第6話:沈黙の刃
夜の街は静寂に包まれていた。
アキトとレオは並んで歩いている。
「どこまで一緒にいればいい?」
アキトが笑顔でレオを見る。
「セリカの命令だ。」
レオは表情を変えずに淡々と答えた。
「監視されるのは好きじゃないだけど。」
「……気にしなくていい。」
「気にするしちゃうでしょ。」
ゼロがアキトの肩で欠伸をしながら、小さく笑った。
「お前ら、仲がいいな。」
「仲がいいわけないだろ。」
アキトとレオが同時に答える。
「はいはい、ツンデレコンビっと。」
ゼロがくすくす笑っていると、突然空気が変わった。
「……来るぞ。」
レオが足を止める。
アキトもすぐに双竜の柄に手をかけた。
夜の通りに、不気味な黒い靄が漂い始める。
「ヴォイドハウル……か。」
「逃げ遅れた人がいるな。」
レオが目を細め、前方を指差す。
路地の先に、小さな女の子が立ち尽くしていた。
その周囲に、黒い影が蠢いている。
「……ちっ。」
アキトが前に出ようとした瞬間、レオがそれを制した。
「俺が行く。」
「何?」
「お前は後ろで守れ。」
レオはそう言うと、静かに前に進む。
「……助ける気はあるんだな。」
「当然だ。」
レオの背中を見つめながら、アキトは双竜をゆっくりと引き抜いた。
「ゼロ、準備は?」
「いつでもいけるぜ。」
ゼロが飛び上がり、アキトの周囲を旋回する。
──ヴォイドハウルは女の子に向かってゆっくりと伸びていく。
その瞬間、レオの刃が光を放った。
シュンッ!
透明な刃が無数に放たれ、ヴォイドハウルの触手を切り裂く。
「……ッ!」
ヴォイドハウルは苦しげにのたうち回るが、再び影が集まり始める。
「何度でも切り裂くまでだ。」
レオは冷静に刃を構え、女の子にそっと目を向けた。
「大丈夫だ。動くな。」
女の子は怯えながらも、レオの静かな声に従ってじっとしていた。
「レオ!」
アキトが叫んだ瞬間、背後から新たなヴォイドハウルが現れた。
「後ろだ!」
「わかってる。」
レオは振り向くことなく、背後に幻影の刃を浮かべる。
「まとめて切り裂く。」
次の瞬間、レオの刃が自動的に動き出し、周囲のヴォイドハウルを一掃した。
「……やるじゃねぇか。」
アキトが微かに感心したように呟く。
しかし、レオは刃を納めずに立ち止まったままだった。
「……?」
「まだ、いる。」
レオが前方を睨むと、先ほど切り裂いたはずのヴォイドハウルが再び形を成していた。
「自己再生型か。」
「面倒だな。」
アキトは双竜を構え直す。
「行くぞ。」
「了解。」
レオとアキトが同時に飛び出した。
アキトの双竜が煌めき、レオの刃が静かに光る。
──夜の街に、ふたりの戦士が影を切り裂く音だけが響き続けた。




