学園のアイドル_初恋
まず、彼女の話からです。
白柳澪は北山中学のアイドルである
成績は常に1位
体育もそつなくこなす程の運動神経を持ち
綺麗な長い黒髪、整った顔立ち、締まるとこも締まったスタイル
要するに美人である
性格もその実力を鼻に掛けることがないから困ったものである
当然、男子からは人気があり、女子からは憧れの存在である。
季節は少し肌寒くなっている秋
北山中学の屋上
そこに男の子と明らかに美人と言えるだろう女の子がいた
「澪さまっ・いえ、白柳さん!!!」
明らかに様付で読んでしまっているので、言い直しても遅いように思う
しかし、いつものことなので、気にしない
「なんですか?」
まあ、言われることは予測しているが
「一目見たときから好きでした!僕と付き合ってください!」
私は小さくため息をもらす
やっぱり、これでもう30回目ぐらいになるかな?
「ごめんなさい。あなたのことは嫌いではありませんけど、付き合う気はありません」
いつもどうりの返事を返すわたし
そして、私は踵を返して、屋上からでるために歩く
「えっ、ちょっ、待ってくださ~~い!」
待つわけがない。これからすぐ、生徒会の仕事なのだ。
まして、副生徒会長である私がいなければ、仕事がいつもどおり進まないのだ
かまわず、早足で生徒会へ向かった
校舎の2階のちょうど真ん中にあるのが生徒会室
昔から続く伝統校だけに生徒会室もその年代が感じられる部屋である
おかっぱ頭の女の子が私に気が付いた。
「あ、澪さん、お疲れ様です。」
生徒会の書記である2年の宮森美園ちゃんが満面の笑みで私を迎えてくれた
それに順じて他の会員も挨拶をする
「「「お疲れ様です」」」
「ごめんね、少し遅れちゃったでしょう?」
私は少し申し訳ない気持ちで言った
「気にしないで下さい。今日はそんなに仕事はありませんし、まして、澪さんに頼ってばかりもいられませんから」
この子は投げやりな生徒会長と違って頑張り屋でいい子だなあ。
実際、この子は会長より働いてるしね
「澪様っ!今日も告白されたのでしょうか!?」
ポニーテールの女の子がウルウルした目で私に質問する。
「まっ、まあね」
少し引きながら答えた
「まったく!身の程知らずにも程があります!!」
「澪さまは、男などに興味は微塵もないのに!懲りずに私たちの女神様に手を出そうとするなんて~」
まわりの会員がビビっている
また、勝手に言ってくれるわ
この子は1年の岡田瞳、優秀な生徒会員であるが言葉から分かるとおり百合である。
私は盛大にため息をついた
確かに今、男に興味はないけど、だからと言って百合というわけじゃないのに。
単純に恋愛にそれほど魅力を感じないだけ
ただ、それだけなのに一部の女子生徒からは女の子しか興味を持ってないと思われ、熱烈なアッタクを受けたことが多々ある
実際、瞳からも何度か受けている。
まあ、ここで色々言っても無駄だし、生徒会役員としては優秀だからいいんだけど
私は瞳を無視して美園ちゃんに話しかけた。
「美園ちゃん、どんな仕事が残ってるの?」
ファイルを見ながら美園ちゃんが答える
「部活の予算確認だけですねえ。これなら私と残りの会員だけでできますよ。」
「それなら、今日はお願いできるかしら。」
「はい。あっ、ちょっと待ってください。」
「何?」
「図書委員から今度、買う本の注文書をもらうことになってたのですが、まだ来てないんです。」
「ああ、確認に行けばいいのね」
「お願いできますか?」
「気にしないでよ。ちょうど、借りてた本も返したいから、ちょうどいいわ」
「じゃあ、澪さんお願いします。」
「はい、任されました」
私は鞄を持って生徒会室を出た。
生徒会室があり、1、2、3年の教室がある新校舎その隣に木造の旧校舎がある。
数年前に建てられたばかりの新校舎とは違い、数十年前に学校が出来た当時からあるので所々古びている。
今では、クラブの部室として主に使われおり、図書室はその3階の端っこにある。
私はそこに向かってギシギシ鳴る木造の床を歩いている
この音を聞くたびに、大丈夫かこの建物?と思うことがあるが、前に私と同じように思っていたクラブの生徒たちが学校側に不安を訴えたことがあったらしい
そこで専門家に見てもらったそうだが、結果は基礎がしっかりとしているので全く問題がないとでた。
しかし、安全と言われても何だか不安に思ってしまうのはなぜだろうか?
ガラっ
私は図書館の扉を開いた。
この学校の図書館は古いながら、なかなか広く多くの蔵書量誇る。
といっても私は読みたい本は自分のものにしないと気がすまないので、参考書や生徒会に使う資料以外借りることはない。
「すいませーん、図書委員いますか?」
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返事はない
カウンターを覗いてみるが、誰もいない
もしかしたら、本棚の方で整理をしているのかもしれない
文学、言語、芸術・・それぞれの分類の所を確認しながら、奥へ行く
いくら奥に行っても誰もいない。今の時間は人はほとんどいないみたいだ
「あっ、いた」
一番奥の社会科学の所にどこにでもいそうな男の子がちょうど本を戻している
「すいません」
男の子はゆっくりとこちらを向いた
私は彼の目をみた途端
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!っはぁっ!」
えっ!何っ!一瞬息が止まっちゃった
鼓動が速くなって、いやだ、抑まらない
息苦しい~~
「何?」
男の子が無表情で聞いてくる
「えっと、いや、えっとね」
だめ、考えがまとまらない
「用がないなら、失礼していいか?」
彼は淡々と言ってくる
「まっ、待って!」
私は必死で今の状態を把握しようとする
いや、私はもう気づいている、初めてだから焦ってるだけ
こっこれは、こっ恋ね!!まさか、こんなに苦しいなんて~
私は彼を見た、見た感じはどこにでもいる少し影が薄そうな男の子である
でも、彼の目は他の男の子たちと全く違う。とても引き込まれる目をしている
「だから、何?」
また、淡々と言ってくる
ああ、何か言わなければ
私は混乱した状態で必死で考えた
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「すっ好きです! 付き合ってください!」
あっ、言っちゃった