表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/44

第9話:才能の種


フロントコードの施設内、広々とした白い部屋。

中央にはセリカが腰掛け、孤児たち6人を前にしていた。


「さぁ、授業の時間だよ。」

セリカは楽しげに杖をくるくる回しながら、彼らを見渡す。


「今日のテーマはね、“想像力が世界を変える”ってお話。」


子供たちは真剣な顔でセリカの言葉に耳を傾けている。

彼らは皆、セリカが“マザー”を通して能力を授けた選ばれし者たちだった。


「15人集めてマザーに力を通したけどね、結局アビリティポイントが一定まで達したのは──」


セリカが片手を挙げ、指を立てる。


「たった6人だけだった。」


セリカの声に、8歳の少女が口を開く。


「他の子たちは?」


「失敗しちゃったってこと。」


セリカは軽く肩をすくめてみせた。


「でもね、君たちは違う。君たちには“才能の種”がちゃんと育ってるの。」


15歳の少年が腕を組み、口を尖らせる。


「才能ねぇ……そんなの、ただの偶然だろ。」


「そう思う? でもね、それは間違い。」


セリカは彼の目をじっと見つめた。


「才能っていうのは、好きなことや得意なことをどれだけ自分の中で膨らませられるか。要は“想像力”なの。」


少年は視線を逸らすが、他の子供たちは興味津々だ。


「この世界にはね、“アビリティパーソンズ”と呼ばれる特別な人たちがいるの。」


セリカが杖を床にトンッと打ちつけると、壁の一部がスクリーンになり、ランク別の表が浮かび上がった。

S級:AP 1000以上

A級:AP 999〜700

B級:AP 699〜400

C級:AP 399以下


「これがアビリティパーソンズのランク。もちろんS級は最強。でも……最初はみんなC級からスタートするの。」


セリカが小さく笑う。


「そして、今日は君たちに見てもらいたい子がいるわ。」


セリカが手をひらりと動かすと、部屋の扉が開いた。

そこに現れたのは、一人の青年。


「こいつが今日の“見本”だよ。」


セリカの言葉に合わせ、青年は軽く会釈する。


「B級のアビリティパーソンズ、ユウマくん。」


「よろしく。」


ユウマは無表情で子供たちを見渡すと、すぐにその場に膝をついた。


「彼の能力は“創造”。つまり、彼が想像したものが具現化する。」


セリカが言い終えるや否や、ユウマは手をかざす。


──ゴゴゴッ


その手のひらから、真っ白な鳥がふわりと舞い上がった。


「おぉ……!」


子供たちは目を輝かせてユウマの能力を見つめる。


「これがB級の力。」


セリカが満足そうに頷く。


「でも、これをS級にまで引き上げるにはどうするか分かる?」


子供たちは顔を見合わせるが、誰も答えられない。


「“もっと大きく、自由に想像する”こと。」


セリカはそう言って微笑んだ。


「想像力は制限を超えた瞬間に、現実を変える力になるの。」


「でも、S級なんて遠いでしょ。」

15歳の少年がぶっきらぼうに言う。


「そんなことない。」


セリカは杖を持ち上げ、先端で彼の額をコツンと軽く突いた。


「君たちはすでに、普通の人間じゃなくなってるの。あとは、その力をどれだけ伸ばすか。それだけよ。」


──ユウマの鳥が天井近くで羽ばたき、消えるように霧散した。


「今日の授業はこれでおしまい。次は、君たち自身が想像を形にする番。」


セリカは立ち上がり、子供たちに背を向ける。


「さぁ、次は誰が一番先に“想像”を形にできるかな?」


セリカの声が響く中、子供たちは自分の手をじっと見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ