隣の彼
不定期更新で申し訳ありません。こんにちは、笑うパンダです。
話数は変わってますが、中身は変わってないので気にしないでください
ガヤ、ガヤ、ガヤ
「澪さんだ」「何で走っているのだろう?」「ああ、澪様の走る姿、うっ、美しすぎ」
周りの騒ぎをなんのその私は全力で彼の後を追った。
そして、今、2―Eと書かれたプレートが掛けられた教室の前にいる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
いっ、いきなり走ったせいで心臓が、くっ、苦しい~
いくら焦っていたとはいえ、全力疾走はするものじゃなかった
私は体を落ち着かせて、改めて前を見た。
2年E組
うかつだった
この中学の2年のクラスはA~Eまでの5組に振り分けられている。
その内、A~Cは1階で、D~Eは2階である。
そして、私はD組、まさか、隣のクラスだったとは
なんで今まで彼に気づかなかったのだろう
そんなことをぐるぐると考えていた私に不意に声がかけられた
「大丈夫か、澪?」
ハッとして私は声の方向に顔を向けた
声をかけた角刈りの男子生徒が心配そうにこちらを見ている
そういえば彼もE組だった
体はがっしりとしていて、肌の色は少し黒く焼けている。いつもグラウンドで練習する陸上部員らしい姿をしている
この男子生徒は武田博之、通称ヒロ。彼は紗枝と一緒で、小学校からの幼馴染である。ちなみに唯一の男の子の友達である。
「だっ、大丈夫よ。ヒロ」
ヒロは心配顔のままで改めて聞いてきた
「そんなに息を切らせてどうしたんだ?」
「・・・・」
う~ん、なんて答えようか~
(「好きな人を追い懸けたせいなの」)
なんて絶対言えない
ヒロは私が答える前に、続けて言ってきた
「周りが驚いてきたぞ。澪が全力疾走で来たって」
「えっと」
私は徐に周りを見渡した
男女問わず、生徒たちがこちらの様子を見るために集まってきていた。教室から顔を出している者もいる。
あの彼は顔を出してないか
大部分は私の方へ視線を向けているが、生徒の一部は明らかにヒロに嫉妬の視線を向けている
風の噂で、私と普通に話せるヒロはかなりの幸せ者だとやっかみを受けていると聞いたことがあるが、私はヒロを見ていると不幸だと思う。なぜなら・・
「澪~!」
突然後ろから大きな声がしたので、私とヒロはすぐに声の方向を見た
「「あっ」」
紗枝だ
「もう、急に走るんだから、驚いたよ!」
しまった、紗枝を置いて来てしまってたんだった
「ごめん、紗枝」
「はー、いいよ、もう」
紗枝は呆れた顔で答えた
「さっ、紗枝」
うずうずと、ヒロは紗枝に言った
「うん?あっ、おはよう、ヒロ!」
「おはよう、きょ、今日も元気がいいな」
「そう?まあ、これが唯一の取り柄なんだけどね」
ボソッ「それだけじゃねえよ」
「んっ、なんか言った?」
「いやっ!なんでもない」
小心者。まあ、気づかない紗枝の鈍感さもどうかと思うけど
「それより、澪!うちのクラスに何か用なのか?」
話を逸らしたな
「そうよ、澪。なんで急に走りだしたの?」
さっきと違い、頭が冷えたので、私は冷静にごまかす。
「猫を見たのよ」
「「猫?」」
二人は同時に反復した
「そっ、学校に入ってくるのをみたのよ、だから」
「澪、そんなに猫好きだったっけ?」
紗枝は意外そうな顔で言った
「違うわよ、先生達に見つかったら、手荒く追い出されるんじゃないかと思って。ほら、相沢先生なんてかなりの動物嫌いだったじゃない」
「ふ~ん、そうだったんだ」
「確かに、相沢の奴は子犬でも叩き出しそうな感じだったもんな」
二人は納得したようだ
キーンコーンカーンコーン
学校の鐘が鳴っている
「やばっ、授業が始まる!行こう、澪」
「うん。じゃあ、ヒロ」
「おお、じゃあな。紗枝、部活で」
「うん、部活で」
二人は同じ陸上部に入っている
私と紗枝は急いで席に座った
「今日の一限ってなんだっけ?」
紗枝は顔を向けて聞いてきた
「古文だよ」
紗枝は嫌そうな顔をした
「うわ~、眠っちゃうな~」
そーいえば、彼のクラスはなんだろうな。
数学だったかな?
まあ、そんなことより、彼の名前だ。どうやって知ろう
同じクラスのヒロなら、わかるかもしれない
隣のクラスだから、すぐ聞くことができるな
そうか、すぐ、隣に彼はいるんだ。
「ふふ」
私は隣の彼を想像することに少しの幸せを感じながら古文の用意をした。
なかなか進みませ~ん。もう少しで彼の話が出てきそうなのですが、まだ、しばらくお待ちください。