表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/44

第8話:歪む境界


アキトとレオの前に立ちはだかる“影”。

その姿はヴォイドハウルの黒い靄とは異なり、明確に人の形をしていた。


「使者……ね。」

アキトが双竜を構えたまま、影を見据える。


「ただの使者がここまで来るとはな。」


「そういうことだ。」

レオの声は低く、警戒の色が濃い。


ゼロがアキトの肩で鋭く唸った。

「アキト、こいつ……普通じゃねぇ。」


「分かってるさ。」


影は静かに一歩踏み出す。


「“龍を纏う者”……その力、興味深い。」


影の声はどこか空虚で、感情が読み取れない。


「俺の力を知ってるのか?」


「知っているとも。」


影は口元を歪めて笑う。


「だが、まだ未完成だ。」


その言葉に、アキトの眉がわずかに動く。


「ふざけんな。これ以上、俺の力をどうこう言われる筋合いはないよ。」


アキトが双竜を握り直し、影へと踏み込む。


──ギィィィンッ!


一閃。双竜が黒い閃光となり、影を切り裂いた。


だが──影はゆらりと歪むだけで、傷一つ負っていない。


「効かないか。」


アキトがボソリと呟く。


「違う。」

レオが影を見据えたまま、冷静に呟く。


「効いている。」


──その瞬間、影の肩口がゆっくりと崩れ落ちた。


「……ほぉ。」

影が再び形を戻すが、今度は僅かに表情を曇らせていた。


「“龍”の力……確かに興味深い。」


レオが静かに前へ出る。


「遊びは終わりだ。」


「おっと、そう焦るな。」

影は軽く手を上げ、周囲の空気がざわりと揺れる。


次の瞬間、地面から無数の黒い靄が立ち昇った。


「数が増えたぞ……。」

アキトが双竜を構え直す。


ゼロが苛立たしげに声を上げた。

「ちっ、またコイツらかよ!」


レオは冷静に剣を構えると、隣のアキトを一瞥する。


「アキト。」


「分かってる。」


アキトは双竜を握り直し、静かに目を閉じた。


「──纏え。」


黒い龍の紋様が再びアキトの腕に走り、双竜が一体化する。

その姿に、影は微かに目を細めた。


「なるほど、力を使いこなしているようだな。」


「ま、さっきよりはね。」


アキトが僅かに笑う。


レオはその様子を確認し、前へと進み出た。


「アキト。」


「ん?」


「後は任せろ。」


アキトが目を見開く。


「おいおい、冗談だろ?一人でやるつもりか?」


「お前はその力を温存しろ。」


レオは静かに剣を構え、影へと一気に距離を詰める。


──シュバッ!


レオの剣が影を断ち切るが、再生する靄がレオを包み込もうとした。


「レオ!」


アキトが叫ぶが、レオは冷静なままだった。


「遅い。」


その言葉と共に、レオの剣が輝きを放つ。

瞬間、影が真っ二つに裂け、靄が霧散していった。


「……やるじゃねぇか。」

ゼロが驚いたように呟く。


「まだ終わっていない。」


レオが剣を構え直し、先ほどの影を見つめる。


そこには、先ほどとは違う異様な空気が漂っていた。


「お前たち……なかなかやるな。」


影は薄く笑い、闇の中へと消えていった。


「逃がしたか。」

レオが剣を納める。


アキトはゼロを撫でながら肩をすくめた。


「まぁいいさ。こっちもタダじゃ済まなかったしな。」


レオはアキトを一瞥し、静かに告げた。


「セリカに報告する。」


「はいはい。またですか。」


ゼロが呆れたように息を吐いた。


「セリカ、しつこいからな。」


アキトは軽く笑いながら、再び夜空を見上げた。


「……ま、次は逃がさないさ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ