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EP.16 共有と真意

 ノア艦長と共に地球政府のお偉方のいるビルへ向かった、要件が伝え終えるとノア艦長のみを留まらせた……あの中で一体何を話していたのだろう。

 現在はビルの一番下まで降りて外に居る、待っても来ないし歩いて兵舎まで向かうか。

『気づきましたかエイジさん?』

「な、なんだよ?」

 急な呼びかけに驚いてしまった。

『あの部屋……最初扉の前では上官方の声が聞こえた筈ですが、退室時には音が一切聞こえなくなりました。』

「まぁ……確かに静かすぎるとは思うけど……気のせいじゃないか?」

『……ですが……』

 ローラ何かを話そうとした時後ろの自動ドアが開く。

「エイジ。」

 後ろから両肩をポンっと置かれる。

「ああ、スレンか。驚いたな……でも、なんでこんな所に?」

「なんでって、仕事だからよ。」

「お互い大変だな。」

「あんた程じゃないよ。」

 そう彼女は当時付き合っていた女性にあたる訳だが正直気まずい。

「そうだ、あんた今時間ある?」

「特にはないけど、どうした?」

「積もる話もあるでしょ?ここら辺案内してあげる。」

「ああ、じゃあ俺は艦長に連絡入れないと。」

「大丈夫、私が既に入れてあるから。」

 彼女はとても優秀だった、学生時代は学科こそ違うが上位の生徒であった記憶がある。


 彼女と共にカフェに向かう、工場の敷地内には様々な建物が存在している。

 中に入れば軍の人間とハンソンドロイド社の社員も見受けられる、それぞれがくつろいでいるようだ。

「なんかデートっぽいね?」

「もう別れたもんだろ?音信不通だったし……」

 対面の席に着いてテーブルにあるタブレットで飲み物を注文する。

「心配したよ?本格的に軍に入って分ったんだから、あんたの処遇。」

「酷いもんだろ?」

「本当、おかしいよね。」

「親に会いたいよ……元気にしてるか……。」

「卒業した日に一回会ったよ。健康そうではあったけど心残りだって。」

「捜索願も出てただろ?」

「うん、あんたのお母さんは軍に必死で訴えていたけど聞く耳は持って無かったよ。私はただそれを辞めさせるだけ。」

「嫌な事させたな……。」

「良いのよ、悪いのは全部上の人ね。」

 

 お互いが暗い話になる中、配膳ロボットがコーヒーを二つ持ってきてくれた。

「お前、ブラックなんて飲めたか?」

「私も成長したのよ。」

 スレンはコーヒーを飲むと直ぐに顔が悪くなる。

「良いよ、見栄なんて張るな。」

 側にあった砂糖とミルクを無理やり注ぐ。

「やっぱりダメだった……。」

「元々甘いのしかダメだろ?アホか。」

「なんか学生の時もこんな感じじゃ無かった?」

「悪いが覚えてない。」

「またまた〜。」

 いきなり頬を指で突いてくるが、人前ではやめてくれ。

 

「それで、今後はここに滞在するつもりか?」

「いいえ、アンタの船でお世話になる。」

「は?」

「だから私はアルテミス・クエルのクルーになるだけだって。」

「おい、待て待て。お前行き先は知ってるだろ?ネスト3を奪還後、月への鎮圧作戦に駆り出されるんだぞ?おまけに小惑星の敵拠点も見つけたとなれば間違いなく最前線に立たされるぞ?」

「知ってるてば。私は下っ端、『上の命令には逆らえない』の。」

「……でもなぁ。お前良いのか、待ってる人間だっているだろ?」

「待ってる人間?」

「ああ、マヤから聞いたが。別な人を見つけたとか何とか。」

「だ、大丈夫……もう別れたし。待ってる人は家族ぐらいだし、覚悟はしてるし。」

 

「嘘言ってんじゃねーぞ。」

 すると横からマヤ本人が立っていた、後ろにエナも居て彼女を止めている。

「あれ、マヤちゃん。久しぶりだね……。」

「さっきから見てればイチャイチャしてんじゃねーぞ。殺されてぇのかクソ女。」

「ご、ごめんなさい。エイジさん。今から連れ帰るんで!」

 エナが必死で止めてるが振り解かれる。

「お前、何が狙いだよ?隠し通せるとでも思ってんのか?」

 マヤが顔をズイっと近づけて圧をかける。

 スレンをよく見ると目線を左下にズラして顔色も悪い、何か後ろめたい事でもあるのだろうか。

「私はただ、エイジと昔話をしているだけ……。」

「そこじゃねーよ。お前男いるだろ?そこについて言及してんだよ?」

 俺はただ見ていた、マヤから見えるオーラは尋常じゃない。

「ほ、本当だって。数ヶ月前、日本を立ってから別れたのよ……。」

「ほう……まぁ今は信じてやるよ。私の目が曇らないうちは嘘なんて通用しないからな?」

 その後何故かマヤがスレンに突かれた頬を同じく突く。何で?

「先輩も女は選んで下さいね?」

「はい……」

 同じく圧をかけられた後、彼女達は店を出て行った。


 変な空気の中お互い無言になる。

「マヤは重い子だけど良い子だから許してあげて?」

 あれは彼女なりの心配だったと思っている。

「ええ……あの子はアンタが好きだからね。」

「大丈夫、俺はスレンも信じるからさ。」

「昔からお人好しね……。」

 そんな会話をして店を出る。

 スレンとはそこで別れて兵舎を目指す。

 

『エイジさん。』

「どうした?」

 歩きながらローラと話す。

『スレンさんの事ですが、エイジさんは彼女のどこを気に入ったのですか?』

「うーん……実は言うと見た目で選んでたな。単に好みで俺から付き合いを申し出たんだ。」

『単純な人間ですね。』

「でも、そういうもんじゃないか?出会いなんて千差万別あるし入りなんて外側から入るのが殆どだよ、後から内面が分かればそれで良いじゃない。」

『恋愛とはそう言うものなのでしょうか?私も経験してみたいです。』

「ローラにもできるんじゃない?分からんけど。」

『そのためにはデータを集めなければ、エイジさん明日はこの工場外に出てみたいです。』

「分った、許可が取れればね?」

 簡単な約束を交わし兵舎に着く、荷物はジョー大佐が部下に頼み運んでくれたようだ。

 ベッドへ横になり目を閉じる、眠気に襲われ意識が遠のいていく。


『あなたは?』

 夢の中だろうか?あたりは白い壁に覆われており一人の少女が床にあぐらをかき、下をずっと見つめるばかりだ。

「俺か……ただの人間。」

『私は一体誰なの?』

「すまない、君が誰なのか俺は分からない。」

『そう……。』

 少女の顔は見えないが悲しそうな雰囲気が感じ取れる。

「名前は?」

『分からない……。あなたは?』

「エイジ。」

『たった今思い出した事がある。』

「ん?」

『私の名前は……』


 その子の名前を聞く事なく俺は目を覚ましてしまった、気づけばもう朝だった。

『健康状態をチェック……何か不安な事でも?』

「いや、変な夢を見ただけだ。」


 私服に着替え外出の準備をする、艦長からも許可を頂いたのでローラとの約束を果たす時だ。

 部屋を出て外に行くと作業着を着たマルコスを見つけるが珍しく女性の整備士と仲良くしているようだ。

「おい、マルコス。お前今日は休みじゃ……。」

「良いんだよ、気にするなって。」

 働き者だと褒めたいが目当てはそれではないだろう。

「あ、おはようございます。整備士の『ミランダ・ハン』です。」

 見た目は大人しそうな女性だ。マルコスは多分仲良くなったので一緒に働きたいのだろう、オフの日でも働けば印象も良くなるしな。

「マルコスが変な事したら殴っても良いですよ。」

「な、俺はそんな事しないぞ!」

 因みに冗談ではない。


 彼らと少し会話をしたら早速工場周辺の街へ繰り出していく。

『ありがとうございます。私のわがままを聞いてくれて。』

「いや、俺も外に出たかっただけさ。」

 さすがミッドウェスト……四季がはっきりする地方とは聞いているが住民は皆長袖で春を迎える準備をする服装だ。

「なるほど、もう少し厚着にすべきだったか。まだ肌寒いかな。」

『私も肌寒さを感じたいです。』

 これ突っ込むべきなのか。

 しばらく歩いて周りを見渡していると所々にビルがあったり古い建物と呼ぶべきだろうか、こう……レンガで出来たような味のある建物も見受けられた。

 特にレンガの建物にはストリートアートが描かれており目を引かれる。

 この時代になってもこういう街は末長く残ってもらいたいものだ。

『エイジさん、道路を見てください。』

「ん?」

 道路を見ると排気ガスを出す車が多くあった。

『既にこの時代は十分な程に電気自動車が普及しているはずです。未だガソリンに頼るのは何故ですか?』

「さぁ、なんでだろう……。まぁそっちの方がロマンがあって良いんじゃない。」

『ロマン……。』

「未だに古くて価値のある車には乗りたいし、スポーツカーなんてガソリン食ってナンボだろ?電気自動車乗りたい奴は乗れば良いし、それぞれ趣味やら都合があるんじゃないか?」

 我ながら適当な返しにはなってしまった、ネストでは電気自動車が一般的である、閉鎖された宇宙居住区では排気ガスなんて持っての他だ。

「でも、不思議だよ。ローラはAIなのに都合の面じゃなくてどういう心境なのかを知りたいって事だろ?」

『はい、理屈ではなく心に触れてみたい。ただそれだけです。』

「じゃあ色々見てみようぜ。」


 その後ローラと街を見て回った、散歩するだけでもここまで気分が良くなるとは案外悪くないかもしれない。

 しばらくすると小腹が減ってしまったので近くのレストランに入ろうとすると事件が起こる。

 路地裏で発砲音が聞こえたのだ。

 近くの人は皆そこから離れて行く。

「ローラ監視カメラをハッキングして状況を報告しろ。」

『了解。』

 ズボンの後ろに銃を携帯しているので抜いてマガジンを入れる、スライドを引いてチェンバー内をチェックする。いつでも路地入れる準備が整うタイミングでローラがホログラムを映す。

『どうやら、恐喝のようです。』

『おい!ガキ。有金全部出せって言ってるだろ!』

 右手に銃を持ち左手で財布を差し出すように促している、警察車両もここに向かっているが恐喝している人間は興奮状態だ、いつ発砲してもおかしくない。

『麻薬を吸ってるかもしれません、正常な判断は難しいでしょう。』

「とりあえず進むぞ。」


 現場近くまで進み壁に隠れ様子を伺う、手前に銃を持った人間と奥に怯えた子供がいる。

 後ろをとっているのだ、殺さず体術で行動不能にすれば良い。

 銃を持った人間に後ろから攻めると同時に奥の子供がこちらに気づく。目線が俺と合ったのだ。それに気付いたのか銃を持った人間は素早く振り向いた。

「しまった!」

 銃を向けられたが素早く腕を掴み銃を飛ばす。そのまま背負い投げると相手は痛そうにうずくまった。

 近くでサイレンの音が聞こえる、警察車両が近くにいると知らせてくれる。

「見つかったら面倒だな……」

『監視カメラは改ざんしときますよ。』

「お前!」

 うずくまってた人間は素早く立ちナイフをこちらに向け突進する。

 かなり懐まで入られたので怪我はするだろうが致し方ない。

 相手のナイフをいなそうとした瞬間横から人が割って入りそのナイフを手で飛ばしたのだ。

「は?」

 急な出来事に頭が付いて来なかったが怪我をせずに済んだ。

「大丈夫か?」

 その人物はサングラスを掛けており肌の色素が薄かった。月の人間か?

「とりあえずここは騒ぎになる、付いてこい。」

「え、ああ……」

 よく分からないが彼の言う通りに足を動かしてしまった。


 現場から離れ落ち着いた場所に身を置いたのだが、今度は別のトラブルに巻き込まれそうだ。

「大丈夫か?それにしても良く子供を守ったものだ。賞賛に値する。」

「あ、ありがとうございます……。」

「それにしても見事な動きだった。軍の人間だろう?」

「ええ、そうですね。」

「ハンソンドロイドの軍部に勤めているのか?」

「まぁ、一時的ですけど。」

「ほう……。」

 その男は俺を見るなり何か考えているようだった。

「あの……俺そろそろ。」

「一杯奢らせてくれないか?私も銃声を聞きつけて来たのだが、君が居なければあの子は助からなかったかもしれん。」

 彼から礼を言われたが、大した事ではないはずだ。そもそも彼が気負う必要などない。

「いいえ、お気持ちだけで十分ですので……。」

「何を堅苦しく言っているのだ?人の好意には甘えるべきだ。」


 そう言われ彼の後を付いていき、地下に少し古いようなバーへ案内された。

「好きな物を頼め、ぜひとも奢らせて欲しい。」

 なんか変な人だな……でもなんか声を聞いたことがあるようなないような……。

「とりあえず、コレを。」

 紙に書かれているメニューへ指をさし注文する。

「それにしても若いな……年は幾つだ?」

「22歳です。」

「これからの人生なのに、政府にコキ使われるとは痛みいるな。」

「元々軍の人間だったのですか?」

「まぁ……うん……そうだな。私は少なくとも地球政府の腹黒さは知っているつもりだ。」

 軍の人間である事は否定しない、月政府の可能性があるか?

「では月から観光で?」

「ああ、肌の色素を見て分かる通り月の住民だ。戦争中とはいえ住民が地球へ行けない訳じゃない。正規の手続きはしっかり取ってある。」

 グラスに注がれた飲み物がテーブルに置かれる。

「あ、頂きます。」

「それにしてもこの街へ観光に来たが子供の頃見た映画とは雰囲気が違うのだな。」

「映画?」

「ああ、サイボーグが犯罪を取り締まる古い映画でね。実際来てみればそんな事はない、さっきのは例外だがな。」

 すると階段から誰かが降りてくる気配を感じる。

「隊長、暗号通信の内容ですが……ん?!お前は!」

 そこに居たのは間違いなく月政府のルナティック・ブラックナイツのメンバーキッカー・エルだった。隊長……という事は。

「さっきの話の続きだ、エイジ・スガワラ。その映画の主人公は改造されているのだよ。我々のようにね。」

 その男は俺の名前を言うと右手袋を取った。それは義手であり第二世代型強化人間を表していた。

「待てキッカー!銃を抜くな!」

 その男は間違いなくバルトン・シミラスだ。キッカーは懐に手を突っ込んでいる。

「今ここでやらねば!彼は脅威です!」

「10対1で戦うなど私は望んでいない。」

 バルトンの言葉に周りを見渡すと客と思っていた人物は皆こちらを見てポケットに手を突っ込む者や座っている椅子の裏に手を忍ばせている人もいる、お店のマスターはコチラを見ながら両手に何かを持っている、カウンター席からじゃ何も見えない。

「エイジ・スガワラ……私は君を賞賛している。ニューラル・インターフェイス・システムの恩恵があったとしても君の成長は著しい。そして先ほどの優しさと正義感に私は惚れたのだよ。」

「それは一体……。」

「決闘を申し込む、私は騎士として君と競い合いたくなった。明日、20時にハンソンドロイド社へ奇襲をかける。」

「な?!」

 キッカーが驚いているが俺も驚いてるよ、コレでは奇襲の意味などないのだから。

「安心しろ申し込んだのは私だ、決闘場は私が作る。」

 バルトンは右手を差し出し握手を求めて来た。

「すまないな、私も人肌を感じたいが……。」

 バルトンが残念そうな顔をする。

 

 ローラ……今、君の気持ちを理解出来た気がするよ。


 EP.17へ続く……。

読んでいただきありがとうございます。現在十六話まで進んでいますがどうでしょうか?設定だったりキャラクターであったり多く詰め込む癖があるので改めて小難しく感じます。なるべく分かりやすいように精進してまいります。これからもよろしくお願いします。

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