熊と鈴
僕は夕食の買い物を終えて、家に着いた。
「あ~、疲れた」
たくさん買った食材をテーブルに置きながら、ポツリともらした。
普通2人分なら重たくはならなかっただろうし、僕もこんな体格だけど、小食だ。
しかし、僕の妹である小学6年の結城 鈴は違う。
見た目はとても小さく、ツインテールの髪型、クルリとしたかわいい顔をしている。
そんな子が、僕の3倍は食べるのだ。
運動するのが好きだとはいえ、いったいどこに入るのだろう?
トトトトトト。
そう考えていると2階から降りてくる音が聞こえる。
「兄ちゃん、おかえり~」
台所に鈴がヒョコッと出てきた。
「ただいま」
「今日のご飯は何?」
「秋鮭が安かったから、味噌煮でも作ろうかな」
「え~。ねえ、ムニエルにしよう、ムニエル」
「ん~、そうしようか」
やったー、と喜ぶ鈴は両手を挙げて、ジャンプをした。
・・・・すごいジャンプ力。
ふと、僕は鈴に言ってみる
「たまには料理手伝わない?」
「嫌。」
「早!」
「だって、私が手伝うと味が下がるんだもん」
「すっ、鈴も女の子なんだから・・・・」
「兄ちゃん、古い!今時、そういうのはだめだよ!!」
「ん~、でも、出来たほうが後で困らないし、鈴も将来は結婚するんでしょ・・・・」
「大丈夫!いざとなったお手伝いさんを雇うから、漫画でもそういうのあるでしょ?」
「いや、あまり読まないからわからないけど。」
いいのかなあ?こんな達観していて
「そんなことより、兄ちゃん。明日、葉さんの所に遊びに行かない?」
葉というのは上代君のことだ。
・・・・前から思っていたんだけど、僕も呼び捨てたこともないのに、先に呼び捨てって
「そうだね。じゃあ、明日、上代君にいいかどうか聞いてみるよ」
ツルルルルルル、ガチャ。
「へ~い」
野太い声の人が出てきた。
この出方は徹さんだ。
仮にも大人なんだから、ちゃんと出なくていいのかな?
「もしもし、結城と申しますが、葉君を「おい、葉、輝幸から電話だぞ」」
一応、最後まで聞いてよ
少ししてさっきと全く違うすっきりとした声の人に代わった。
「はい」
「あっ、上代君?」
「そうだよ、何の用?」
「明日、鈴と一緒に遊び行っていいかな?」
「無理。明日は用事がある」
「あ、そうなんだ。残念」
どんな用事が気になるけど、聞くのもなんだか気が引ける。
そういうところが僕の悪いとこだと思うんだけど、性格なんだから仕方ない
「ああ」
「そうだ、今日、図書館に誰か尋ねて来なかった?」
澪さんが来たはずだけど
「ん?来たけど」
「何も問題なかった?」
「・・・・俺が図書館いることを教えたのか?」
「悪かったかな」
少しドキリとした。声色はいつもと変わらないけど、言葉の感じから責められているように感じる。
「かまわないし、問題も起こっていない。それに、君の想像しているような不快も全く感じていない。」
思い過ごしを見透かされていた。
「そっ、そう、良かった。」
「じゃあ、そろそろ夕御飯作らなきゃいけないから」
「じゃあ」
ツーツーツー
「ふー、鈴。用事があるから無理だって」
「ええー」
残念そうに表情を歪ませるも、すぐ顔を戻した。
「まあいいや、今度で。明日はケンジ達とでも遊ぼう~」
切り替え早いな~。
まあ、それが鈴のいい所なんだけど
僕は明日、どうしよう。宿題は当然しなきゃいけないけど、それ以外は・・・・お菓子でも作ろうか
和菓子に挑戦して見たかったんだよね~
次も1週間後になりそうです。