでしまった。
「何だよ……これ……」
衝撃的な出来事に、皆が静かに怯える。
『トラブル発生、ハッキングデータの一部が破損。今すぐにコネクターを抜いてください。』
「や、やべー!」
整備兵は黒いADに繋いだパソコンの接続端子を急いで抜いた、得られた情報は一部でありその内容だが非人道的とも言える内容だった。
月政府軍には精鋭部隊『ルナティック・ブラックナイツ』と言われる厨二病のような名前の部隊がある、名前とは裏腹に黒いADに乗るパイロットはガイアシステムに頼らない戦い方をするそうだ、彼らの体にADを物理的に接続し人間の神経系をADと同期させるもので月政府は『シンクロ・リンク・システム』と呼んでるそうだ。
従来のADはいくら感度が良くても操作した後に多少のラグが存在し、シンクロリンクシステムならそのラグが少ない上にVRゴーグル内へ出る有効な照準システムはガイアシステムによるものなのだが。
この有効な照準はシンクロリンクシステムでは頭の中で勝手に照準をつけてくれるため、AIの思った通りにいかない問題を解決してくれた、それだけではない。
基本的な格闘システムはガイアシステムに組み込まれたものが使われる、カスタマイズこそ可能だが基本的な動きは変わらない、同じガイアシステムである以上、これらを踏まえ月政府ADと地球政府のADを戦わせたらどっこいどっこいの勝負になってしまうのだ。
これもシンクロリンクシステムによってガイアシステムではなく独自のパイロットの頭にある格闘データで戦う事ができるのでいつもガイアシステムの戦いに慣れてる地球政府ADは月政府の黒いADでの格闘戦は負けて当然だったのだ、しかも黒いパイロットは戦いのために幼い頃から戦士として育て上げられてた者で生身でも戦いのセンスがずば抜けている。
これらが抜き出す事に成功した情報だが、破損されたデータはいくつもあったのだ、月政府は何かを隠してるかもしれない、情報を出さないために捕まった黒いADのパイロットは口封じのため殺されたのだろう。死因は脳内に埋め込まれたチップによるもので黒いADから情報が抜けると脳を破壊するらしい。
俺……エイジ・スガワラは戦いから距離を置こうとする、奪還作戦が終わると大きな戦いはなく、ネスト2付近でたまに小規模の宇宙間戦争があるくらいだ。
俺は2年の間、前線に出る事はなくネスト1の周りを警備する事が多くなった、PTSDになってから上官が気を使ってくれたのかもしれない。
時は星間紀148(S.E.148)俺の人生は大きく変わる。
EP.1へ続く……。
読んで頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。