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彼に近づく者

彼の視点です。

「もうすぐ、体育祭の準備期間に入る頃だが、 浮かれて怪我などしないように以上、HRは終わり、日直」


「起立、礼」


「「「ありがとうございました。」」」


担任である野々村 都の話が終わると日直が即座に動いて、HRを終わらせた。きっちりとした担任が好む流れ。


これで、この学校の本質の1日が終わった。学校は学校の知識を手に入れるところ。


それ以外のことは根本的に、生徒というよりも、ただ個人のためのもの。


実際、ここにいる生徒たちはこの知識を使って、将来に向かっていく、それ以外の生きた知識を早々に使えるのはごく一部。


教科書を片付けていると、いつもどおり、結城 輝幸がこちらに近寄ってきた。


「上代君は、これからどうするの?」


「図書館に行くよ。」


特にするべきこともない。


「そうなんだ。じゃあ、今日は一緒に帰れないね。」


結城 輝幸は残念そうな顔をした。


「妹?」


早く帰る理由と言えば、彼には妹と料理の事以外ない。


「わかったの?そう、今日は両親が遅くて、僕が鈴の夕飯を用意しないと。これから、買い物いくんだ。」


彼の料理の腕は、中学生にしては高い方だろう。レパートリーも多く、以前食べたチョコレートケーキは中々の味だった。




味を思い出していると男が一人こちらに、近づいてきた。名前は武田 博之だったか。


「よう、結城」


「ああ、武田君、何?」


「さっき、生徒会から用があるから会議室に来てくれって」


そう言いながら、短髪の頭をかいた。


それに対して、結城 輝幸は顔をしかめた。


「生徒会から呼び出し・・・・僕何かやったかな?」


武田 博之はそれに否定の返事をする。


「いや、俺が感じた限りではそんな感じしてなかったぞ。何か話したいらしかった」


「上代君はどう思う」


武田博之を見る。少し汗をかいている。


どうやら緊張しているようだ。


それに話しも不自然だ。ここの生徒会はしっかりしている前に見たが、役員が案内をするだろう。


まして、彼には初めての呼び出しだ。いきなり呼び出すにはそれらしき雰囲気をだす。


嘘をついている



・・・・がさほど気にするものでもないのだろう


理由はわからないが、武田博之はこのクラス内では一本が通っている人だと認識されている。


嘘自体も親しい人に頼まれたのか、吐かざる得ない理由でもあるのか。


恐らく前者の可能性が高いが、それにしたって緊張が少ない。


真面目で、律儀で、堅実である男が友達でもない結城 輝幸に害を及ぼす可能性は例外を除いて低い。


であるならば、自分は関与しない。


「さあ、わからない」


ガタッ


そう言って自分は席を立ち上がった。


武田 博之が声をかける。


「おっ、行くのか?」


自分は二人に向かって返事を返す。


「ああ、じゃあ」


それに二人がそれぞれ答える。


「うん、また明日。」


「じゃあな」


そのまま、カバンを肩にかけ、図書館へと向かった。







いつもどおり、上代 葉は図書館の奥にある蔵書を読んでいる。


その姿は忘れられた本と共に消えそうな雰囲気をかもし出していた。





自分は新しい本を意識的に読まないようにしている。


例外として両親が買ってくれた本は目を通した。


嫌いというわけではない。


ただ、情報が確かではないだけ。


逆に、古い本は読む。


なぜなら、時代というふるいに掛けられてより自分が求める確立したものが残るから。


新しい本が劣っているとは思っているわけではない。


それらは常に変化を求められているから多様性という利点をもっている。


しかし、自分にとってはあまり価値がない。


確かなものを求める自分には・・・・。





「か~みしろ君」


誰かが楽しそうな声をかけて来た。


「?」


その人物に顔を向けたら、女のズームした顔が覗き込んでいた。


その女の子はショートカットで、クルリとした目つきをしていた。


「何?」


「さ~なんだろ?」


彼女は、顔を離したあと、首を傾け、はぐらかした。


「・・・・」


「ごめん、ごめん、私同じクラスの石原理穂子」


彼は気を悪くした様子はなく、ただ、彼女を思い出そうといた。


今、自分の左後ろの席の男子女子共に気軽に話している明るさが印象的な人物。


興味を持ったことがないので、それ以外の情報は思いつかない。


ただ、彼女がどんな用なのか、それだけ。


「石原さん、何の用?」


「理穂子でいいよ。用ってほどじゃないんだけど、君ってよく図書館で見るから、今日になって、話しかけたくなって」


「ふ~ん」


特に感心していない返事を返した。


「上代君っていつも奥の方の本棚に行くけど、前の方の最近の文学本は読まないの?」


「たまに読むよ」


必要な時以外は読まない。


理由はいうつもりはない。




「やっぱりね」


それに対して彼女は納得した顔で言う。


「?」


石原 理穂子という人物はよくわからない。


「おもしろいね、貴方!」


彼女は、笑顔でそう言い放った。


「・・・・・・」


「初めは猫かぶって気取っている人かと思ったけど違う。全部本当なのね。あなたは」


急に自分の事をそう評価したので、思わず否定する返事を返してしまった。


こんなことは久しぶりだ。


「矛盾しているね」


「そう矛盾しているの」


彼女は雰囲気を変えて、淡々と言った。


「う~ん」


それから腕を組んで、目をつぶって考え込んだ。


そして、目を開ける。


「決めた!」




「?」


「明日、暇?」


「何もする予定はないよ。」


特にするべきことはない


「ならどっか行かない?そう街でデートしよう。」


「・・・・・」


何故か即座に答えられなかった。


何だか気になる。


「ねっ、いいでしょ」


どうも、彼女の言葉に引き込まれる。


「・・・・・かまわない」



ガタっ



本棚の向こうで微かな音に上代 葉は即座に反応して、その方向を向いた。


・・・・誰いた。


今の話を聞かれていたようだ。


いつもなら、最初に気がつくはずだが・・・・この女の影響か・・。


「どうしたの?」


石原 理穂子気がついていない。


「いや」


まあ、特に問題はない。


先の人がこちらにどんなリアクションをとったとしても、自分は侵せない。



「まあ、いいんでしょ?よかった~」


彼女は手を合わせて喜びを表した。


「だが明日は雨だ。大丈夫か?」


天気予報の情報では明日の降水確率は30%。


振るかもしれないし、ふらないかもしれない。


自分はかまわないが、彼女は気づいていないだろう。


「大丈夫!明日ははれるわ。私晴れ女なの。まあ、もし降ったとしてもいいじゃない。雨の中のデートもロマンティックよ」


ロマンティックね、変わっている女の部類のようにみえるが。どうも彼女は何か引き込まれる


だから、のってみたのだが。


不思議な彼女をみて、一層、疑問が浮かび上がってくるのを感じた。


次話は4日後に投稿できそうです。

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